私立恵比寿中学「愛のレンタル」歌詞の意味を考察|なぜ“愛”をレンタルするのか?

2019年に発表されながら、2026年になって再び大きな注目を集めている私立恵比寿中学の「愛のレンタル」。

タイトルだけを見ると、少し不思議な楽曲です。

愛することでも、愛されることでもなく、「愛をレンタルする」

レンタルとは、本来なら自分のものではない何かを一時的に借り、期限が来れば返す行為です。

では、なぜ「愛」という本来は目に見えない感情を、わざわざ“レンタル”という言葉で表現したのでしょうか。

そこから見えてくるのは、単純なラブソングとは少し違う、「愛したい。でも傷つきたくない」という現代的な心の矛盾です。

今回は、私立恵比寿中学「愛のレンタル」の歌詞に込められた意味を考察していきます。

「愛のレンタル」はどんな曲?

「愛のレンタル」は、私立恵比寿中学の6thアルバム『playlist』に収録された楽曲です。

作詞・作曲をマカロニえんぴつのはっとり、編曲をマカロニえんぴつが担当。2019年12月13日に先行配信され、同年12月18日発売の『playlist』に収録されました。

つまり、もともとはマカロニえんぴつが私立恵比寿中学へ提供した楽曲です。

その後、マカロニえんぴつ自身も2020年にアルバム『hope』でセルフカバーしています。

そして2026年、「愛のレンタル」はTikTokを中心に再び注目を集めました。8月4日に配信された『FAMIEN’26 e.p.』には、現在の8人体制で歌い直した「GOLDEN EIGHT ver.」も収録されています。

さらに2026年8月12日には、「THE FIRST TAKE」で私立恵比寿中学とはっとりが初共演。

2019年の提供から約7年を経て、作者と歌い手が同じ場所で「愛のレンタル」を歌うという特別なパフォーマンスが実現しました。

タイトル「愛のレンタル」の意味とは?

この曲を理解するうえで、最大のポイントになるのがタイトルです。

普通なら、

「愛する」

「愛される」

「愛を与える」

という表現になりそうなところを、はっとりは「レンタル」という言葉に置き換えています。

レンタルには、いくつか特徴があります。

  • 自分の所有物ではない
  • 一時的に借りる
  • 期限がある
  • 最後には返す
  • 借りる側と貸す側が存在する

これをそのまま恋愛に置き換えると、「愛のレンタル」が表しているものが見えてきます。

主人公は、無条件に誰かを愛することができません。

「自分が愛した分だけ、相手も返してほしい」。

そんな気持ちをどこかで抱えているように感じられるのです。

つまりこの曲における愛は、プレゼントではありません。

貸したものだから、いつか返してほしい愛。

それこそが「愛のレンタル」なのではないでしょうか。

主人公は「愛したい」のに愛することが怖い

この曲には、一見すると矛盾した感情が繰り返し現れます。

主人公は誰かを愛したい。

しかし、その愛がなくなってしまうことも恐れている。

ここが重要です。

本当に何も感じていない人であれば、愛を失うことを怖がる必要はありません。

失うのが怖いということは、それだけ相手を必要としているということでもあります。

それなのに、主人公は感情にすべてを委ねることができない。

「好きだから愛する」という単純な行動ではなく、

愛した結果、自分だけが傷つくのではないか。

自分ばかりが与えることになるのではないか。

という不安が先に立ってしまいます。

だから「レンタル」という発想が生まれるのでしょう。

完全に渡してしまうのではなく、一度貸してみる。

相手が返してくれることを確認してから、また愛する。

そこには、恋愛における主人公の臆病さが表れています。

「君は僕と踊ればいい」が意味するもの

「愛のレンタル」では、「踊る」というイメージも重要な役割を担っています。

踊るためには、リズムを合わせなければなりません。

二人で踊るなら、どちらか一方だけが好き勝手に動いていては成立しません。

相手の動きを見ながら、自分も動く。

近づいたり、離れたりしながら同じ時間を共有する。

これは、そのまま恋愛にも重なります。

片方だけが愛し続けるのではない。

自分が近づけば相手も近づき、相手が動けば自分も応える。

つまり「踊る」という言葉は、

愛を一方的に与えるのではなく、二人の間で交換すること

を象徴しているのではないでしょうか。

ここでも「レンタル」というタイトルにつながってきます。

この曲の主人公が求めているのは、一方通行の愛ではありません。

自分と同じくらい、相手からも愛してほしい。

だからこそ、二人で「踊る」必要があるのです。

「愛のレンタル」は冷たい歌ではない

ここまで見ると、

「見返りを求めるなんて、本当の愛ではないのでは?」

と感じる人もいるかもしれません。

確かに、完全に無償の愛という考え方とは違います。

しかし、「愛のレンタル」は主人公の打算的な部分を肯定している歌というより、そうならざるを得ない不器用さを描いている歌なのだと思います。

人を好きになれば、誰でも多少は期待します。

自分が大切にしたら、大切にしてほしい。

会いたいと思ったら、相手にも会いたいと思ってほしい。

自分だけが好きなのは苦しい。

恋愛では極めて自然な感情でしょう。

主人公は、その期待をうまく「愛」と呼ぶことができません。

そこで登場するのが「レンタル」という少し突き放した言葉です。

愛を真正面から語るのが恥ずかしい。

傷つくのも怖い。

それでも誰かを愛したい。

そんな複雑な感情を、「レンタル」という日常的で少しユーモラスな言葉に包んでいるのではないでしょうか。

「アイ・ラブ・ユー&ミー」が示すもう一つのテーマ

歌詞を追っていくと、この曲が単に「僕と君」だけを描いた恋愛ソングではないことも見えてきます。

重要なのが、**「アイ・ラブ・ユー&ミー」**という考え方です。

相手を愛するだけではなく、自分自身も愛する。

ここに、曲の核心があるように思います。

主人公が相手からの愛を強く求めてしまうのは、自分自身の中だけでは愛を満たせていないからなのかもしれません。

だから相手に、

「愛を返してほしい」

と期待してしまう。

しかし、自分自身を受け入れることができれば、相手から返ってくる愛だけに依存しなくてもよくなります。

タイトルでは「レンタル」だった愛が、歌詞を進むにつれて少しずつ違うものへ変化していく。

誰かから借りなければ満たされない愛から、自分の中にも愛があることに気づいていく歌。

そう考えると、「愛のレンタル」はかなり深い自己肯定の歌としても読むことができます。

なぜ私立恵比寿中学が歌うと印象が変わるのか

「愛のレンタル」には興味深い特徴があります。

作詞・作曲したはっとり自身も、マカロニえんぴつとしてこの曲を歌っています。

しかし、最初に世に出たのは私立恵比寿中学版です。

はっとりは2026年の「THE FIRST TAKE」に際し、「愛のレンタル」はマカロニえんぴつにとって初めての楽曲提供であり、特に気合を入れて制作した曲だったと振り返っています。また、もともと女性の声で歌ってほしいという思いがあり、私立恵比寿中学によって曲が育てられたことへの感謝も語っています。

ここが非常に面白いところです。

マカロニえんぴつ版では、一人の主人公が抱える不器用な恋愛観として聴こえやすい。

一方、私立恵比寿中学が複数人で歌うと、「愛を貸す人」「受け取る人」という関係が一対一ではなくなります。

メンバー同士。

メンバーとファン。

楽曲を作った人と歌う人。

歌う人と曲を聴く人。

さまざまな方向へ愛が行き来するようになるのです。

アイドルそのものが「愛のレンタル」なのか?

さらに踏み込むと、「愛のレンタル」というタイトルはアイドルという存在とも不思議なほど重なります。

ファンはアイドルへ愛情を送る。

アイドルも歌やライブ、言葉、笑顔によってファンへ何かを返す。

もちろん実際の恋愛関係ではありません。

それでもライブの数時間だけは、歌い手と観客の間に特別な関係が生まれます。

ライブが終われば、その時間も終わる。

しかし、受け取った感情は残っていく。

そう考えると、アイドルとファンの間にも、

一時的に愛を貸し借りする「レンタル」のような関係

が存在すると考えることができます。

だからこの曲は、私立恵比寿中学が歌うことで恋愛ソング以上の意味を持つのではないでしょうか。

2019年の曲がなぜ2026年に再ブレイクした?

「愛のレンタル」は2019年の楽曲です。

しかし2026年、TikTokを中心に再び注目されるようになりました。音楽ナタリーも2026年5月、「TikTokで絶賛バズり中」の楽曲としてライブ映像公開を報じています。

なぜ7年近く前の曲が、今になって支持されているのでしょうか。

理由の一つは、楽曲の持つ軽やかさと切なさのギャップにあると思います。

サウンドだけを聴けば、思わず体を動かしたくなるポップな曲です。

ところが歌われているのは、

愛したいのに怖い。

相手からも愛されたい。

でも自分から完全には踏み込めない。

という非常に繊細な感情です。

短い動画ではキャッチーな部分が耳に残り、そこからフル尺を聴くと「実はこんなに複雑な歌だったのか」と気づく。

TikTok時代と相性がいい構造だと言えるでしょう。

また、恋愛において「重くなりすぎたくない」「傷つきたくない」「でも愛されたい」という距離感は、今の時代にも非常に理解しやすいものです。

2019年の楽曲でありながら、歌われている感情が古びていない。

それも再ブレイクにつながった理由ではないでしょうか。

「GOLDEN EIGHT ver.」で再び現在の曲になった

2026年8月4日には、『FAMIEN’26 e.p.』に「愛のレンタル (Prod. マカロニえんぴつ) – GOLDEN EIGHT ver. -」が収録されました。

これは単なる過去曲の再収録ではありません。

2019年とはメンバー構成も変わった現在の私立恵比寿中学が、改めてこの楽曲を歌っています。

「レンタル」というタイトルなのに、曲そのものは7年間返却されることなく歌い継がれている。

むしろ人から人へ渡るたびに、曲への愛が増えているようにも見えます。

それはこの楽曲にとって、少し出来すぎなくらい美しい物語です。

THE FIRST TAKEで作者と歌い手が出会った意味

そして2026年8月12日。

「THE FIRST TAKE」第695回で、私立恵比寿中学とはっとりが「愛のレンタル」を披露しました。両者にとって同曲での初共演でした。

ここでタイトルの意味が、さらに面白くなります。

もともとこの曲を作ったのは、はっとりです。

そして私立恵比寿中学へ渡しました。

普通なら「提供した曲」と表現するところですが、「愛のレンタル」というタイトルを踏まえると、

曲そのものも、はっとりからエビ中へ渡された“愛”

のように見えてきます。

しかし、はっとり自身はTHE FIRST TAKE出演時、マカロニえんぴつが曲を「借りている」側だという趣旨のやり取りも見せています。

誰の曲なのか。

作った人のものなのか。

歌い続けた人のものなのか。

それとも好きになったリスナーのものなのか。

おそらく答えは一つではありません。

音楽というもの自体が、誰かから誰かへ一時的に渡され、それぞれの人生の中で愛されていくものだからです。

そう考えると、「愛のレンタル」というタイトルは、恋愛だけでなく音楽そのもののあり方まで表しているように思えてきます。

「愛のレンタル」が描いているのは“愛の貸し借り”ではなく“愛の循環”

タイトルだけなら、愛を物のように扱う少し冷たい歌にも見えます。

しかし最後まで考えてみると、むしろ逆なのではないでしょうか。

人は誰かから愛を受け取る。

受け取った愛で、また別の誰かを愛する。

その相手から、再び何かを受け取る。

つまり愛は、誰か一人が所有するものではありません。

人から人へ移動しながら続いていく。

「レンタル」という少し変わった言葉は、そんな愛の循環を表現するために選ばれたのではないでしょうか。

2019年にはっとりから私立恵比寿中学へ渡った「愛のレンタル」。

それをメンバーが歌い、ファンが愛し、マカロニえんぴつもセルフカバーし、2026年に新しい世代のリスナーへ届き、ついにはTHE FIRST TAKEで作者と歌い手が同じ場所に立つ。

楽曲そのものが、まるでタイトルを証明するような歩みを続けています。

まとめ

私立恵比寿中学「愛のレンタル」で描かれているのは、単純な恋愛ではありません。

誰かを愛したい。

でも、自分ばかり傷つくのは怖い。

自分が与えた愛と同じだけ、相手からも返してほしい。

そんな人間の不器用な感情が「レンタル」という言葉に込められているように感じます。

しかし物語をさらに深く読むと、その愛は単純な貸し借りから少しずつ変化していきます。

相手を愛すること。

自分自身を愛すること。

受け取った愛をまた誰かへ渡すこと。

そこにあるのは、「所有する愛」ではなく、人と人との間を循環していく愛です。

そして2019年に生まれた曲が、2026年に再び多くの人へ届いているという事実そのものが、「愛のレンタル」というタイトルを象徴しているようにも思えます。

誰かから借りた愛は、いつか返さなければならないのかもしれない。

けれど返す相手は、愛をくれた本人でなくてもいい。

自分が受け取った愛を、また誰かへ渡していく。

「愛のレンタル」は、そんな人と人とのつながりを軽やかなポップソングに閉じ込めた一曲なのではないでしょうか。

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主なテーマ:邦楽の歌詞考察・楽曲解説

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