ゆっくり起きて、何を食べるか考える。そんな穏やかな休日に、もう隣にいない恋人を思い出してしまう。
コレサワの「ブランチにアイ・ミス・ユー」は、気ままな一人の時間と、誰かを恋しく思う気持ちが重なる楽曲です。
この歌には、別れた後も相手の気配が残る部屋や、二人で過ごした生活の記憶が描かれています。そして、その寂しさの中で、主人公は今日の食事を自分で選ぼうとします。
恋が終わっても、そこで育った自分や、大切だった時間は残っている。 そうした視点から読むと、明るい曲調に乗せた失恋の言葉が、少し違った温かさを持って響きます。
この記事では、タイトル、部屋の描写、ボロネーゼの思い出、最後のパスタに注目して、歌詞の意味を考察します。
※以下は、公開歌詞と本人のコメントをもとにした一つの解釈です。
「ブランチにアイ・ミス・ユー」はどんな曲?
「ブランチにアイ・ミス・ユー」は、2026年10月21日に配信リリースされたコレサワの楽曲です。TBS系情報バラエティ番組『王様のブランチ』の、2026年10月からのテーマソングとして書き下ろされました。columbia.jp
作詞・作曲はコレサワ。歌ネット
本人は『SCHOOL OF LOCK!』で、平日を頑張った後の休日の幸せをイメージして作ったと説明しています。同時に、明るい失恋ソングでもあると語っています。未来の鍵を握るラジオの中の学校
この二つの説明は、曲の印象をつかむ手掛かりになります。
一人で過ごす休日には、好きなように時間を使える心地よさがある。その自由な時間に、ふと寂しさが入り込むこともある。この歌は、その両方が同じ日に存在する感覚を描いているように思えます。
タイトルの意味|休日の食事に、恋しさが入り込む
ブランチは、朝食と昼食を兼ねた食事のことです。曲名からは、急いで出かける必要のない、ゆっくりした時間が思い浮かびます。
そこに重なる「アイ・ミス・ユー」は、相手がいなくて寂しい、恋しいという気持ちを表す言葉です。
この組み合わせによって、失恋は生活のすぐそばに置かれています。主人公は、今日何を食べようかと考える時間にも、相手の不在を感じているのでしょう。
食事は毎日繰り返すものです。だから、誰かと食べた記憶は、その人がいなくなった後の食卓にもついてきます。
自分のために過ごせる休日に、二人で過ごした時間が顔を出す。 タイトルには、そんな生活の中の恋しさを読み取れます。
部屋に残る気配が、別れを何度も実感させる
歌詞の主人公は、家のあちこちで恋人を思い出します。相手がまだいるように感じる気持ちと、すでにいないと知っている現実が重なっています。歌ネット
同じ部屋で過ごしていると、場所と記憶は切り離しにくくなるものです。目に入る景色が変わらないほど、そこにいた人だけがいないことを意識してしまう。
この曲の部屋は、思い出をしまっておける場所であると同時に、何度も思い出してしまう場所でもあるのでしょう。
また、休日は、自分の気持ちへ意識が向きやすい時間でもあります。予定に追われている間には気づかなかった寂しさが、何もしない時間にふくらむ。そう読むと、休日を舞台にした意味も見えてきます。
楽に過ごせるはずの家で、心だけが落ち着かない。その小さなずれが、主人公の失恋を身近に感じさせています。
ボロネーゼの思い出に表れる、時間がたってからの後悔
曲の中で印象的なのが、恋人が作ったボロネーゼをめぐる記憶です。
コレサワはラジオで、以前、恋人が夜にパスタを作ってくれた際、ダイエット中だったため怒ってしまった体験を思い出し、歌詞に取り入れたと明かしています。未来の鍵を握るラジオの中の学校
ここには、同じ出来事でも、そのときと後になってからでは受け取り方が変わるという、恋愛の切なさがあります。
一緒にいたときには、自分の都合や好みが気になる。離れた後には、料理を用意してくれた相手の姿が懐かしくなる。主人公の中では、一度は不満につながった記憶が、恋しい時間として浮かび上がっているようです。
ただし、この出来事を別れの原因と決めつけることはできません。歌詞から分かるのは、過去の自分の反応を、今の主人公が問い直しているということです。
何気ないやり取りまで思い出してしまうほど、相手は暮らしの中にいた。 ボロネーゼという具体的な料理が、その親密さを伝えています。
恋によって変わった自分を、どう受け止めるか
サビには、相手との出会いを通じて、以前より素敵になった自分を感じる視点があります。「魔法」という言葉も、その変化に重ねて読むことができます。歌ネット
恋をすると、誰かに会うための支度が楽しくなったり、これまで知らなかった自分の一面に気づいたりすることがあります。相手を好きになったことが、自分への関心まで変えていくのです。
そうして手に入れた自分を、別れた後にも大切にできるでしょうか。
この歌には、恋が終わった寂しさとともに、恋をした自分を気に入っていたいという願いが感じられます。
関係が続かなかったとしても、その時間に覚えた喜びや、自分の変化には意味がある。主人公は、傷ついた気持ちを抱えながら、その価値まで失いたくないのかもしれません。
ここに、曲の明るさとつながる部分があります。寂しさを口にしながら、自分自身への愛着も手放していない。その揺れが、歌に生き生きとした表情を与えているのでしょう。
なぜ、失恋を明るい曲で歌うのか
本人が語る休日の幸福感と、失恋の寂しさ。この曲では、それぞれの気持ちが同時に成り立っています。
二度寝ができるのはうれしい。ゆっくり食事をするのも楽しい。それでも、隣にいた人を思い出すと胸が痛む。歌詞には、そうした感情の入り交じる生活があります。
心が傷ついていても、一日のすべてが同じ色になるとは限りません。お腹が空くことも、何かを楽しみたくなることもあるでしょう。
そのため、曲の明るさは、主人公が過ごす休日の心地よさとして受け取れます。同時に、その心地よい時間を誰かと共有していた記憶を、いっそう恋しくさせる響きも持っています。
悲しかった恋を思い出すだけなら、忘れたいという気持ちに傾くかもしれません。楽しかった時間も覚えているから、気持ちは簡単に片づかない。この曲の明るさには、その複雑さがあるように感じます。
最後のパスタが示す、自分の暮らしを続ける小さな一歩
終盤で主人公は、ブランチにパスタを作ることを考えます。歌ネット
先ほどまでパスタは、恋人が作ってくれた料理を思い出すきっかけでした。それが最後には、自分がこれから作るかもしれない食事へと変わります。
この変化に注目すると、曲の結びが持つ温かさが見えてきます。
相手のことを思い出すたび、過去に気持ちが向いていた主人公が、今日の自分のために何かをしようとする。恋人との記憶が残っている台所で、自分の生活を動かそうとしているのです。
もちろん、この一言だけで失恋から立ち直ったと断定することはできません。まだ迷いを含んだ、ささやかな思いつきとして歌は終わります。
だからこそ、その一歩には無理がありません。忘れられない気持ちを抱えたままでも、今日何を食べるかは自分で選べる。その程度の動きから、暮らしは少しずつ変わっていくのでしょう。
思い出の料理を、自分の今日の食事にする。 ラストのパスタには、過去を抱えながら現在を生きようとする主人公の姿を重ねられます。
「ブランチにアイ・ミス・ユー」が描く、失恋後の休日
「ブランチにアイ・ミス・ユー」は、一人で過ごす休日の中に、恋人と暮らした記憶が重なる歌です。
部屋に残る気配や、料理をめぐる思い出は、相手が生活の一部だったことを感じさせます。一方で主人公は、その恋によって変わった自分にも目を向け、最後には自分の食事を考えます。
寂しさがすぐに消えなくても、自分のための休日は続いている。
この曲を聴いた後には、何を食べようかと考えるだけの時間にも、自分の暮らしを取り戻していく小さな力を感じられるのではないでしょうか。
コレサワが描く恋の終わりをさらに読みたい方は、「元カノになるの」の歌詞考察や、「たばこ」の歌詞考察もあわせてご覧ください。


