PRINCESS PRINCESS「M」歌詞の意味を考察|忘れたいのに、名前を消せない失恋の正体

恋が終わった後、最も苦しいのは別れた瞬間とは限りません。

別れを告げられた日は、まだ現実を理解できない。

泣いたり、怒ったり、相手へ連絡したりすることで、心は忙しく動いています。

本当の喪失が訪れるのは、その後です。

季節が変わる。

街の景色も変化する。

友人たちは普段どおりに生活し、自分にも仕事や学校の予定がある。

世界は何事もなかったように進んでいく。

それなのに、自分の心だけが、相手と一緒にいた時間から動かない。

PRINCESS PRINCESSの「M」が描いているのは、そんな別れた後の日常を生きられなくなった人です。

主人公は、相手が戻ってくると信じているわけではありません。

二人の関係が終わったことは理解しています。

それでも相手の連絡先を消せない。

隣に誰もいないことに慣れたつもりでも、突然涙が出る。

夢の中では、今も相手に会える。

過去を忘れたいと願いながら、思い出が消えることも恐れています。

この歌の主人公が欲しがっているのは、相手を取り戻す方法ではありません。

愛した人を忘れるための「勇気」です。

しかし、忘れることになぜ勇気が必要なのでしょうか。

タイトルの「M」は、単に一人の人物の頭文字を表しているだけなのでしょうか。

そして、最後に残される「私」とは、どのような自分なのでしょうか。

本記事では、PRINCESS PRINCESS「M」の歌詞の意味を、時間、記憶、名前、喪失という視点から詳しく考察します。

  1. PRINCESS PRINCESS「M」とは
  2. 【結論】「M」は、恋人ではなく“愛していた自分”を失う歌
  3. タイトルの「M」は何を意味するのか
  4. なぜ相手の名前を最後まで消せないのか
  5. 「忘れる勇気」が欲しいとはどういう意味か
  6. 季節は進むのに心だけが止まる理由
  7. 主人公が「慣れたつもり」になっている理由
  8. 空いた「右側」が象徴するもの
  9. 身体は相手を忘れていない
  10. 言葉だけでなく「景色」まで覚えている理由
  11. 「ファンタジー」と呼ぶことで現実を受け入れようとしている
  12. 秋の写真が意味するもの
  13. 写真の二人は別れを知らない
  14. 夢の中では今も会える
  15. 黒いジャケットの後ろ姿が表す現実
  16. 「誰か」と一緒に消えていく意味
  17. 主人公はなぜ相手を責めないのか
  18. 別れの理由が描かれないから普遍的になる
  19. 星が森へ戻るように消えるとはどういうことか
  20. 本当に記憶が消えることを望んでいるのか
  21. 最後の「私」が意味するもの
  22. 失恋は自分の一部を失うこと
  23. 「M」は復縁を願う歌ではない
  24. 連絡しないことも主人公の愛なのか
  25. 「M」が長く歌い継がれる理由
  26. 強い歌声が未練を弱さにしない
  27. 「M」に関するよくある疑問
    1. 「M」はどのような意味の曲ですか?
    2. タイトルの「M」は何を意味しますか?
    3. 「M」は実話ですか?
    4. 主人公は復縁を望んでいますか?
    5. なぜ連絡先を消せないのですか?
    6. 「忘れる勇気」とは何ですか?
    7. 黒いジャケットの後ろ姿にはどのような意味がありますか?
    8. 最後の「私」は何を意味しますか?
    9. 作詞・作曲は誰ですか?
    10. 「M」はいつ発表された曲ですか?
  28. まとめ|「M」は相手を忘れる歌ではなく、自分を取り戻すまでの歌

PRINCESS PRINCESS「M」とは

「M」は、PRINCESS PRINCESSの代表的なバラードです。

作詞はドラムを担当した富田京子、作曲はボーカルの奥居香、現在の岸谷香が手がけています。歌詞検索サイト「歌ネット」では、2026年7月時点で表示回数が100万回を超え、同サイトのPRINCESS PRINCESS人気歌詞ランキングでも上位に掲載されています。

もともとは1988年発表のアルバム『LET’S GET CRAZY』に収録され、翌1989年には大ヒット曲「Diamonds」のカップリング曲として発表されました。公式ディスコグラフィでも、「DIAMONDS」「M」「世界でいちばん熱い夏」を収録した作品が確認できます。

PRINCESS PRINCESSは1996年に解散しましたが、「M」は解散後も歌い継がれてきました。解散30周年にあたる2026年には、過去のライブ映像を収録した公式Blu-ray BOXも発売され、その収録曲にも「M」が含まれています。

【結論】「M」は、恋人ではなく“愛していた自分”を失う歌

「M」の意味をひと言で表すなら、別れた恋人を忘れられないだけでなく、その人を愛していた頃の自分まで失ってしまった主人公の歌です。

主人公は、相手がいないことに少しずつ慣れようとしています。

一人で過ごす。

以前とは違う場所を歩く。

相手のいない生活を、何とか日常へ変えようとする。

しかし、形だけ生活を整えても、心までは追いつきません。

別れによって失ったのは、一人の恋人だけではないからです。

相手の隣で笑っていた自分。

誰かに愛されていると信じられた自分。

未来を楽しみにしていた自分。

何気ない出来事を相手へ話したいと思っていた自分。

主人公にとって相手を忘れることは、そうした過去の自分を消すことでもあります。

だから、忘れたいのに忘れられない。

忘れられないのではなく、心のどこかでは忘れたくないのです。

タイトルの「M」は何を意味するのか

タイトルに使われているのは、相手の名前ではなく一文字のアルファベットです。

歌詞の中でも、主人公は電話帳やアドレス帳の中に残る「M」の頁をたどります。

名前には、その人の存在を具体的にする力があります。

名前を呼べば、顔や声、思い出がよみがえる。

一方、頭文字だけで表された「M」には、少し距離があります。

実名を口にできない。

それでも、完全に匿名にはできない。

忘れたい相手を、自分にだけ分かる記号として残しているのです。

タイトルが一文字であることによって、「M」は特定の一人でありながら、聴く人それぞれにとっての忘れられない人物にもなります。

聴き手は、Mという文字そのものではなく、自分が消せなかった名前を重ねることができます。

なぜ相手の名前を最後まで消せないのか

連絡先を残しているからといって、主人公が必ず復縁を望んでいるとは限りません。

電話をかけても、以前の関係には戻れない。

相手が優しく応じてくれたとしても、それは恋人としての優しさではないかもしれない。

主人公も、その現実は理解しているでしょう。

それでも、名前を消すことができません。

連絡先を消すという行為には、単なる情報整理以上の意味があるからです。

もう連絡しない。

相手から連絡が来る可能性も期待しない。

二人の関係が本当に終わったと、自分の手で決定する。

削除のボタンを押すことは、別れをもう一度選び直すことです。

最初の別れは、相手から与えられたものだったのかもしれません。

しかし連絡先を消す別れは、自分自身で行わなければならない。

主人公には、まだその決断ができないのです。

「忘れる勇気」が欲しいとはどういう意味か

普通、勇気という言葉は何かを始める場面で使われます。

告白する勇気。

挑戦する勇気。

遠くへ旅立つ勇気。

しかし「M」の主人公が求めるのは、忘れるための勇気です。

忘れることは、何もしなければ自然に起こるように思えます。

時間がたてば、記憶は薄れる。

新しい人と出会えば、昔の恋も過去になる。

ところが、主人公にとって忘れることは受動的な変化ではありません。

自分から相手を手放す行為です。

相手を忘れれば、楽になれるかもしれない。

一方で、二人の時間が本当に終わってしまう。

愛した事実まで薄れていくように感じられる。

そのため主人公には、愛を貫く勇気より、愛を終わらせる勇気のほうが必要なのです。

季節は進むのに心だけが止まる理由

歌詞では、外の季節が変化している一方で、主人公の心だけが同じ場所に残っている状態が描かれます。

季節は、人間の感情とは関係なく進みます。

失恋したからといって、春が来るのを止めることはできません。

街では新しい恋が始まり、花が咲き、夏が訪れる。

主人公もカレンダーの上では、別れた日から遠ざかっています。

しかし心の時間は、時計やカレンダーと同じ速度では進みません。

昨日のように思い出す出来事がある。

反対に、つい最近のことなのに、遠い昔のように感じる場合もある。

失恋した後には、外の時間と内側の時間がずれてしまいます。

周囲からは、もう十分に時間がたったと思われる。

それでも本人の中では、まだ別れた日の続きなのです。

主人公が「慣れたつもり」になっている理由

相手がいない生活に、本当に少しずつ慣れてきた部分もあるでしょう。

一人で食事をする。

相手へ連絡せずに眠る。

以前二人で行った場所を、一人で通り過ぎる。

人間は、どれほど苦しい環境にも少しずつ適応します。

しかし、適応することと、悲しみが消えることは同じではありません。

普段は平気に過ごせる。

仕事もできる。

友人と笑うこともできる。

それでも、何気ない瞬間に涙が出る。

一見回復したように見えても、心の奥には痛みが残っています。

主人公は、自分が立ち直ったと思いたかったのでしょう。

相手がいなくても生きられる。

自分はもう大丈夫だ。

そう言い聞かせていました。

ところが涙によって、本当はまだ相手を求めていることを知らされます。

空いた「右側」が象徴するもの

主人公が強く意識するのは、相手がいなくなった自分の右側です。

恋人がいつもどちら側を歩いていたのかは、二人だけが知る小さな習慣です。

本人たちにとっては当たり前でも、別れた後には、その位置が大きな空白になります。

誰かがいなくなったことは、目に見えません。

しかし、以前その人がいた場所を見ることで、喪失は形を持ちます。

食卓の向かい側。

助手席。

ベッドの片側。

帰り道の隣。

相手の姿はないのに、その場所だけが相手を思い出させる。

「M」における右側は、単なる立ち位置ではありません。

二人で作った生活の癖が、今も身体に残っていることを表しています。

身体は相手を忘れていない

頭では、別れを理解しています。

もう一緒にはいられない。

電話をかける理由もない。

相手には新しい生活がある。

それでも身体は、以前の習慣を続けようとします。

歩く速度。

誰かと手をつないでいた位置。

隣へ話しかけようとする動き。

何かが起きたとき、最初に相手へ伝えたくなる反応。

恋愛の記憶は、頭の中だけに保存されるものではありません。

日々の動作や身体感覚にも刻まれます。

そのため、忘れようと決意しただけでは消えません。

主人公が苦しいのは、相手を思い出しているからだけではない。

無意識の身体が、今も相手がいる生活を続けようとするからです。

言葉だけでなく「景色」まで覚えている理由

主人公は、相手から言われた言葉だけでなく、そのとき相手の肩越しに見えていた景色まで覚えています。

人間の記憶は、重要な情報だけを保存するわけではありません。

強い感情を抱いた瞬間には、周囲の小さな情報も一緒に記憶されます。

天気。

匂い。

音楽。

相手が着ていた服。

窓の外の風景。

別れた後、その景色に似た場所を見ただけで、当時の感情が突然戻ることがあります。

主人公にとって思い出は、頭の中の物語ではありません。

今も色や音を持って存在しています。

だから、簡単には過去にできないのです。

「ファンタジー」と呼ぶことで現実を受け入れようとしている

主人公は、相手がもう現実には自分の隣におらず、心の中だけに存在する人物になったことを理解しています。

現在の二人ではなく、記憶の中の二人を見ている。

相手との関係は、現実ではなく想像の世界へ移ってしまった。

この認識には、深い悲しみがあります。

同時に、自分を現実へ戻そうとする意志もあります。

主人公は、相手が今も自分を愛しているとは言いません。

いつか戻ってくるとも断言しない。

現在の相手ではなく、自分の心が作った相手を愛していることに気づいています。

失恋の後、人は実在する相手より、記憶の中で理想化された相手を思い続けることがあります。

記憶の中の相手は変わりません。

優しかった表情のまま。

幸せだった季節のまま。

自分を傷つける新しい言葉を言うこともない。

主人公が別れられないのは、現在の相手よりも、記憶の中に残った完成された恋なのかもしれません。

秋の写真が意味するもの

二人が出会った季節として、秋の記憶が描かれます。写真の中には、まだ別れを知らなかった二人の笑顔が残っています。

写真は、時間を一瞬だけ停止させるものです。

現在の二人の関係がどれほど変化しても、写真の中では二人は永遠に同じ表情をしています。

幸せだった自分。

照れながら笑う相手。

この先も関係が続くと信じていた二人。

主人公が写真を見るとき、現在の悲しみと過去の幸福が同時に存在します。

写真があるから思い出せる。

しかし、写真があるから忘れられない。

記録は、大切な時間を守ってくれる一方で、戻れない事実を何度も突きつけます。

写真の二人は別れを知らない

写真の中の主人公は、未来の自分がこれほど苦しむとは知りません。

相手との時間が終わることも考えていない。

今の幸福が当たり前に続くと思っています。

現在の主人公は、その無邪気な自分を見つめています。

過去の自分へ、先に別れを教えることはできない。

傷つかないよう警告することもできない。

写真を見る行為には、相手への未練だけでなく、かつての自分への切なさもあります。

あのときの自分は幸福だった。

しかし、その幸福がどれほど大切だったのかを理解していなかった。

人は、失った後になって初めて、その時間の価値を知ることがあります。

夢の中では今も会える

主人公は夢の中で相手と再会します。

夢の中には、現実のルールがありません。

別れた二人も会える。

昔の時間へ戻れる。

相手が自分を愛していた頃の関係を、もう一度経験できる。

しかし目を覚ませば、相手はいません。

夢で会えた喜びが大きいほど、目覚めた後の孤独も深くなります。

主人公にとって睡眠は、心を休める時間ではありません。

過去と現在の差を、もう一度知らされる時間です。

夢は慰めであると同時に、残酷なものでもあります。

黒いジャケットの後ろ姿が表す現実

歌詞の終盤では、黒い上着を着た相手が主人公から遠ざかり、やがて別の誰かとともに見えなくなっていくような場面が描かれます。

黒は、喪失や終わりを連想させる色です。

出会った頃の記憶には、柔らかな季節の色があります。

一方、別れの場面には黒がある。

この色彩の対比によって、恋の始まりと終わりが表現されています。

また主人公が見ているのは、相手の顔ではなく後ろ姿です。

表情は見えない。

声をかけても振り返るか分からない。

相手の人生が、自分の知らない方向へ進んでいることを示しています。

「誰か」と一緒に消えていく意味

相手の近くにいる「誰か」が、本当に新しい恋人なのかは明確ではありません。

しかし主人公には、相手が自分以外の誰かと新しい人生へ進むように見えています。

失恋で最も苦しいことの一つは、自分が失った場所へ、別の誰かが入る可能性です。

以前は自分が隣にいた。

自分が相手の話を聞いた。

自分だけが知っている表情があった。

しかし今後、その親密さを別の誰かが受け取るかもしれない。

主人公が失うのは相手だけではありません。

相手にとって特別な人物だったという、自分の立場も失います。

主人公はなぜ相手を責めないのか

「M」には、相手への激しい非難がほとんどありません。

なぜ自分を捨てたのか。

約束を破ったのか。

ほかの人を選んだのか。

そうした怒りより、自分の中に残った悲しみが中心になっています。

怒ることができれば、相手を嫌いになれるかもしれません。

相手が悪いと考えれば、別れを正当化しやすくなります。

しかし主人公は、相手を嫌いになれない。

愛しているから責められず、責められないから自分の中で苦しみ続けます。

怒りを外へ向けられない主人公は、涙や未練を自分一人で抱えることになるのです。

別れの理由が描かれないから普遍的になる

歌詞では、二人がなぜ別れたのか説明されません。

浮気。

すれ違い。

遠距離。

将来への考え方の違い。

相手の心変わり。

どの理由も考えられますが、正解は示されません。

別れの理由が具体的ではないため、聴き手は自分自身の経験を重ねられます。

そして主人公自身も、理由を分析する段階を過ぎているように見えます。

なぜ別れたのかより、相手がいないという結果に苦しんでいる。

失恋の直後には原因を探します。

あの言葉が悪かった。

もっと優しくすればよかった。

別の選択をしていれば続いたかもしれない。

しかし、どれほど考えても戻れない段階があります。

「M」が描くのは、理由を理解しても痛みが消えない時期なのです。

星が森へ戻るように消えるとはどういうことか

主人公は、相手との記憶が自然の流れの中で静かに消えてほしいと願います。

無理やり忘れようとするのではない。

写真を捨て、連絡先を削除し、相手を憎むことで消すのでもない。

夜が明ければ星が見えなくなるように、時間の中へ自然に溶けてほしい。

ここには、主人公の疲れがあります。

忘れようと努力することにも疲れた。

思い出して泣くことにも疲れた。

自分の意思で消せないのなら、いつか時間が消してくれることを願うしかありません。

本当に記憶が消えることを望んでいるのか

主人公は、相手の小さな動作や、当時の自分まで自然に消えてほしいと願います。

しかし、本当にすべてが消えることを望んでいるのでしょうか。

忘れれば楽になる。

その一方で、幸福だった時間も失われます。

相手の声を思い出せなくなる。

どのように笑っていたのか分からなくなる。

二人で見た景色も、少しずつ曖昧になる。

それは回復であると同時に、もう一度相手を失うことでもあります。

主人公が望んでいるのは、記憶そのものの消去ではないでしょう。

思い出しても苦しくならない状態です。

相手との時間を覚えたまま、現在の自分を生きられるようになりたい。

しかし今の主人公には、その状態を想像できません。

そのため、すべて消えてほしいと願うのです。

最後の「私」が意味するもの

歌の最後に残るのは、相手だけを見ていた主人公自身です。

消えてほしいものとして、相手の動作や思い出だけでなく、当時の自分まで含まれています。

なぜ主人公は、過去の自分まで消したいのでしょうか。

相手を愛していた自分を思い出すたび、現在の孤独が強くなるからです。

恋をしていた頃の自分は、現在より幸福だった。

無邪気だった。

相手だけを見ていればよかった。

その自分を覚えている限り、現在との違いを意識し続けることになります。

主人公は、恋人を失っただけではありません。

以前の自分へ戻れないことに苦しんでいます。

最後に消えてほしいと願う「私」は、相手なしでは自分を定義できなくなっていた自分なのです。

失恋は自分の一部を失うこと

長く親密な関係では、二人の生活が重なります。

好きな音楽。

休日の過ごし方。

よく行く店。

友人関係。

将来の予定。

相手の存在を前提として、自分の生活が作られていきます。

そのため別れた後には、自分が何をしたいのか分からなくなることがあります。

以前好きだったものが、本当に自分の好みだったのか。

相手と一緒だったから好きだったのか。

主人公が相手を忘れられないのは、自分自身をまだ作り直せていないからでもあります。

相手のいない自分が、どのような人間なのか分からない。

「M」は、恋を失う物語であると同時に、自分を再び探さなければならない物語です。

「M」は復縁を願う歌ではない

主人公は、相手の声を聞きたいと願っています。

連絡先も残しています。

しかし、具体的に復縁へ向かう行動は描かれません。

連絡して気持ちを伝える。

別れの原因を解決する。

もう一度やり直そうと提案する。

主人公は、それらをしないまま、名前の頁を指でたどっています。

これは、二人の関係が戻らないと理解しているからでしょう。

主人公が求めているのは、新しい関係ではありません。

以前の時間へ戻ることです。

しかし過去は再現できません。

仮に二人が再び付き合ったとしても、別れを経験する前の二人には戻れない。

そのため「M」は復縁の歌というより、戻れない時間を受け入れられない歌なのです。

連絡しないことも主人公の愛なのか

主人公は相手の声を聞きたいと思いながら、電話をかけません。

これは臆病さだけではないでしょう。

相手の新しい生活を壊したくない。

自分の未練によって、相手を過去へ引き戻したくない。

そのような抑制も感じられます。

愛しているなら連絡するべきだ。

本音を伝えなければ後悔する。

そう考えることもできます。

しかし、ときには連絡しないことが、相手への最後の思いやりになる場合があります。

主人公は、相手を手に入れることより、自分の中で思いを抱えることを選んでいます。

その選択が正しいかどうかではなく、愛しているからこそ距離を保たなければならない苦しさが描かれているのです。

「M」が長く歌い継がれる理由

「M」は1980年代に生まれた楽曲です。

現在では、紙の電話帳やアドレス帳を使わず、スマートフォンの連絡先やSNSで相手を管理する人が増えています。

それでも、名前を消せない感情は変わりません。

連絡先を削除できない。

過去のメッセージを読み返す。

写真のフォルダを消せない。

相手のSNSを確認してしまう。

手段は変わっても、人が過去の恋へつながる方法は残っています。

むしろ現在は、相手の新しい生活が見えやすくなりました。

別れた後も、相手の写真や近況を知ることができる。

忘れたい人を、簡単には見えない場所へ移せない。

「M」の主人公が連絡先の一頁をたどる姿は、現代にもそのまま重なります。

強い歌声が未練を弱さにしない

「M」は深い失恋を描いていますが、楽曲全体は弱々しい印象だけではありません。

繊細な言葉を、力のある歌声が支えています。

忘れられない。

涙が出る。

相手の声を聞きたい。

その気持ちを隠さず、真正面から歌い上げる。

未練は、しばしば恥ずかしい感情として扱われます。

いつまでも引きずるべきではない。

早く次へ進むべきだ。

しかし「M」は、忘れられない心を否定しません。

深く愛した人を、簡単に過去へできないのは自然なことです。

力強い歌唱によって、主人公の涙は単なる弱さではなく、誰かを本気で愛した証しとして響きます。

「M」に関するよくある疑問

「M」はどのような意味の曲ですか?

別れた恋人を忘れられず、季節が変わっても心だけが過去に残っている主人公を描いた失恋ソングです。

主人公は相手だけでなく、相手を愛していた頃の自分まで失ったことに苦しんでいます。

タイトルの「M」は何を意味しますか?

歌詞の中では、主人公の連絡先に残された相手の名前の頭文字として描かれています。

実名ではなく一文字にしたことで、特定の人物を指しながら、聴き手それぞれの忘れられない相手を重ねられるタイトルになっています。

「M」は実話ですか?

作詞はPRINCESS PRINCESSの富田京子が担当していますが、相手の具体的な身元についてはさまざまな説があります。

歌詞を考察するうえでは、未確認の人物像へ限定せず、一つの失恋から生まれた普遍的な物語として読むのが適切でしょう。

主人公は復縁を望んでいますか?

相手に会いたい気持ちは残っていますが、具体的に関係をやり直そうとはしていません。

以前の幸福な時間へ戻りたいと願いながら、それが不可能だと理解している状態だと考えられます。

なぜ連絡先を消せないのですか?

削除することが、二人の関係の終わりを自分自身で確定させる行為になるからです。

連絡するつもりがなくても、名前を残すことで、相手との最後のつながりを守っています。

「忘れる勇気」とは何ですか?

相手を手放し、相手のいない自分の人生を始める勇気です。

忘れることは愛した時間を否定するように感じられるため、主人公は簡単に決断できません。

黒いジャケットの後ろ姿にはどのような意味がありますか?

相手が主人公の知らない人生へ進んでいくことを象徴していると考えられます。

顔ではなく後ろ姿であることからも、二人が再び向き合えない距離にいることが伝わります。

最後の「私」は何を意味しますか?

相手だけを見つめて生きていた、過去の主人公自身を指していると考えられます。

主人公は相手の記憶だけでなく、相手なしでは自分を考えられなかった自分からも解放されたいと願っています。

作詞・作曲は誰ですか?

作詞は富田京子、作曲は奥居香です。

「M」はいつ発表された曲ですか?

1988年のアルバム『LET’S GET CRAZY』に収録され、1989年には「Diamonds」のカップリング曲として発表されました。

まとめ|「M」は相手を忘れる歌ではなく、自分を取り戻すまでの歌

PRINCESS PRINCESSの「M」は、別れた恋人を忘れられない主人公の歌です。

季節は変わっていく。

世界も進んでいる。

相手も、自分の知らない人生へ向かっている。

それでも主人公の心だけは、二人が一緒にいた時間から動けません。

相手のいない隣側。

消せない連絡先。

出会った頃の写真。

肩越しに見えた景色。

夢に現れる後ろ姿。

主人公の日常には、相手へつながる記憶が無数に残っています。

忘れたいと思っても、生活のあらゆる場所が相手を思い出させる。

主人公が求めているのは、愛した事実をなかったことにする方法ではありません。

思い出に支配されず、相手のいない現在を生きる勇気です。

しかし、それは簡単ではありません。

相手を忘れることは、相手とともに生きていた自分も手放すことだからです。

恋をしていた頃の自分は、幸福でした。

相手の隣で笑い、未来を信じていた。

その自分を失うことは、別れをもう一度経験することに似ています。

だから主人公は連絡先を消せません。

電話をかけるわけでもない。

復縁できると信じているわけでもない。

ただ、一文字の名前を残すことで、愛した自分と現在の自分をつないでいます。

それでも歌の終盤では、相手との記憶だけでなく、相手しか見えなかった自分まで自然に消えてほしいと願います。

これは過去を否定する言葉ではありません。

いつか思い出を持ったまま、自分自身の人生へ戻りたいという願いです。

失恋から立ち直るとは、相手を完全に忘れることではないでしょう。

名前を見ても電話をかけなくなる。

写真を見ても、現在へ戻ってこられる。

相手との時間を、自分の人生の一部として静かに置けるようになる。

「M」の主人公は、まだそこへ到達していません。

忘れたい。

忘れたくない。

前へ進みたい。

過去を失いたくない。

その矛盾の中で立ち止まっています。

だからこそ、この曲は、失恋した多くの人の心に残り続けてきたのでしょう。

PRINCESS PRINCESSの「M」は、愛した人を忘れるための歌ではなく、その人がいなくても生きられる自分を、もう一度作り直すまでの歌なのではないでしょうか。