【歩いて帰ろう/斉藤和義】歌詞の意味を考察、解釈する。

斉藤和義の有名な楽曲、「ポンキッキーズ」のオープニングテーマに選ばれたことで、大きな注目を集めた「歩いて帰ろう」をご紹介します。

この曲の歌詞には、ポジティブなメッセージとは対照的な意味が込められています。

教科書に載せてもいいほどの名曲

この記事では、1994年6月1日に発売された斉藤和義の4thシングル「歩いて帰ろう」に焦点を当てます。

この曲は、当時フジテレビの子供向け番組「ポンキッキーズ」のオープニングテーマとして採用され、一気に人気を博しました。

斉藤和義に詳しくない方でも、この曲を知っている人は多いでしょう。

更に驚くべきことに、この曲はリリースから約20年後の2015年に再び注目されることとなりました。


フジテレビ系『ポンキッキーズ』2代目オープニングテーマ
サントリー「ウイスキー膳」CMソング
朝日放送「東西芸人いきなり!2人旅」挿入歌
スズキ 「ラパン」CMソング (2015年)
フジテレビ系『FNS27時間テレビ めちゃ²ピンチってるッ! 1億2500万人の本気になれなきゃテレビじゃないじゃ〜ん!!』メインテーマ曲 (2015年)
奈良テレビ「気ままに歩こーく!」

このリストは、「歩いて帰ろう」のタイアップ履歴を示していますが、特に注目すべきは2015年にFNS27時間テレビやスズキ「ラパン」のCMで使われたことです。

通常、タイアップには最新の楽曲が使われることが一般的ですが、20年前のこの曲が再び使われるというのは、その名曲である証拠と言えます。

筆者はこの曲を教科書に載せてもいいほどの名曲だと考えています。

この曲の特徴は、アップテンポで元気なメロディで、誰もが体を揺らしたくなるような心地よい感覚を与えます。

歌詞にも前向きな意味が込められていると思いきや、実際はそうではないようです。

大人たちへの不満を表現した曲

皆さんは斉藤和義というと、どのような印象をお持ちでしょうか。

現在では彼の望むロックのイメージが定着していますが、かつてはレコード会社との関係で苦労していた時期もあったようです。

彼はハードロックやヘビーメタルのルーツを持っていますが、デビュー当時のキャッチコピーはそれとは異なる印象を与えるものでした。


デビュー当時のキャッチフレーズは、フォークシンガーを思わせる『四畳半じゃ狭すぎる』というものであった。

弾き語りでしっとりとした雰囲気の曲も多くありますので、彼のイメージにはフォークシンガー的な要素も含まれているかもしれませんが、実際にはそれは彼の意向とは異なるということです。

初期の活動においては、このキャッチコピーに合わせた活動が行われていた可能性があります。


「歩いて帰ろう」は、大人たちへの不満を表現した曲だと言われています。

歌詞を深読みすればその意味がわかるとされていますが、最初は想像もつかない内容ですね!

この曲がポジティブな印象の曲として扱われているのは、大人たちへの皮肉なのか、それともあまり表立って言えない気持ちの表れなのか、疑問です。

しかし、大人たちのやっていたことに対する不満を表現した楽曲が、彼をヒットさせることへ導いたのは興味深いエピソードですね。

次に、歌詞の内容についても読み解いていきましょう!

永遠のジレンマ

走る街を見下ろして のんびり雲が泳いでく
誰にも言えないことは どうすりゃいいの? おしえて

歌詞には、主人公が空を眺めて物思いにふける様子が描かれていますね。

「走る街」という表現がありますが、実際に動いているのは雲の方です。

しかし、雲から見れば自分が動いていても街が動いているように見えます。

この部分の表現はなかなか面白く、何気なく聴いていましたが、このような洞察も含まれているとは興味深いですね。


そして、主人公が内に秘めた悩みは、斎藤の感情で言い表せば、「実際にはもっと異なる音楽を追求したい」ということです。

しかしながら、デビューしたばかりの新人がそのような本音を周囲の大人に打ち明けることは難しいでしょう。

彼らは周囲の期待に応える必要があり、そのために不満を口にしても意味がないことを理解しています。

それでも、内なる不満は彼らの心を不安定にさせています。

まさに、どうすればよいのかわからなくなるような状況ですね。

雲の描写も、たぶん、「雲はどこまでも自由に移動できるが、自分は束縛されている」という感情の反映なのでしょうか。


急ぐ人にあやつられ 右も左も同じ顔
寄り道なんかしてたら 置いてかれるよ すぐに

「急ぐ人」とは、この文脈では、早く成功を収めることを焦る大人たちのことを指します。

彼らの要求に応えるために作られる音楽は、流行に迎合したり似たり寄ったりの曲ばかりです。

自分の中には本当にやりたい音楽があるのに、こうした傾向に逆らえず、理想に辿り着けないという不満が募ります。

メジャーデビュー自体が素晴らしいことなのに、それが終点ではなく、道のりの一部であると考える姿勢は、斎藤の考え方を思い起こさせます。

彼が当時から高い理想を抱いていたことが、彼の現在の人気にも影響しているのでしょう。


嘘でごまかして 過ごしてしまえば
たのみもしないのに 同じ様な朝が来る

デビュー直後の新人アーティストは、本来好まないジャンルであっても、納得して受け入れるしかないという状況にあります。

逆に、そのような妥協を見せれば、大人たちが何とかしてくれるかもしれないと期待しているのかもしれません。

しかし、そうした依存は本人の意志ではなく、無味乾燥な結果につながる可能性もあります。

アーティストとしては、成功が最も重要であり、それは自身の楽曲が認められることと同等です。

しかし、自分の本心とは異なる音楽で成功しても、満足できないという気持ちもあります。

その場合、成功よりも自己満足を優先するのか、あるいは仕事として受け入れるのか、アーティストにとっては永遠のジレンマと言えるでしょう。

一人の時間の大切さ

走る街を見下ろして のんびり雲が泳いでく
だから歩いて帰ろう 今日は歩いて帰ろう

「歩いて帰ろう」というフレーズが物語の中で再び登場しますね。

主人公が歩いて帰る選択をした理由は、おそらく自分の思いに耽ろうとする時間を持ちたかったからでしょう。

イライラや不満が頭をもたげても、時には一人で考え、感情を整理することができます。

自分の内面を他人に話せないときは、一人で心の中を整理する必要があります。

そのためには、静かな時間と空間が必要です。

だからこそ、主人公は歩いて帰ることを選んだのでしょう。


その後の歌詞は同じようなテーマが繰り返されますね。

この曲は、一人の時間の大切さを歌ったものです。

歩いて帰ることはその一例ですが、一人の時間の過ごし方は個々に異なります。

ただし、身体を動かすことは、静かに座っているよりも脳の活性化につながることがあります。

その意味では、歩いて帰るという行為は、家に帰るための移動というわけではなく、効率的な方法と言えるでしょう。

景色を眺めながら歩くことで気分も変わり、ストレスも発散されます。

歌詞には不満が込められていましたが、運動がストレス解消に良いとされるのも納得ですね。

彼の音楽キャリアにおいて多くの意味を持つ1曲

「歩いて帰ろう」は、斉藤和義の代表曲として広く知られていますが、その魅力を味わうならば、当時のオリジナルアルバムを聴くのがおすすめです!

この曲が収録されているオリジナルアルバムは、1995年2月1日にリリースされた「WONDERFUL FISH」です。

この作品から、「歩いて帰ろう」が生まれた当時の斉藤の感性を感じ取ってみてください。

このアルバムの頃から、斉藤の音楽のイメージが徐々に変化していったようですね。

やはり、「歩いて帰ろう」は彼の音楽キャリアにおいて多くの意味を持つ1曲だったのではないでしょうか。

たまにはぼんやりと考え事をしながら

斉藤和義の「歩いて帰ろう」を紹介しました。

この曲が伝える1人の時間の重要性は、現代社会が忙しさに追われがちな中で忘れがちなことの一つかもしれません。

情報の過剰な時代において、頭はしばしば「容量オーバー!」と警告を発するかもしれません。

周りの騒がしさに巻き込まれると、自分自身を見失いがちです。

そんなとき、たまにはぼんやりと考え事をしながら歩いて帰るなど、自分のペースを取り戻すことが必要かもしれません。

この曲は大人たちへの不満を歌っていますが、同時に自分の時間を大切にすることの意味も教えてくれるのかもしれませんね。