aiko「恋をしたのは」歌詞の意味を考察|なぜタイトルは過去形?『聲の形』と重なる変わらない愛

aiko「恋をしたのは」の歌詞の意味を考察。なぜタイトルは「恋をした」という過去形なのか。雨や写真、色、道標といった言葉に込められた意味や、映画『聲の形』との関係から、離れても消えない“変わらない愛”を読み解きます。

aikoの「恋をしたのは」は、好きな人への強い想いを歌いながら、どこか別れの気配や過ぎ去った時間を感じさせるラブソングです。

タイトルも「恋をしている」ではなく「恋をした」。

しかも、「恋をしたのは――」と、その先にまだ言葉が続きそうな不思議な題名になっています。

このタイトルには、単なる失恋では説明できない、過去から現在まで変わらず残り続ける愛が込められているのではないでしょうか。

「恋をしたのは」は2016年9月21日に発売されたaikoの36枚目のシングルで、映画『聲の形』の主題歌に起用されました。

そして映画『聲の形』は2026年に公開10周年を迎え、10月30日から記念再上映されることも発表されています。10年という時間を経て改めて作品に触れる今だからこそ、「恋をしたのは」が描いた“時間を越えて残る気持ち”も、より深く響いてきます。

本記事では、タイトルの意味や歌詞に登場する雨、写真、色、そして「道標」というイメージから、「恋をしたのは」が描く愛について考察します。

「恋をしたのは」はどんな曲?

「恋をしたのは」は、aikoが作詞・作曲を手掛けた楽曲です。

映画『聲の形』のために一から書き下ろされた楽曲だと思われることもありますが、aikoはインタビューで、この曲自体は映画の依頼を受ける以前に作っていたと明かしています。

当初は別の楽曲が映画に使われる予定だったものの、aiko自身が「こちらの曲の方が映画に合う」と考え、最終的に「恋をしたのは」が主題歌になったと語っています。

つまり、歌詞をすべて映画の登場人物に当てはめて考える必要はありません。

むしろ、aikoがもともと描いていた普遍的な愛の感情と、『聲の形』が描く人と人とのつながりが、偶然深く響き合った楽曲だと考えた方がよいでしょう。

タイトル「恋をしたのは」はなぜ過去形なのか

最も気になるのは、やはりタイトルです。

「恋をする」でも「恋をしている」でもなく、

「恋をしたのは」

と過去形になっています。

一見すると、すでに終わった恋を振り返っているようにも感じられます。

しかし歌詞全体を見ると、主人公の気持ちは決して過去のものになっていません。

時間が経っても、大切な人への想いは現在まで残り続けています。

aiko自身もこの曲について、一瞬の恋愛ではなく、離れていても一緒にいても変わらないような大きな愛を書きたかったと説明しています。また、「恋をした」という最初の気持ちがあるからこそ、その人をずっと思い続けることができるという趣旨の発言もしています。

つまり「恋をした」は、

恋が終わったことを表す過去形ではなく、すべてが始まった瞬間を指す過去形

なのではないでしょうか。

「あの人に恋をした」。

その事実だけは、時間が経っても変わらない。

そこから現在まで続いている感情こそが、この曲の中心にあります。

「恋をしたのは」の後には何が続く?

タイトルが「恋をした」で終わらず、「恋をしたのは」となっていることも重要です。

「恋をしたのは――」

と聞けば、その後に何か答えが続きそうに感じます。

「いつからなのか」

「なぜなのか」

「誰だったのか」

さまざまな言葉を想像できます。

しかし、タイトルには答えがありません。

この“言い切らなさ”こそが、この曲の魅力なのではないでしょうか。

恋に落ちた瞬間を正確に説明できる人は、実はそれほど多くありません。

気付いたときには、その人が特別な存在になっていた。

いつから好きだったのかを思い返しても、はっきりした境界線が見つからない。

タイトルの余白は、そんな恋の始まりの曖昧さを表しているように感じられます。

「雨」と「晴れ」が表している二人の距離

楽曲の冒頭では、雨が降っている場所と、その向こうにある晴れた場所が対比されています。

ここで描かれる雨は、単なる天気ではないでしょう。

二人の間に存在する不安や寂しさ、会えない時間を象徴していると考えられます。

一方、その遠くには晴れた場所があります。

今は雨の中にいても、この状態が永遠に続くわけではない。

いつかまた会える。

いつか光が差す。

そう信じようとする主人公の気持ちが表れています。

ただし、この曲の雨は完全には消えません。

後半でも再び雨のイメージが現れます。

つまり、「悲しみがなくなれば愛は完成する」という物語ではないのでしょう。

悲しみも不安も抱えたまま、それでも相手を愛し続ける。

そこに「恋をしたのは」が描く愛の強さがあります。

増えていく「写真」が意味するもの

歌詞には、異なる色を持つ写真を一枚ずつめくっていくようなイメージが登場します。

これは、二人が積み重ねてきた思い出を表しているのでしょう。

楽しかった日。

悲しかった日。

何気なく過ごした日。

一つひとつは違う色を持っています。

恋愛を振り返ったとき、すべての記憶が幸せだったわけではありません。

それでも、そのすべてが「あなたと過ごした時間」です。

良い記憶だけを残そうとするのではなく、傷ついた出来事まで含めて大切にしようとしている。

だからこそ、この曲からは単なる若い恋愛以上の深さを感じます。

「赤」と「白」は何を意味している?

歌詞の中では、印象的に二つの色が登場します。

赤と白です。

ここにはさまざまな解釈ができます。

赤という色から連想されるのは、恋や情熱、あるいは人と人を結ぶ運命です。

一方の白は、何も書かれていない空白や、時間が止まったような風景を思わせます。

二人は確かに惹かれ合っていた。

けれど、ほんの小さなすれ違いによって関係が変わってしまった。

そんな記憶が、鮮明な「色」として主人公の中に残っているのではないでしょうか。

人は強く心を動かされた出来事ほど、場所や光景、色まで覚えていることがあります。

「恋をしたのは」の主人公もまた、過去を単なる出来事としてではなく、映像のような記憶として抱え続けているのでしょう。

「道標」が示す本当の愛

この曲を理解するうえで、最も重要なのが「道標」というイメージです。

主人公にとって相手は、単に好きな人ではありません。

自分がこれから人生を歩いていくうえで、方向を示してくれるような存在になっています。

ここが「恋をしたのは」の大きな特徴です。

一般的なラブソングでは、

「ずっと一緒にいたい」

「離れたくない」

という気持ちが愛として描かれることがあります。

しかしこの曲では、必ずしも二人がずっと同じ場所にいる必要はありません。

たとえ離れていても、その人と出会った経験が、自分の中に残っている。

相手からもらったものが、この先の人生を歩く力になる。

つまり「あなた」は、所有する存在ではなく、

自分の人生そのものを変えてくれた存在

なのです。

これはaikoがインタビューで語った、離れていても変わらない愛というテーマとも重なります。

『聲の形』と「恋をしたのは」が重なる理由

映画『聲の形』は、石田将也と西宮硝子を中心に、人と人が理解し合うことの難しさや、過去の傷と向き合う姿を描いた作品です。

公式サイトでも「恋をしたのは」が同作の主題歌として紹介されています。

この映画と楽曲が特に重なるのは、単純な「恋愛成就」の物語ではない点でしょう。

将也と硝子の間には、取り返すことのできない過去があります。

お互いに傷つき、言葉が届かず、何度もすれ違います。

それでも、人と出会った事実そのものまで消すことはできません。

むしろ過去の痛みを抱えながら相手と向き合おうとすることで、それぞれの人生が少しずつ変化していきます。

これは「恋をしたのは」が描く、

傷ついた記憶さえ含めて、大切な人との時間が自分の人生の一部になる

という感覚と非常によく似ています。

そのため、映画のために最初から書かれた曲ではないにもかかわらず、驚くほど作品の世界観に寄り添って聞こえるのでしょう。

この曲は失恋ソングなのか?

「恋をしたのは」には、別れを思わせる要素があります。

過去を振り返る表現が多く、涙やすれ違いも描かれているからです。

そのため、失恋ソングとして聴くこともできます。

しかし、完全に「終わった恋」を歌っていると考えると、少し違和感が残ります。

主人公の中で相手は、今でも非常に大きな存在だからです。

恋人同士として一緒にいるかどうかより、

その人を愛したことで、自分の人生がどう変わったのか

ということに焦点が置かれています。

だからこの曲は、失恋ソングであると同時に、

恋をしたことそのものを肯定する歌

とも言えるのではないでしょうか。

結果がどうなったとしても、あなたを好きになったことは間違いではなかった。

あなたとの時間があったから、今の自分がいる。

そんな静かな肯定が、この曲には流れています。

なぜ「好き」「愛してる」だけでは表現できないのか

aikoの楽曲には、単純に「好き」と言葉にするだけでは伝えきれない感情が数多く描かれています。

「恋をしたのは」も同じです。

この曲が伝えているのは、恋愛感情の強さだけではありません。

会いたい。

寂しい。

傷ついた。

忘れたくない。

幸せでいてほしい。

自分も前に進みたい。

それらすべてが混ざり合って、一つの「愛」になっています。

だからこそ、恋をしている最中だけではなく、誰かと別れたあとや、大切だった人を思い出したときにも心に響くのでしょう。

恋は関係が終われば消えるとは限りません。

人を好きになった経験は、その後の考え方や生き方の中にも残っていきます。

「恋をしたのは」は、そんな恋の“その後”まで描いたラブソングなのです。

まとめ|「恋をしたのは」は、過去にならない愛を歌った曲

aiko「恋をしたのは」は、過ぎ去った恋を懐かしむだけの歌ではありません。

タイトルが過去形なのは、恋が終わったからではなく、

「あなたに恋をした」という人生の決定的な出来事を振り返っているから

なのではないでしょうか。

二人の間には雨もあり、すれ違いもあり、傷ついた記憶もあります。

それでも、相手と出会ったことで生まれた気持ちは消えません。

その人が今そばにいるのかどうかさえ、この曲では決定的な問題ではないのでしょう。

大切なのは、

「あの人を好きになったことで、自分は変わった」

という事実です。

そして、その記憶がこれから人生を歩いていくための道標になる。

だから「恋をしたのは」という言葉は、過去だけを指しているようでいて、実は未来へ向かっています。

恋をした瞬間から始まった気持ちが、時間が経っても自分の中に残り続ける。

「恋をしたのは」は、そんな時間を越えて消えない愛を描いたaiko屈指のラブソングなのではないでしょうか。

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