「メリバ=Merry Bad End」のタイトルに込められた意味とは
「メリバ」とは、「Merry Bad End」の略語で、明るく楽しいはずだった物語が最後に悲しい結末を迎えることを意味するインターネットスラングとして知られています。この言葉が示すように、PEOPLE1の「メリバ」は、明るくポップなメロディと裏腹に、歌詞には深い悲しみや葛藤が織り込まれており、そのギャップが多くのリスナーの心を捉えています。
タイトルからして、「幸せになれそうでなれない」「うまくいきそうでいかない」という絶妙な距離感が感じられます。それはまさに、誰もが経験しうる“現実の恋愛や人生”そのもの。PEOPLE1は、あえてこのテーマを明るい曲調にのせて歌うことで、心に残るインパクトを与えているのです。
ドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』とのリンク構造
「メリバ」は、2024年に放送されたドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。このドラマは、理不尽な日常に怒りと悲しみを抱えながらも生きる人々の姿を描いた作品で、復讐と赦し、葛藤と成長をテーマにしています。
歌詞の中で語られる矛盾した感情や、綺麗事だけでは語れない人間模様は、まさにドラマの主人公・碧井の心情と重なります。特に「殴ってやりたいけど、それでも忘れられない」「痛みを伴っても、心から誰かを想ってしまう」といった複雑な心理をPEOPLE1が見事に音楽化しています。
そのため、「メリバ」は単なる主題歌以上に、ドラマの物語世界を拡張するような役割を果たしているのです。
サビ「痛いくらいにキスをしよう」に潜む“愛と痛みの交差点”
「痛いくらいにキスをしよう」というサビのフレーズは、表面的にはロマンチックに聞こえるかもしれませんが、その裏には“痛み”を伴った愛情の形が見え隠れします。多くのファンや評論家は、ここに“愛することの代償”や“許されざる感情への覚悟”を読み取っています。
本来、キスは優しく甘いものであるはずですが、あえて“痛い”という形容詞をつけることで、「心の傷」「抑えられない想い」「矛盾した関係性」が強調されているのです。これは、誰かを強く想いながらも、その愛が自身を傷つけるものであるというパラドックスを表現しています。
PEOPLE1は、こうした複雑で繊細な感情を、決して説教臭くならずに、むしろ聴く者に寄り添う形で描いています。
「正しさで傷は治らない」が投げかける社会的メッセージ
「正しさで傷は治らない」という一節もまた、「メリバ」の歌詞の中で非常に重要な役割を担っています。これは、いかに正しい選択をしても、人は感情によって傷つき、痛みを抱えるものだというリアルな視点を表しています。
特に現代社会では、「正しさ」が求められる場面が多くなっています。しかし、その正しさは時として人を追い詰め、感情を無視してしまうことがあります。この歌詞は、そうした社会的プレッシャーに対する警鐘であり、「間違っていても感情は大切にすべきだ」というメッセージを感じ取ることができます。
リスナーはこのフレーズに、自身の過去や今の悩みを重ね、救われた気持ちになるのではないでしょうか。
“エル・ドラード”は理想郷? 未来への希望と成長のビジョン
「エル・ドラード」とは、伝説上の黄金郷を意味する言葉です。歌詞に出てくる“僕らだけのエル・ドラード”という表現は、現実では手に入らない理想の世界や、誰にも侵されない“ふたりだけの場所”を象徴しています。
このパートでは、それまでの痛みや矛盾を乗り越えた先にある希望や再生のビジョンが提示されており、楽曲全体に前向きな光を差し込む重要な部分です。「叶わなかったからこそ、心に残るものがある」「それでも生きていく」という決意が、この言葉には込められているように感じられます。
PEOPLE1は、苦しみと希望の両方を描くことで、リスナーに対して「共に歩もう」というメッセージを届けているのです。
✅ まとめ
「メリバ」は、ただの“悲恋ソング”ではなく、「痛みを抱えたまま、それでも前を向いて生きる」人々のための応援歌です。ドラマとのシンクロや、愛と正しさの相反するテーマ、理想への願望といった要素を含み、聴く人の感情に深く寄り添う作品に仕上がっています。PEOPLE1の音楽性と詞の世界観が存分に発揮された名曲です。