【ノンフィクション/平井堅】歌詞の意味を考察、解釈する。

「小さな巨人」という日曜劇場のテーマ曲として、平井堅さんが特別に書き下ろした「ノンフィクション」は、その感動的な歌詞と世界観が注目を集めました。
MVやFNS歌謡祭での素晴らしいパフォーマンスも話題となり、この楽曲は「生きること」をテーマに深く考えさせられる内容です。
今回は、そんな「ノンフィクション」の歌詞の意味をじっくり考察してみましょう。

とにかく生きていてほしかった

描いた夢は叶わないことの方が多い
優れた人を羨んでは自分が嫌になる

浅い眠りに押しつぶされそうな夜もある
優しい隣人が陰で牙を剥いていたり

惰性で見てたテレビ消すみたいに
生きることを時々やめたくなる

「夢は叶わないことの方が多い」というフレーズが、曲の冒頭で現実の厳しさを描写しています。

人は時に自分と他人とを比べ、嫉妬や自己嫌悪に苦しむことがあります。
眠れない夜や身近な人の裏切りなど、人生には暗い側面も存在するでしょう。

このような苦しい現実に直面し続けると、心身の疲労が蓄積し、興味を失ってしまうこともあるでしょう。

「惰性で見てたテレビ消すみたいに」という歌詞は、人生を終わらせたくなる感覚を表現しています。
自分の人生が他人事のように感じたり、どうでもよくなってしまう状況に置かれることもあるのかもしれません。

そして、サビの歌詞が続きます。

人生は苦痛ですか? 成功が全てですか?
僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ
みすぼらしくていいから 欲まみれでもいいから
僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから
響き消える笑い声 一人歩く曇り道
僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ

「ノンフィクション」には、平井堅さん自身の経験が反映されており、親しい人が突然命を絶ったという出来事が含まれているとされています。

「人生は苦痛ですか? 成功が全てですか?」というフレーズは、その親しい人への問いかけだけでなく、現在苦しんでいる人々への励ましの言葉とも聞こえるかもしれません。

「響き消える笑い声」は、頭の中で鮮明に響く大切な人の声が次第に薄れていく様子を表現しているかもしれません。
「一人歩く曇り道」は、その人を思い出しながら一人で進む悲しみや寂しさを描写しているように思われます。

「あなた」の姿がみすぼらしくても、欲まみれでも、生きて会えるならそれでいいという思いが歌詞に込められています。

「僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ」からは、深い切なる思いが滲み出ているように感じられます。

成功とは何か

筋書き通りにいかぬ毎日は誰のせい?
熱い戦いをただベンチで眺めてばかり

消えそうな炎 両手で包むように
生きることを諦めきれずにいる

1番と同様に、人生の苦悩や思い通りにいかない現実が歌われています。

「熱い戦いをただベンチで眺めてばかり」という部分は、自分が主要な役割を果たせないことに対する劣等感や虚無感を表していると考えられます。

それでも、取るに足りないと感じる一生でも、自分自身を健気に守り抜く力や、生きることを諦めない強い意志が確かに存在するようです。

そして、次にサビの歌詞が続きます。

人生は悲劇ですか? 成功は孤独ですか?
僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ
正しくなくていいから くだらなくてもいいから
僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから
鞄の奥で鳴る鍵 仲間呼ぶカラスの声
僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ

「人生は悲劇ですか? 成功は孤独ですか?」という問いが投げかけられます。

成功が孤独なものなのかは、成功者にしか理解できない複雑な問いです。
外から見て成功しているように見える人でも、実際には苦しみを抱え、辛い結末に直面することもあるでしょう。

成功しているか否かに関わらず、人生には常に悲劇の可能性がつきものかもしれません。

人生を悲劇的な結末にしないためには、心を許せる存在と本音で語り合うことが重要なのかもしれません。

「正しくなくても、くだらなくても、生きて会えるならそれでいい」という気持ちを持ちながら、もう二度と会えない大切な人の存在を感じています。

「鞄の奥で鳴る鍵 仲間呼ぶカラスの声」からは、記憶の中の笑い声が消え、現実の虚しさが響く音に焦点が移ったことが伝わります。

大切な人がいなくなったという現実に立ち尽くすような描写がありますね。

生きるとは

何のため生きてますか? 誰のため生きれますか?
僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ
人生を恨みますか? 悲しみはキライですか?
僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから
秘密 涙 ひとり雨 目覚めたら襲う不安
僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ
信じたいウソ 効かないクスリ 帰れないサヨナラ
叫べ 叫べ 叫べ
会いたいだけ

「何のために生きるか」や「誰のために生きれるか」という問いが投げかけられ、生きる目的や活力について考えさせられます。

自分の境遇を恨んでしまいそうなときや悲しみに限界を感じたときなど、生きることを諦めたくなる瞬間は個々に存在するでしょう。

そんなときに何かや誰かの存在があれば、「あなた」の未来は違ったかもしれません。

「秘密 涙 ひとり雨 目覚めたら襲う不安」という歌詞は、人知れず涙を流し、朝になると不安が襲ってくる「あなた」の姿を描写しているのかもしれません。

手遅れになってしまった「あなた」との別れの現実。

「信じたいウソ 効かないクスリ」というフレーズは、遺された者の悲しみと無力感を表現しているようです。

ただ、どれだけ悔やんでも最後に会った日に戻ることはできません。

「帰れないサヨナラ」とは、最後に手を振って別れた瞬間が忘れられず、心の整理がつかない状態を表現しているのでしょう。

そして、最後の歌詞は「叫べ 叫べ 叫べ 会いたいだけ」。

苦しみや悲しみ、後悔といった感情が交錯し、「会いたい」という切なる思いが高まっているようです。

そんな届かない思いに苦しむこともまた、人生の現実「ノンフィクション」なのかもしれません。

みんな精いっぱい生きている

今回は、平井堅さんの「ノンフィクション」の歌詞について意味を考察しました。

この歌詞は、人生の美しい側面だけでなく、暗部にも深く切り込んでおり、強いメッセージ性を持っていますね。

実際に追い詰められていたり、絶望している人の気持ちは、外から見るだけでは理解し難いものです。

ほとんどの人は、自分の人生に精一杯取り組んでいることでしょう。

それでも、互いに苦しみを共有できるような友人がいれば、大切な人に花束を手向けるような悲劇は減るのかもしれませんね。