コレサワ「たばこ」歌詞の意味を考察|嫌いだった煙に火をつけて気づいた“恋人失格”

別れた直後には、恋人の大切さを正しく理解できないことがあります。

いなくなった事実が現実に感じられない。

数日もすれば連絡が来るような気がする。

玄関から、いつものように帰ってくる気がする。

部屋の中には相手が使っていた物が残り、生活の習慣も昨日までと変わっていません。

ところが、相手だけがいない。

コレサワの「たばこ」は、そんな別れの直後から始まる失恋ソングです。

主人公は、恋人がいなくなってから一日ほど、部屋の外へ出られずにいます。

そこで目に入るのは、劇的な思い出の品ではありません。

少し早められた時計。

風に揺れるカーテン。

ベランダ。

恋人が置いていったたばこ。

二人が過ごした時間は、特別な記念品ではなく、部屋の習慣として残っています。

主人公は最初、自分が愛されなかったから別れたのだと感じています。

もっと自分を見てほしかった。

自分の気持ちへ、もっと気づいてほしかった。

しかし、部屋の中で恋人の痕跡をたどるうちに、主人公の考えは変化します。

本当に相手を見ていなかったのは、どちらだったのか。

恋人は自分の癖や好みを細かく知っていた。

一方、自分が相手について思い出せるのは、たばこの銘柄程度だった。

主人公は、恋人から愛されていなかったのではありません。

愛されていることへ慣れ、その愛情を見落としていたのです。

「たばこ」は、恋人に捨てられた人物が相手を責める歌ではありません。

自分が被害者だと思っていた主人公が、別れた後になって、自分も相手を孤独にしていた可能性へ気づく歌です。

では、なぜタイトルは「失恋」や「さよなら」ではなく、「たばこ」なのでしょうか。

主人公は、嫌いだったはずのたばこへ、なぜ火をつけてしまうのでしょう。

そして、煙を吸ってむせる場面には、どのような意味が込められているのでしょうか。

本記事では、コレサワ「たばこ」の歌詞の意味を、主人公の心理変化やアンサーソング「恋人失格」との関係から詳しく考察します。

  1. コレサワ「たばこ」とは
  2. 【結論】「たばこ」は、愛されていたことへ遅れて気づく歌
  3. タイトル「たばこ」の意味
  4. なぜ恋人はたばこを置いていったのか
  5. 失恋から24時間という設定の意味
  6. 主人公が外へ出られない理由
  7. 5分早めた時計が象徴する愛情
  8. 時計を戻せない主人公
  9. ベランダが二人の距離を表している
  10. カーテンが揺れる場面の意味
  11. 主人公が求めていた「もっと」は何だったのか
  12. 愛情表現の違いが別れを生んだのか
  13. 恋人は主人公をどれほど見ていたのか
  14. 主人公は恋人の何を知っていたのか
  15. 二人の「知っている」が不均衡だった
  16. 要求が後悔へ変わる瞬間
  17. なぜ別れる前に気づけなかったのか
  18. 嫌いだったたばこへ火をつける理由
  19. 匂いが記憶を呼び戻す仕組み
  20. 煙は恋人の代わりになれるのか
  21. むせる場面に込められた意味
  22. むせたことは理解の失敗なのか
  23. 主人公の性別は男性か女性か
  24. 「僕」という一人称を使う効果
  25. 別れた理由は主人公の重さなのか
  26. 主人公は「恋人失格」だったのか
  27. アンサーソング「恋人失格」との関係
  28. 二人のどちらが悪かったのか
  29. アンサーソングが過去の意味を変える
  30. 二人は復縁するのか
  31. 未練は悪い感情なのか
  32. 恋人を理解するとはどういうことか
  33. 愛情は言葉にしなければ伝わらない
  34. 日常の記憶が失恋を深くする
  35. 大事件ではなく習慣が愛を証明する
  36. なぜ「たばこ」は多くの人へ刺さるのか
  37. かわいらしい歌声と重い後悔の対比
  38. ミュージックビデオがアニメーションである意味
  39. 「たばこ」は喫煙を肯定する歌なのか
  40. 「たばこ」に関するよくある疑問
    1. コレサワ「たばこ」はどのような歌ですか?
    2. 主人公は女性ですか?
    3. なぜ一人称が「僕」なのですか?
    4. 二人はどれくらい付き合っていたのですか?
    5. 5分早めた時計にはどのような意味がありますか?
    6. ベランダにはどのような意味がありますか?
    7. なぜ嫌いだったたばこを吸うのですか?
    8. むせる場面にはどのような意味がありますか?
    9. 二人の別れは主人公のせいですか?
    10. 「恋人失格」とはどのような曲ですか?
    11. 二人は復縁しますか?
    12. 「たばこ」はいつリリースされましたか?
  41. まとめ|「たばこ」は、相手がいなくなってから愛を数え始める歌

コレサワ「たばこ」とは

「たばこ」は、コレサワの活動初期から歌われてきた楽曲です。

2012年に是澤寿美名義で発表されたミニアルバム『コレサワ』へ収録された後、2017年3月29日にインディーズ最後の作品として配信リリースされました。同年8月9日発売のメジャーデビューアルバム『コレカラー』にも収録されています。

作詞・作曲はコレサワ本人。ミュージックビデオも制作され、2019年の時点ですでにYouTube再生数2,200万回を超える人気曲となっていました。

2019年には、本作の反対側の視点を描いたアンサーソング「恋人失格」が発表されました。「恋人失格」は、みゆはんへの提供曲をコレサワがセルフカバーした作品です。

【結論】「たばこ」は、愛されていたことへ遅れて気づく歌

「たばこ」の意味をひと言で表すなら、恋人から愛されていないと思っていた主人公が、別れた後に残された生活の痕跡から、相手が自分を深く見ていたことへ気づく歌です。

主人公は、交際中から寂しさを感じていました。

もっと自分へ関心を向けてほしい。

自分の気持ちを理解してほしい。

その要求が間違っていたわけではありません。

恋人同士であっても、心が通じていないと感じることはあります。

しかし主人公は、自分が見てもらえているかばかりを気にしていました。

相手が何を感じていたのか。

どのような不満を我慢していたのか。

自分のためにどのような小さな配慮をしていたのか。

それらを十分には見ていなかったのです。

相手がいなくなってから、主人公は初めて、自分が受け取っていた愛情を数え始めます。

タイトル「たばこ」の意味

たばこは、主人公にとって本来は嫌いな物です。

煙。

匂い。

身体への刺激。

恋人が吸っている間、主人公は快く思っていなかったのでしょう。

それでも、恋人がいなくなると、たばこは不快な物ではなく、相手の存在を思い出させる物へ変わります。

同じ物なのに、意味だけが変化したのです。

交際中のたばこは、主人公と恋人の違いを表していました。

主人公は嫌い。

恋人は好き。

別れた後のたばこは、主人公が理解し切れなかった恋人自身を象徴します。

主人公が火をつけるのは、喫煙を始めたいからではありません。

恋人が見ていた景色や感じていたものへ、少しでも近づこうとしているのです。

なぜ恋人はたばこを置いていったのか

置き忘れた可能性があります。

急いで出ていったため、持っていけなかったのかもしれません。

あるいは、意図的に置いていったとも考えられます。

もうこの部屋へ戻らない。

二人の生活へ区切りをつける。

その意思を示すために残した可能性もあるでしょう。

ただし、重要なのは、恋人がどのような意図で置いたかではありません。

主人公が、そのたばこへどのような意味を見つけたかです。

何でもなかった一箱が、別れた瞬間から相手の代わりになります。

人は、物そのものではなく、その物と一緒に過ごした時間を恋しく思うのです。

失恋から24時間という設定の意味

主人公が恋人を失ってから、まだ長い時間は経過していません。

悲しみを整理するには、あまりにも早い段階です。

別れの理由を冷静に分析できない。

思い出を美しく整理することもできない。

ただ、相手がいない部屋の違和感だけがあります。

失恋から数年後であれば、主人公は人生の教訓として二人の関係を振り返れたかもしれません。

しかし、この曲が描くのは、傷がまだ出来事として固まっていない時間です。

頭では別れたと理解していても、身体や習慣は恋人がいる生活を続けています。

主人公が外へ出られない理由

別れた直後の部屋は、苦しい場所です。

相手の物や記憶が至るところに残っているからです。

それでも主人公は外へ出ません。

外へ出れば、生活を再開しなければならない。

相手のいない日常が始まったことを認めなければならない。

部屋の中にいれば、昨日までの生活の残像へとどまれます。

主人公は、恋人を待っているというより、別れが確定することを避けているのでしょう。

5分早めた時計が象徴する愛情

主人公の部屋には、恋人の生活習慣に合わせて少し時刻を早めた時計があります。

わずかな時間ですが、この設定には二人の暮らしが凝縮されています。

恋人は自分のペースで行動する人物だった。

主人公は、そんな相手が遅れないよう時計を調整した。

大げさな愛の言葉ではなく、生活の工夫によって支えていたのです。

ところが、恋人がいなくなれば、その時計は役割を失います。

時計自体は動いている。

しかし、時間を合わせたかった相手がいない。

失恋とは、相手を失うだけではありません。

相手のために作られていた自分の習慣も、行き先を失うことです。

時計を戻せない主人公

時計の針を正しい時刻へ戻すことは簡単です。

それでも主人公は、すぐには戻せないのではないでしょうか。

時計を直すことは、恋人がもう帰ってこないと認める行為になるからです。

失恋後には、役目を終えた物を片づけられないことがあります。

使われなくなった歯ブラシ。

空いた収納。

二人分の食器。

それらを残している間は、関係が完全には消えていないように感じられます。

5分早い時計は、二人の時間がまだ部屋の中に残っている証拠です。

ベランダが二人の距離を表している

恋人は、主人公が煙を嫌うことを知っていたため、室内ではなくベランダでたばこを吸っていました。

これは小さな配慮です。

自分が好きなものを完全にはやめない。

しかし、相手が不快にならない場所を選ぶ。

恋人は主人公を無視していたのではありません。

自分の習慣と相手の好みが共存できる距離を探していました。

ただし、ベランダは室内と屋外の境界でもあります。

二人は同じ家で暮らしながら、たばこを吸う時間だけ別々の場所にいました。

そこには、近くにいるのに分かり合えていない二人の距離も表れているように感じられます。

カーテンが揺れる場面の意味

恋人がいた頃、カーテンが揺けば、その向こうにはたばこを吸う相手がいました。

現在も風は同じように吹き、カーテンも揺れています。

しかし、向こう側には誰もいません。

自然や部屋は以前と同じなのに、恋人だけがいない。

この差が、主人公へ喪失を実感させます。

人がいなくなった後、最も悲しいのは、世界が何事もなかったように動き続けることかもしれません。

時計は進む。

風は吹く。

朝も来る。

自分の人生だけが止まっていても、世界は待ってくれません。

主人公が求めていた「もっと」は何だったのか

主人公は交際中、恋人から十分に見てもらえていないと感じていました。

もっと関心を持ってほしい。

もっと愛情を表現してほしい。

もっと自分の気持ちへ気づいてほしい。

この願い自体は自然です。

しかし、「もっと」という言葉には終わりがありません。

相手が愛情を示しても、別の形を求める。

自分が欲しい方法で愛されなければ、愛されていないと感じる。

主人公は、恋人がすでに与えていた愛情を、自分の望む形ではないという理由で見落としていた可能性があります。

愛情表現の違いが別れを生んだのか

二人は、愛していなかったから別れたとは限りません。

愛情を示す方法と、愛情を感じる方法が異なっていたのかもしれません。

主人公は、言葉や態度によって分かりやすく関心を向けてほしかった。

恋人は、生活の中で相手の癖を覚えたり、嫌いな煙を避けたりすることで愛情を示していた。

どちらも相手を思っています。

しかし、自分の愛し方が相手へ伝わらず、相手の愛し方も受け取れなかった。

恋愛では、愛情の量だけでなく、届き方が重要です。

恋人は主人公をどれほど見ていたのか

主人公は別れた後、恋人が自分の細かな癖を知っていたことを思い出します。

体調や眠気によって変わる身体の反応。

触れ合うときの好み。

本人さえ意識していないような特徴。

恋人は、主人公の言葉だけではなく、日常の中でその人を観察していました。

これは、相手を大切に思っていなければ集められない情報です。

主人公は、自分が見られていなかったと思っていました。

しかし実際には、深く見られていた。

ただ、その愛情を交際中には理解できませんでした。

主人公は恋人の何を知っていたのか

主人公が恋人について考えたとき、最初に思い浮かべるのは、たばこに関する情報です。

確かに、それも相手を知っている証拠ではあります。

しかし、相手の内面へ踏み込んだ情報とは言いにくいでしょう。

何を不安に思っていたのか。

どのような未来を望んでいたのか。

主人公との関係で、何を我慢していたのか。

別れを決めるまで、どれほど悩んだのか。

主人公は、そうした恋人の心を十分に知ろうとしていなかった可能性があります。

二人の「知っている」が不均衡だった

恋人は主人公の身体や感情の細かな変化を知っている。

主人公は恋人が好む商品の名前を知っている。

この差は、二人の関係の不均衡を示します。

相手の情報を知っていることと、相手を理解していることは同じではありません。

誕生日。

好きな食べ物。

趣味。

よく使う言葉。

それらを覚えていても、その人が孤独を感じていることに気づけない場合があります。

主人公は恋人の情報を知っていました。

しかし、恋人が関係の中で何を感じていたかまでは見ていなかったのでしょう。

要求が後悔へ変わる瞬間

曲の前半では、主人公の意識は自分へ向いています。

自分をもっと見てほしかった。

自分の気持ちを大切にしてほしかった。

ところが後半になると、視線の方向が変化します。

自分が恋人をもっと見ていればよかった。

相手の気持ちへ気づけばよかった。

この変化が、「たばこ」の物語の中心です。

主人公は、恋人に求めていたことを、自分も恋人へ十分には与えていなかったと知ります。

失恋は、主人公へ愛されなかった悲しみだけでなく、愛し方を間違えていた可能性まで突きつけます。

なぜ別れる前に気づけなかったのか

人は、失う可能性が低いものを注意深く見なくなります。

明日も恋人はいる。

多少すれ違っても、関係は続く。

不満があれば、相手から言ってくる。

主人公は、恋人の存在を当然のものだと思っていたのかもしれません。

愛情がなくなったのではありません。

関係が続くことへの安心が、相手を見る感覚を鈍らせました。

大切なものほど、なくなるまで価値に気づかない。

「たばこ」は、その残酷さを日常的な小物によって描いています。

嫌いだったたばこへ火をつける理由

主人公は、恋人が置いていったたばこへ火をつけます。

これは、恋人の行動を再現しようとする試みです。

恋人はどのような気持ちで、ここから街を見ていたのか。

煙を吸いながら、何を考えていたのか。

主人公に言えない不満を、一人で抱えていたのか。

同じ物を口にすれば、相手の心が分かるような気がしたのでしょう。

しかし、物まねによって相手の気持ちを完全に理解することはできません。

火をつける行為は、近づこうとする努力であると同時に、理解が遅すぎたことを示します。

匂いが記憶を呼び戻す仕組み

匂いは、記憶と強く結びつきやすい感覚です。

街ですれ違った人の香水。

以前暮らしていた家の匂い。

特定の季節の空気。

突然、その場面にいた自分の感情まで思い出すことがあります。

主人公にとって、たばこの煙は嫌な匂いだったはずです。

ところが恋人がいなくなった後には、相手の存在を最も鮮明に感じられる匂いになります。

嫌いだったものが恋しくなるのは、たばこを好きになったからではありません。

その匂いの中に、恋人との時間が残っているからです。

煙は恋人の代わりになれるのか

煙は、目に見えてもつかむことができません。

少しの間、空間へ形を作り、やがて消えます。

主人公が恋人の匂いを感じても、本人が戻ってくるわけではありません。

恋人がいるように感じた瞬間は、煙とともに消えていきます。

この性質は、失恋後の思い出に似ています。

記憶の中では話せる。

表情も思い出せる。

しかし、現在の相手へ触れることはできない。

たばこの煙は、恋人の不在を埋めるものではなく、不在をさらに明確にするものです。

むせる場面に込められた意味

主人公は、恋人と同じようにたばこを吸おうとして、身体が受け付けずにむせます。

この場面は、「たばこ」の中でも特に象徴的です。

主人公は恋人になれません。

同じ物を吸っても、同じ感覚にはなれない。

相手の人生を後から完全に追体験することもできません。

身体は正直に、二人が別の人間であることを示します。

そして、主人公は交際中にも、相手との違いを十分に理解していなかったのかもしれません。

自分が寂しいなら、相手も同じ理由で寂しいはずだ。

自分が欲しい愛情表現を、相手も求めているはずだ。

その思い込みが、すれ違いを生みました。

むせたことは理解の失敗なのか

たばこを吸えなかったからといって、主人公の試みが無意味だったわけではありません。

同じ人間にはなれない。

完全には理解できない。

その限界へ気づけたことに意味があります。

愛するとは、相手をすべて理解することではありません。

自分には分からない部分があると認め、その部分へ関心を持ち続けることです。

主人公は別れた後になって、ようやくその姿勢を持ち始めました。

主人公の性別は男性か女性か

歌詞では一人称に男性的な言葉が使われています。

一方、ミュージックビデオでは、コレサワのビジュアルキャラクターを通して女性の失恋物語としても受け取れる表現になっています。

さらに、アンサーソング「恋人失格」では「たばこ」の相手側となる男性の心情が描かれたと説明されています。

そのため、物語上の関係を整理するなら、「たばこ」は別れた女性側、「恋人失格」は部屋を出ていった男性側の視点として構成されていると考えられます。

ただし、歌詞の感情を特定の性別だけに限定する必要はありません。

恋人を見ているつもりで見ていなかった後悔は、性別を問わず重ねられます。

「僕」という一人称を使う効果

女性側の感情を描きながら男性的な一人称を使うことで、歌詞の主人公はコレサワ本人から少し離れた存在になります。

実体験の告白だけではなく、一つの物語として聴けるようになるのです。

また、主人公の性別を固定しすぎないことで、男性の聴き手も自分の感情として受け取りやすくなります。

「たばこ」が広く歌われてきた理由の一つは、特定の人物の体験でありながら、多くの人が自分の失恋へ置き換えられる余白にあるのでしょう。

別れた理由は主人公の重さなのか

主人公は、自分が愛情を求めすぎたことが、恋人の負担になった可能性を考えます。

確かに、相手からの関心を繰り返し確認する関係は、双方を疲れさせることがあります。

少し返信が遅いだけで不安になる。

愛情表現を求め続ける。

相手が応えても、まだ足りないと感じる。

ただし、主人公だけに原因があったと断定することはできません。

恋人側も、自分の不満を十分に伝えなかった可能性があります。

二人の関係は、一人の欠点だけで壊れたのではなく、気持ちを伝え合えない状態が積み重なった結果でしょう。

主人公は「恋人失格」だったのか

主人公は、自分が相手をきちんと見ていなかったことへ気づきます。

その意味では、恋人として未熟な部分がありました。

しかし、失格という言葉で自分を全否定する必要はありません。

恋愛では、関係が終わった後にしか理解できないことがあります。

失敗を一度もせず、最初から完璧に相手を理解できる人はいません。

重要なのは、自分を罰し続けることではなく、今回の後悔を次の人間関係へ持ち帰ることです。

アンサーソング「恋人失格」との関係

「恋人失格」は、「たばこ」のアンサーソングとして公式に位置づけられています。コレサワはインタビューで、片方だけを悪者にするのではなく、二人とも自分勝手だったわけではなく、それぞれが切なかったと感じてもらえる人物像を目指したと語っています。

「たばこ」だけを聴くと、部屋を出ていった恋人は冷たい人物に見えるかもしれません。

主人公を置き去りにし、説明もなく関係を終わらせたように感じられます。

しかし反対側から見れば、恋人にも別れを選ばなければならない苦しさがありました。

別れには、一方だけの物語しか存在しないわけではありません。

二人のどちらが悪かったのか

コレサワは、「恋人失格」を作る際、男性側にも事情があり、単純な悪者にしたくなかったという趣旨を語っています。

この制作意図を踏まえると、「たばこ」は犯人を探す物語ではありません。

主人公は、もっと愛情を向けてほしかった。

恋人は、自分なりに主人公を大切にしていた。

それでも、二人の愛情は互いへ十分に届かなかった。

どちらか一方が悪いのではなく、伝え方と受け取り方のずれが、関係を壊したのでしょう。

アンサーソングが過去の意味を変える

「たばこ」を最初に聴いたとき、別れた恋人は、主人公を理解しなかった人物に思えるかもしれません。

しかし「恋人失格」を知ると、同じ出来事の見え方が変わります。

部屋を出た側も、愛情を失って簡単に去ったわけではない。

相手を大切に思いながらも、関係を続けられなかった。

一つの出来事には、複数の真実があります。

恋愛の終わりを自分の視点だけで振り返ると、相手を加害者にしたり、自分だけを責めたりしがちです。

二曲を聴くことで、別れを単純な善悪では捉えられなくなります。

二人は復縁するのか

「たばこ」の時点で、主人公は強い未練を持っています。

しかし、恋人へ連絡したり、追いかけたりする場面は描かれません。

「恋人失格」でも、二人が復縁したとは示されていません。

相手をまだ好きであることと、関係をやり直すことは別です。

愛情が残っていても、同じ関係へ戻れば、再び同じすれ違いが起きる可能性があります。

復縁には、寂しさだけではなく、二人が何を変えるのかという具体的な意思が必要です。

未練は悪い感情なのか

別れた相手を忘れられないと、自分は弱い人間だと感じることがあります。

しかし、長く大切にした人を、短期間で完全に忘れる必要はありません。

未練は、関係を簡単には切り替えられないほど、相手を大切に思っていた証拠でもあります。

問題は、未練が現在の生活をすべて止めてしまうことです。

主人公はまだ、失恋から一日しか経っていません。

今は立ち止まり、部屋の中で泣いてもよい時間でしょう。

恋人を理解するとはどういうことか

恋人を理解するとは、相手のすべてを知ることではありません。

好きな食べ物や癖を覚えるだけでもない。

相手は自分とは違う人間であり、自分とは異なる形で愛し、異なることで傷つくと認めることです。

主人公は、相手からもっと見てもらうことを求めました。

その願いを伝えること自体は間違いではありません。

ただ、自分の寂しさを伝えると同時に、相手の寂しさも聞く必要がありました。

愛情は言葉にしなければ伝わらない

恋人は、主人公の細かな癖を覚え、煙にも配慮していました。

しかし、その愛情が主人公へ十分に伝わっていなかったことも事実です。

相手を思っていれば、言わなくても分かる。

長く一緒にいるのだから、説明しなくても伝わる。

その思い込みは危険です。

心の中の愛情は、相手からは見えません。

言葉や行動へ変えなければ、存在していないものとして受け取られることがあります。

二人は互いに愛していたとしても、その愛を翻訳できなかったのでしょう。

日常の記憶が失恋を深くする

「たばこ」には、劇的なデートや特別な記念日の思い出がほとんど登場しません。

描かれるのは、時計、ベランダ、カーテン、癖、触れ合い方などです。

人が別れた後に恋しくなるのは、豪華な旅行だけではありません。

朝の支度。

相手の寝息。

食事の好み。

帰宅を知らせる音。

当時は意識していなかった日常が、失われて初めて代わりのないものだったと分かります。

大事件ではなく習慣が愛を証明する

愛は、告白や記念日の贈り物だけに存在するものではありません。

相手に合わせて時計を少し変える。

嫌がる煙を外へ出す。

眠そうな顔を見て体調を察する。

そうした習慣にも愛はあります。

しかし、習慣になった愛情は目立ちません。

毎日受け取っているうちに、存在へ気づかなくなる。

「たばこ」は、失恋によって日常の愛情が可視化される歌です。

なぜ「たばこ」は多くの人へ刺さるのか

本作には、複雑な比喩や壮大な設定がほとんどありません。

部屋の中にある身近な物と、別れた直後の感情を描いています。

だからこそ、聴き手は自分の生活を重ねられます。

恋人が置いていった服。

二人で買った家具。

相手のために変えた習慣。

別れた後も残る匂い。

誰にでも、自分だけの「たばこ」があるのです。

かわいらしい歌声と重い後悔の対比

コレサワの歌声には、親しみやすさや柔らかさがあります。

一方、歌われている内容は、愛する人を失った直後の深い後悔です。

もし感情を激しく叫ぶ歌唱であれば、主人公の悲しみは分かりやすく伝わるでしょう。

しかし、日常会話に近い温度で歌うことで、失恋が生活の中へ静かに入り込んでいることが伝わります。

大声で泣き叫ばなくても、時計やカーテンを見るだけで涙が出る。

この静かな痛みが、楽曲の現実味を生んでいます。

ミュージックビデオがアニメーションである意味

公式ミュージックビデオは、コレサワの楽曲世界を象徴するキャラクターを用いたアニメーションとして制作されています。

実在の俳優を主人公にすると、年齢や容姿、生活環境が具体的に固定されます。

アニメーションにすることで、聴き手は主人公へ自分を重ねやすくなります。

部屋に残された物。

恋人がいない空間。

たばこの煙。

現実に近い情景でありながら、特定の誰かだけの物語にならない表現です。

「たばこ」は喫煙を肯定する歌なのか

タイトルや印象的な場面にたばこが登場しますが、喫煙の魅力を伝えることが主題ではありません。

主人公は、たばこを好んでいません。

実際に吸っても、身体には合いません。

たばこは、恋人の匂いと生活を象徴する小道具です。

重要なのは煙そのものではなく、嫌いだった物まで恋しくさせる喪失の力です。

「たばこ」に関するよくある疑問

コレサワ「たばこ」はどのような歌ですか?

恋人に別れを告げられた主人公が、部屋に残された時計やたばこから二人の生活を振り返り、自分も相手を十分に見ていなかったと気づく失恋ソングです。

主人公は女性ですか?

物語上は、失恋した女性側の視点として捉えられています。アンサーソング「恋人失格」では、別れた男性側の心情が描かれています。

なぜ一人称が「僕」なのですか?

主人公を歌い手本人から離れた物語上の存在にし、性別にかかわらず感情を重ねやすくする効果があると考えられます。

二人はどれくらい付き合っていたのですか?

公式ミュージックビデオの説明では、二人が4年間交際していた物語が示されています。

5分早めた時計にはどのような意味がありますか?

時間に遅れがちな恋人を気遣って作られた、二人だけの生活習慣です。恋人がいなくなり、その役割を失ったことで喪失が強調されています。

ベランダにはどのような意味がありますか?

恋人が主人公の嫌いな煙へ配慮していた場所です。同時に、同じ家にいながら二人の間にあった小さな距離も象徴しています。

なぜ嫌いだったたばこを吸うのですか?

恋人の匂いを感じ、相手が見ていた世界へ近づこうとしたからです。喫煙を始めたいのではなく、恋人の不在を埋めようとしています。

むせる場面にはどのような意味がありますか?

主人公と恋人は別の人間であり、同じ行動をしても相手と同じ感覚にはなれないことを表しています。

二人の別れは主人公のせいですか?

主人公にも相手を十分に見ていなかった面がありますが、一人だけが悪いとは断定できません。二人の愛情表現や気持ちの伝え方がすれ違った結果と考えられます。

「恋人失格」とはどのような曲ですか?

「たばこ」のアンサーソングで、別れた男性側の心情を描いた作品です。みゆはんへの提供曲を、コレサワが2019年にセルフカバーしました。

二人は復縁しますか?

復縁は描かれていません。二人に愛情は残っているものの、それだけで関係をやり直せるとは限らないという余韻が残されています。

「たばこ」はいつリリースされましたか?

2017年3月29日に配信リリースされました。楽曲自体は2012年発表のミニアルバムにも収録されており、2017年8月発売のメジャーデビューアルバム『コレカラー』にも収められています。

まとめ|「たばこ」は、相手がいなくなってから愛を数え始める歌

コレサワの「たばこ」は、恋人に捨てられた主人公が、悲しみに暮れるだけの歌ではありません。

主人公は最初、自分が十分に愛されなかったと思っています。

もっと自分へ関心を向けてほしかった。

もっと気持ちを分かってほしかった。

もっと愛情を示してほしかった。

その寂しさは、本物だったのでしょう。

しかし、恋人がいなくなった部屋を見渡すうちに、別の事実が浮かび上がります。

恋人は主人公の細かな癖を知っていた。

嫌がる煙が部屋へ入らないよう、吸う場所を変えていた。

二人の生活には、目立たない愛情が積み重なっていた。

主人公は愛されていなかったのではありません。

自分の望む形ではなかったため、その愛を見つけられなかったのです。

そして主人公自身も、恋人を十分には見ていませんでした。

相手が好きなたばこの種類は知っている。

しかし、相手が関係の中で何を我慢し、なぜ別れを決めたのかは分からない。

情報を知ることと、人を理解することは違います。

この事実へ気づいたとき、主人公の言葉の方向が変わります。

自分をもっと見てほしかったという要求が、相手をもっと見ればよかったという後悔へ変わる。

ここに「たばこ」の物語があります。

タイトルとなったたばこも、同じように意味を変えます。

交際中には嫌いな物だった。

恋人との違いを感じさせる物だった。

しかし、別れた後には、相手の匂いを残す唯一の物になります。

主人公が火をつけるのは、たばこを好きになったからではありません。

恋人の視点へ近づこうとしたからです。

ベランダで何を考えていたのか。

自分に言えない寂しさを抱えていたのか。

同じ煙を吸えば、少しだけ理解できると思ったのでしょう。

けれど、主人公はむせます。

恋人と同じことをしても、恋人にはなれない。

相手の気持ちを完全に追体験することもできない。

この失敗が、重要です。

愛するとは、相手のすべてを分かったと思うことではありません。

自分には理解できない部分があると認め、それでも知ろうとすることです。

主人公は、別れた後になって初めて、その姿勢を持ち始めます。

しかし、気づいたときには恋人はいません。

ここに失恋の残酷さがあります。

正しい答えにたどり着いても、提出する相手がもういない。

謝りたいと思っても、相手は戻らないかもしれない。

成長した自分を、同じ人へ見せられるとは限りません。

だからこそ、後悔は未来へ使う必要があります。

次に誰かを愛するとき。

あるいは家族や友人と向き合うとき。

相手から何をもらえていないかだけではなく、自分が何を見落としているかを考える。

言わなくても分かると思わず、気持ちを伝える。

相手が自分とは違う方法で愛している可能性を想像する。

「たばこ」の主人公が失った恋は戻らなくても、その気づきまで無意味になるわけではありません。

アンサーソング「恋人失格」が存在することも、この曲の意味を深くしています。

別れた側にも、別れなければならなかった事情がある。

相手を嫌いになったから去ったとは限らない。

一人の視点では、恋愛の全体像は分かりません。

誰かが完全な被害者で、誰かが完全な加害者とは限らない。

愛し合っていても、うまく一緒にいられないことがあります。

二人の関係を壊したのは、愛情の不足ではなく、愛情を伝え合えなかったことだったのかもしれません。

時計は、今も5分早いまま動いている。

カーテンは、恋人がいなくても風に揺れる。

たばこの煙は、一瞬だけ相手の匂いを運び、やがて消える。

部屋に残された物は、主人公の問いへ答えてくれません。

それでも、それらは一つの事実を伝えています。

二人は確かに同じ場所で生活し、互いのために小さな習慣を作っていた。

恋は終わっても、その時間まで偽物になるわけではありません。

コレサワの「たばこ」は、嫌いだった煙の中に恋人の愛情を見つけ、自分が見てもらうことばかりを求めていた主人公が、初めて相手を見ることを学ぶ歌なのではないでしょうか。