【家族の風景/ハナレグミ】歌詞の意味を考察、解釈する。

ハナレグミのファーストシングル『家族の風景』は、温かく胸に響く美しい歌声で多くの人々に愛されています。
この曲の歌詞の意味を探求してみましょう。

愛しい距離

『家族の風景』は、シンプルで淡々とした歌詞が特徴的でありながら、一つ一つの言葉には深い意味が込められています。

この曲の歌詞の意味を深く考察してみることで、その背後にあるメッセージや感情に迫ることができるかもしれません。


キッチンにはハイライトとウイスキーグラス
どこにでもあるような 家族の風景
7時には帰っておいでとフライパンマザー
どこにでもあるような 家族の風景

キッチンでタバコの「ハイライト」とウィスキーを手にしているお母さんの姿からは、彼女の素敵さがうかがえます。

このような風景は全ての家庭で見られるわけではありませんが、永積崇にとっては日常的でありながらも大切な「家族の風景」なのでしょう。

「フライパンマザー」という表現は、フライパンを手にしたお母さんを指す直接的な意味でとても適切です。

特に、「7時には帰っておいで」というセリフは温かさがにじみ出ており、きっとおいしい料理で帰りを待っているのでしょう。

「グラス」「マザー」という言葉のセンスはユニークで、おだやかな中にファンキーなリズム感を感じさせます。


友達のようでいて 他人のように遠い
愛しい距離が ここにはいつもあるよ

幼少期から一緒に過ごすことで、母親とは「友達のような存在」と感じることがあります。
母親は、非常に身近な存在であり、距離が近いことが特徴的です。

しかし、母親に対して何でも知っていると感じていても、実際には知らないこともあります。
そのため、親しみがある一方で「他人のように」遠く感じることもあるでしょう。

距離があまりに近すぎると、相手を気遣って本当に伝えたいことを言えない場合もあります。

例えば、悲しい話をして相手を悲しませたくないという気持ちから、つらいけれど話せないことがあるかもしれません。

このような友達のような親しみやすさと他人のような遠さという絶妙な距離感を、「愛しい距離」と表現しています。


何を見つめてきて 何と別れたんだろう
語ることもなく そっと笑うんだよ

自分が生まれる前の母親には直接会うことは叶いません。
しかし、彼女は多くのことを「見つめて」きたことでしょう。

喜びや楽しみだけでなく、悲しみや苦しみも経験したことでしょう。
そして、時には辛い別れも経験したかもしれません。

そうした経験について母親は言葉で語ることはなく、「そっと笑う」だけです。

彼女は寡黙でありながら、とても魅力的な存在です。
そのミステリアスな雰囲気が、さらに彼女を特別に感じさせます。

言葉ではなく、温かさや愛情を感じることができる母親。
彼女との「愛しい距離」を大切に思っていることが、文章から伝わってきます。

笹川美和のカバーも必聴

映画『blank13』という、斎藤工が監督を務めた作品で、笹川美和が主題歌『家族の風景』を歌っています。

この映画は実話をもとにしており、13年前に失踪した父親が見つかったことをきっかけに物語が始まります。

『家族の風景』が主題歌として使われたのは興味深く、笹川美和の芯のある歌声が聴く人の心をつかんでいます。

彼女のピアノの弾き語りによるカバーは、ハナレグミとは異なる魅力があり、個性的な歌声で人々を魅了しています。

このカバーは彼女の2018年1月にリリースされたアルバム『新しい世界』に収録されていますので、ぜひ聴いてみてください。