【歌詞考察】平井堅「UPSET」に込められた怒りと哀しみの正体とは?英語詞と日本語詞で読み解く感情の裏側

「UPSET」のタイトルが示す“動揺”と“裏切り”の二面性

平井堅の楽曲「UPSET」は、そのタイトルが示す通り、感情がかき乱される様子を見事に音楽として昇華しています。“UPSET”は英語で「動揺させる」「ひっくり返す」といった意味を持ちますが、この一語に楽曲全体のテーマが集約されています。

曲の主人公は、愛する相手に裏切られ、心を揺さぶられながらも、その怒りや失望をストレートに言葉にしていきます。感情の浮き沈み、理性と衝動の間を行き来する心理状態が、歌詞の展開により徐々に明らかになります。

また、「UPSET」は感情だけでなく、関係性の崩壊や信頼の転覆という意味も持ちます。このタイトルの二面性こそが、曲の世界観の核といえるでしょう。


Aメロの描写 – “人の心を奪って”から分かる欺瞞と怒り

歌詞冒頭、日本語で描かれるパートには、感情を抑えきれない怒りがにじみ出ています。「人の心を奪って」「裏で本命とラブラブして」「味わい尽くしたらポイ捨て」——このような直接的な表現からは、相手の行動に対する強烈な嫌悪感と裏切られた苦しみが見て取れます。

とくに「本命とラブラブして」というくだりは、第三者との関係が表面化したことで感じる喪失感や、自己の価値が貶められたという絶望を象徴しています。主人公の怒りは、単なる嫉妬ではなく、愛と信頼を弄ばれたことに対する深い悲しみに根ざしています。

平井堅の歌声はこの怒りと哀しみを力強く、かつ繊細に表現しており、聴く者の胸をえぐるようなリアリティを持っています。


英語パートで露わになる“冷徹な告発”のリアリティ

英語詞の部分では、主人公の怒りがより鋭く、冷徹に表現されます。「Hey Betcha makin’ out with that other guy」「You totally set me up」といったフレーズは、裏切りを告発するメッセージとして機能しており、相手の不誠実な行動を具体的に非難しています。

このパートは、単なる感情の発露ではなく、相手に対する“言い訳の余地を与えない”追及です。つまり、感情のカタルシスではなく、論理的な糾弾に近い性質を帯びています。

また、英語であることにより感情が一層ストレートに伝わり、リズム感とともに聴く側の心に鋭く刺さる効果を持っています。


“Devil”や “FAKE GIRL” – 歌詞に散りばめられた強いレッテル言葉

「UPSET」の歌詞には、“Fake girl”“Bad girl”“Devil”といった、強いレッテルを貼る単語が頻出します。これらの言葉は、相手の行為を一刀両断するラベルであり、同時に主人公がどれほど裏切りに傷つき、怒っているかを明示する言葉でもあります。

これらの語は、一見すると単なる罵倒に見えますが、その裏には「信じていたのに」という深い失望が存在しています。特に“Devil”という単語は、相手が天使のように見せかけていた存在でありながら、実は悪意を持っていたことを暗示しています。

平井堅はこうした言葉を効果的に織り交ぜ、情感豊かに歌い上げることで、単なる怒りの発露ではなく、感情の深層に迫る表現へと昇華しています。


平井堅が“感情の解剖”を歌う歌詞世界の真髄

平井堅はこれまでも「瞳をとじて」「even if」「ノンフィクション」など、感情の機微を丁寧に描いてきましたが、「UPSET」ではその中でも特に“怒り”という感情にフォーカスしています。ラジオ番組で本人が「喜怒哀楽を全部入れた」と語っていたように、この曲には抑圧ではなく、全力で“叫ぶ”ようなエネルギーが込められています。

怒りの中にある哀しみ、哀しみの中にある愛情の残り香——そうした複雑な感情が、歌詞と歌唱によって繊細に描かれ、聴く者の共感を誘います。

この曲が人々の心に強く残るのは、単に怒っているだけではなく、「どうしてこんなに傷ついたのか」を、音楽を通じて“感情の解剖”として見せてくれているからに他なりません。


まとめ:

平井堅「UPSET」は、単なるラブソングや失恋ソングを超えて、人間関係における裏切り、怒り、哀しみという複雑な感情を鋭く描き出した作品です。英語と日本語を巧みに行き来しながら、感情の深層を掘り下げることで、リスナーに強い印象を与えます。「UPSET」というタイトルに込められた意味を深く読み解くことで、歌詞がより鮮明に、リアルに響いてくるはずです。