【Nirvana】カート・コバーンの名言を紹介。

早逝したロックアイコン、カート・コバーンの名言

1990年代前半に世界を席巻したグランジムーヴメントの旗手として数々の名曲を遺したニルヴァーナ。

メインソングライターでありボーカルを務めたカート・コバーンはそのルックスも相まってメディアの注目を浴び、数々の言動は死後から現在に至るまで彼の人間性を表す言葉として語り継がれている。

1987年の結成から1994年のカートの自殺まで駆け抜けるように活動し伝説的な存在となったニルヴァーナ。
カートはジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョプリン、ドアーズのジム・モリソンといったレジェンドと同様27歳で死去し、カリスマとして誰も追いつけない場所へ行ってしまった。
その影響があるかは不明だが、グランジシーンで活動したバンドのボーカルは早逝する場合が多く、今日までにアリス・イン・チェインズのレイン・ステイリー、ストーン・テンプル・パイロッツのスコット・ウェイランド、サウンドガーデンのクリス・コーネル、マザー・ラヴ・ボーンのアンドリュー・ウッドといった面々が非業の死を遂げている。

今回はグランジというシーンを生み出し、そして葬ったカート・コバーンの名言を幾つかご紹介したい。

ニール・ヤングの歌詞を引用した遺言

It’s better to burn out than fade away.

—霞んで霞んで徐々に消えていくくらいなら燃え尽きたい。—

これはカートの遺書に遺されていた一節で、ニール・ヤング&クレイジー・ホースの楽曲「Hey Hey, My My」から引用された歌詞でもある。
この歌は本来セックス・ピストルズを脱退するジョニー・ロットンに向けて歌われた曲と言われている。

メガヒットアルバム「ネヴァーマインド」で一躍時代の寵児となったカートは元々アンダーグラウンド志向だった事もあり、スター扱いされる事に違和感を抱えていた。
薬物に溺れるようになり精神的に不安定になったカートは1994年に自殺。
カートの死はすなわちグランジムーヴメントの終焉を意味していた。

同じく若くして自殺してしまったミュージシャンにエリオット・スミスがいる。
彼は映画「グッド・ウィル・ハンティング」に提供した「Miss Misery」でアカデミー歌曲賞にノミネート。
同曲をパフォーマンスした授賞式の一夜をこう振り返っている。

「すごくシュールな体験だった。曲を2分以内に短縮して僕の歌を聞きに来たわけじゃない人々の前で演奏したんだ。あの世界に住みたいとは思わないけど、一日だけなら月の上を歩くのも悪くなかったよ」

カートにとっても、ゴシップと虚飾に塗れたメジャーシーンでの活動は月の上を歩くようなものだったのだろうか。
そしてカートは死を選ぶ。
酸素のない月で窒息するかのように。

ニール・ヤングはこの出来事に「ひどく打ちのめされた」と語っており、
「カートに連絡しようと思っているところに起きた出来事だった。『音楽なんて気が向いた時にやればいい』そうカートに伝えたかったんだ」
と発言している。

数々の発言が取り上げられるカートだが、彼の生き様を表す言葉として最も知名度のある、そして最も悲しい一節ではないだろうか。

想像する事が恐怖に繋がる

No one is afraid of heights, they’re afraid of falling down. No one is afraid of saying I love you, they’re afraid of the answer.

—誰も高さなんて怖くないんだ、落ちることが怖いんだよ。誰も「愛してる」って言う事を怖がったりはしない、それに対する返事が怖いんだよ。—

恐怖心はそれが起こる時ではなく、それが起こると想像した時に生まれる。
失敗した時ではなく、失敗すると想像した時に人間は恐怖を覚える。
カートのこの言葉も同様で、「愛している」と伝えた時に「愛していない」と返されるのを想像するのが怖いという心理を表している。

LAメタルやガンズ・アンド・ローゼスのような骨太パーティメタルに対して一貫してアンチの姿勢を貫いていたカートは内省という要素でグランジを牽引したが、その心理をよく表現した言葉だ。

拭うことの出来ない孤独と疎外感

They laugh at me because I’m different; I laugh at them because they’re all the same.

—みんなが僕のことを笑った。僕はみんなと違うから。僕はみんなのことを笑った、みんな同じだったから。—

学校とは「友達じゃない連中ともうまくやっていくための訓練の場」とは甲本ヒロトの言葉だが、カートは学生の頃孤独と疎外感に取り憑かれていた。
孤独と疎外感に対し逃避するための一つの方法は「自分は他の人とは違う」と認めることである。
ニルヴァーナに影響を受けたレディオヘッドのトム・ヨークは「Creep」で劣等感に苛まれた一人の少年を歌っている。
そして、カートの言葉も「Creep」も全世界に存在する悩める青少年達の心の支えとなり、以降の音楽シーンにも多大な影響を与えた。

自身がマイノリティであるが故の反差別姿勢

I have a request for our fans. If any of you in any way hate homosexuals, people of different color, or women, please do this one favor for us — leave us alone! Don’t come to our shows and don’t buy our records.

—俺たちのファンに伝えたいことがあるんだ。もし君がホモセクシャルの人々、肌の色が異なる人々、そして女性に対して嫌悪感を抱いているなら、俺たちのショーには来ないで欲しい。レコードも買わないでくれ。—

カートはパンク・ロックに影響を受けている。
政治思想としても保守ではなく革新であろう。
自身がマイノリティとして疎外感を感じていた事もあり、同性愛者、有色人種、女性といった弱者に対して保護の姿勢をとっている。
差別主義者に対してライヴに来るな、レコードも買うなという批判をコンピレーション・アルバム「インセスティサイド」のライナーノーツに記載している。
他にも「自分以外の誰かになりたい、なんてもったいないよ」という発言もあり、変人と蔑まれようと性的マイノリティや有色人種であっても自分らしくいればいい、という表向きには皮肉で内向的なカートの優しさと強さが垣間見える一節だ。

音楽に対しての姿勢

Punk is musical freedom. It’s saying, doing and playing what you want. In Webster’s terms, ‘nirvana’ means freedom from pain, suffering and the external world, and that’s pretty close to my definition of Punk Rock.

—パンクは自由な音楽だ。言いたいことを言って、やりたいことをやって、弾きたいものを弾くってことだ。ウェブスター辞書を引くと、「ニルヴァーナ(涅槃)」とは苦悩・苦痛・外界からの解放とある。僕が思うパンク・ロックに近いんだ。—

アンチ・ヘアーメタル(LAメタルに代表される派手なヘヴィメタル)としてパンク・ロックという姿勢を一貫して貫いたカート。
それではパンク・ロック以外は聴いていなかったのかと言うとそうでもなく、曲名に引用したエアロスミスやレッド・ツェッペリン、ダークなヘヴィメタルの始祖であるブラック・サバス、少年の頃好きだったというKISSや幅広い音楽性のクイーンなど多岐にわたる音楽的嗜好を持っていた。

また日本のバンドでも少年ナイフとボアダムズという海外で評価の高いバンドに先鞭をつけ、ツアーを一緒に回るなど気に入っていたようだ。

デヴィッド・ボウイの「世界を売った男」をカヴァーするなど、パンク・ロック以外からの影響も大きいカートは他にもテクノポップバンド、DEVOやオランダのロックバンド、ショッキング・ブルーの楽曲もカヴァーしており、様々なジャンルからのカヴァー曲はニルヴァーナのアレンジ能力の高さが伺える。


幾つかの発言を紹介したが、これらの発言を真に理解するにはニルヴァーナの楽曲を聴かないことには始まらない。

台風のように世界を席巻し、そしてあっという間に去っていったカート・コバーン並びにグランジというムーヴメントとは何だったのか。

今日でも当時のままで活動を続けているのはニルヴァーナのライバルとも呼ばれたパール・ジャムとマッドハニーだけで、アリス・イン・チェインズも、ストーン・テンプル・パイロッツも、スマッシング・パンプキンズも活動は続けているもののメンバーの変遷などで当時の形ではない。
その他にも数多くのグランジバンドがデビューしたが大多数は既に活動を停止している。

レディオヘッドやブラーといったブリット・ポップ以降やKORN、リンプ・ビズキットといったニューメタルにも影響を与えたニルヴァーナ。

もしまだニルヴァーナの作品を聴いたことがないというのなら、今回の発言紹介で少しでもニルヴァーナというバンドに興味を持っていただければと切に願う。