【(I Can’t Get No) Satisfaction/The Rolling Stones】歌詞に込められた意味を考察する。

半世紀以上に渡り、一度も解散することなく音楽シーンの最前線を「転がり続けてきた」ローリング・ストーンズ。
先日、デビュー以来バンドの屋台骨を支えてきたドラムのチャーリー・ワッツが惜しまれながらこの世を去り、生きる伝説の今後の動向に世界中の注目が集まっている。

今回は、そんなストーンズの初期の代表曲である「(I Can’t Get No) Satisfaction」(サティスファクション)の歌詞を詳しく見ていきたい。

タイトル以上でも以下でもない直球のメッセージ

この楽曲で最も印象的なのは何と言っても出だしのリフであり、それに続く以下の歌詞だろう。

I can’t get no satisfaction

I can’t get no satisfaction

‘Cause I try and I try and I try and I try

I can’t get no, I can’t get no

~日本語訳~

俺はまったく満足できない

ほんの少しも満足できない

何度も、何度も、何度もやっても

まったく満足できやしない

この恐ろしいほど単純でストレートな歌詞を書いたのは、ギターのキースだ。

「I can’t get no satisfaction」というフレーズは「not」と「no」という否定を表す単語が二つ重なっており、文法上は厳密に言えば間違いである。
正しくは、「I can’t get any satisfaction」、もしくは「I can get no satisfaction」とするべきであるが、もちろんキースは本当に間違ったわけではない。
このような言い回しはアメリカの黒人英語独特のもので「Ebonics」と呼ばれ、否定を二つ重ねることでより強い否定を表している。

このフレーズについてミックは、チャック・ベリーの楽曲「Thirty Days」の一節「If I don’t get no satisfaction from the judge」から引用したのではないかと話している。
ストーンズは当初自分たちのことを「R&Bバンド」と称していたように、R&Bやブルースといったアメリカ黒人音楽から強い影響を受けている。
「I can’t get no satisfaction」というわずか5単語の曲タイトルは、彼らの音楽的ルーツを明確に表していると言える。

何に満足できないと歌っているのか

この曲について、ミックは「1960年代の時代精神であった『疎外感』を捉えている」と語っている。
ミックの言う「疎外感」とは、どのようなものだったのか。
キースの歌詞を引き継ぐかたちでミックが書き上げたパートを見てみよう。

When I’m drivin’ in my car

And that man comes on the radio

He’s tellin’ me more and more

About some useless information

Supposed to fire my imagination

I can’t get no, oh no, no, no

Hey hey hey, that’s what I say

~日本語訳~

車を走らせていると

ラジオから男の声が聞こえる

延々と話しているのは

何の役にも立たない情報ばかり

想像力を掻き立てるためらしいが

まったくだめだ

俺が言いたいのはそういうことだ

When I’m watchin’ my TV

And that man comes on to tell me

How white my shirts can be

But he can’t be a man ‘cause he doesn’t smoke

The same cigarettes as me

~日本語訳~

テレビを見れば

また男が現れてこんなことを言う

「シャツがこんなに真っ白になります」

だが、そいつは俺と同じ煙草を吸っちゃいないんだから

男とは言えないぜ

ラジオやテレビに登場する「男」。
その男が延々と話し続ける無益な情報や誇大広告に苛立っている様子が描かれている。
ラジオやテレビなどのメディアは、個人や自己に対しての「社会」の象徴であり、メディアに苛立つ様子は「社会への不満」を表現していると言えるだろう。

ちなみに、「シャツがこんなに真っ白に」という広告の謳い文句に対する「あいつは俺と同じ煙草を吸っていない」というフレーズは、「俺と同じ煙草を吸っていたら、ヤニでそんなに白くはならない」という意味と「俺と同じ煙草を吸っていないあいつは、男とは言えない」という二つの意味が込められていると思われる。

さらに、ミックの作詞パートは次のように続く。

When I’m ridin’ round the world

And I’m doin’ this and I’m signing that

And I’m tryin’ to make some girl

Who tells me baby better come back later next week

‘Cause you see I’m on a losing streak

~日本語訳~

世界中を駆け回って

やるべきことをやって、契約したりサインしたり

彼女でも作ろうかと思えば

「来週にでも出直してきて」と言われる始末

見てのとおり、負け続きときている

このパートは、前の2つに比べて、よりストーンズ自身の状況を反映したパーソナルな内容になっている。

たとえば、歌詞にある「sign」は「ファンのためにサインをする」、「サインをして契約する」というどちらの意味にも取ることができる。
おそらくは意図的にダブルミーニングにし、当時のバンドの多忙さを表しているのであろう。
それと同時に、どこか自分たちの意思ではなく「やれと言われたことをきちんとやっている」というニュアンスが感じられる。
それでいて、空いた時間に女の子と遊ぼうとしても振られる有様で「負け続きだ」と嘆いている。

初期のストーンズの楽曲はカバーが圧倒的に多く、オリジナル曲が少ないことがバンドとして成功するうえで大きな課題だった。
彼らより一年早くデビューしたビートルズは、前年の64年には「I Want To Hold Your Hand」ですでにアメリカでも爆発的な人気を博していた。
「満足できない」というメッセージは、同胞のライバルに対する闘争心の表れでもあったのではないだろうか。

そんなストーンズも、「(I Can’t Get No) Satisfaction」がアメリカのシングルチャートで4週連続一位、この楽曲を含むアルバムがアメリカにおける最初のNo.1アルバムとなり、晴れて世界的スターの仲間入りを果たす。
ミックはのちに、「この曲が俺たちを一介のロック・バンドから巨大な怪物バンドに変えた」と「(I Can’t Get No) Satisfaction」がバンドにとって大きな意味を持つ楽曲であることを語っている。

いかがだっただろうか。

ロック音楽は、草創期から現在に至るまで、常に社会や政治に対する若者の声を代弁する手段として発展してきた歴史があり、「(I Can’t Get No) Satisfaction」についても例外ではない。

この楽曲が発売された1965年は、社会に対する不満や疎外感を抱いた若者たちが新しい表現方法で独自の文化を発信した「ヒッピー」の運動がまさに始まろうとしていた時期だった。
「満足できない」というストレートなメッセージは、当時の若者たちの気持ちを実に的確にとらえていたと言えるだろう。

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