「“伝言歌”は手紙(封筒)がモチーフ——タイトルの“「」”の意味」
sumikaの楽曲『「伝言歌」』は、タイトルにある「」が印象的です。この記号はただの装飾ではなく、“封筒”を表現しているという解釈が有力です。手紙には書き手の想いや願いが詰まっており、それを包む封筒はまさに“伝えるための入れ物”。この「」に込められた意図は、曲全体のメッセージ性と見事に重なります。
歌詞の中では、直接言葉にできない想いを「伝言」として残すというテーマが貫かれています。それは、遠く離れてしまった人への想いや、面と向かって伝えられなかった感情。タイトルの「伝言歌」は、“直接伝えられなかった気持ちを歌にして届ける”というsumikaらしい優しいメッセージの象徴とも言えます。
両想いなのに素直に言えない——主人公の“不器用な片思い”の物語
この曲では、明らかに両想いであるにもかかわらず、気持ちを伝えられないまま時が流れてしまう高校生たちの姿が描かれています。特に印象的なのは「本当は君が好きだった」といった回想的な言葉で、主人公が過去の想いを振り返る様子。
歌詞には、卒業式の前夜や制服の香りなど、青春の儚さとノスタルジーが溢れています。それはまるで、自分自身の“あの頃”を思い出させるかのよう。恋をしていた時間はかけがえのないものだったと気付くと同時に、もっと早く伝えていればよかったという悔しさもにじみ出ます。
この“不器用な片思い”というモチーフは、多くのリスナーの共感を呼び起こす普遍的なテーマです。
制作者エピソード——片岡健太の“18歳の思い出”が原点に
『伝言歌』には実は、Vo.片岡健太の18歳の頃の実体験に基づくエピソードがあります。高校時代の親友カップルが卒業を迎えるタイミングで、片岡が即興で作った楽曲がこの『伝言歌』の原型とされています。
彼はその時、自分の部屋でギターを鳴らしながら、友人たちの青春を歌に残したのだとか。その楽曲は、やがてプロのバンドであるsumikaによって丁寧に仕上げられ、多くの人の心を打つ“青春アンセム”として生まれ変わりました。
このように、実際の出来事に根ざした曲だからこそ、どこかリアルで、温度のある歌詞が胸に響くのかもしれません。
ライブで生まれる“共鳴”と“伝える勇気”——大合唱の持つ意味
sumikaのライブでは、アンコールの最後に『伝言歌』が披露されることが多く、観客全員がこの曲を合唱する場面が恒例となっています。特に「届けたい言葉がある」というサビ部分では、会場全体が一体となり、言葉にできない想いを代弁するかのような空気に包まれます。
この共鳴は、聴く者一人ひとりに“気持ちを伝える勇気”を与えてくれます。言葉にするのは難しいけれど、音楽なら届けられる——そんな“代弁者”としての歌の力が、『伝言歌』には込められています。
sumikaの音楽の魅力は、単なるエンタメを超えて、聴く人の心に寄り添う“体験”であること。その象徴がこの『伝言歌』とも言えるでしょう。
日常の“ありふれた瞬間”をキラメキに変える——復活期の象徴としての楽曲
sumikaは一時活動を休止していましたが、その復活以降、日常の何気ない風景や感情を“宝物”として描く楽曲が増えました。『伝言歌』もそのひとつです。
通学路、制服の匂い、卒業式、寄せ書き——誰もが一度は経験したことのある“普通の瞬間”が、この曲の中ではきらきらと輝いて描かれます。それはsumikaが得意とする、“日常を特別にする”魔法のような表現です。
復活後の彼らが届ける『伝言歌』は、過去を懐かしみ、今を大切にするというメッセージを伴って、多くの人に前向きな勇気を与えてくれる存在となっています。
📝まとめ
sumikaの『「伝言歌」』は、伝えきれなかった想いや青春の残り香を、美しいメロディとともに届けてくれる一曲です。その背景には、片岡健太の実体験や、ライブでの共鳴体験があり、多くのリスナーの共感を呼ぶ普遍的なテーマが息づいています。手紙のように大切に包まれた“伝言”が、今を生きる私たちにそっと語りかけてくれる——そんな温もりある楽曲です。