注目のバンド、おいしくるメロンパンの楽曲「色水」には、深い物語が込められていると言われています。
歌詞の意味を解析し、曲の魅力に迫ってみましょう。
色水とは何を意味しているのか
「色水」と聞いて、皆さんはどのようなイメージが湧きますか?
おそらく、絵の具で着色された水や、花から抽出した色を帯びた水など、懐かしい思い出や美しい風景が想起されるかもしれません。
美しさに満ちた色合いを持つ一方で、実際には口にすることができない「色水」。
しかし、この楽曲において「色水」とは、具体的には絵の具の水溶液や花から抽出した液体の色とは異なるものを指しています。
歌詞の解釈を進めていくと、その「色水」が何を指し示しているのか、そして何故そう呼ばれているのかが明らかになるでしょう。
そこでまずは歌詞の意味に迫ってみましょう。
切ない夏の思い出
それでは、おいしくるメロンパンの楽曲「色水」の歌詞を深く掘り下げ、その背後にある意味を解釈してみましょう。
曲のタイトルの象徴性を考えながら、切ない恋の物語が歌詞に描かれている世界をご堪能ください。
色水になってく 甘い甘いそれは
君と僕の手の温度で 思い出を彩ってく
寂しくはないけど ちょっと切なくて
流し込んだ空の味
「色水になってく 甘い甘いそれは」という歌い出しのフレーズが、印象深い一節ですね。
「君と僕の手の温度で」という歌詞から、何かが溶け出して「色水」となることが伺えます。
また、色が「流し込んだ空の味」と表現されている部分から、空のような水色を思わせる「色水」のイメージが広がります。
この歌では、知識のない少年と少女の青春時代が、空色の思い出で染め上げられた「色水」として描かれています。
この「色水」は、「僕」にとっては寂しさは感じられないけれども、ちょっとした切なさを抱かせるものなのでしょう。
これまでに色や味、象徴するものなどのイメージが浮かんできましたが、まだ全体像は明確ではありませんね。
歌詞の続きも読み進めながら、その深層を見てみましょう。
くるくると回る風車を 君は弄んで
下駄のかかと鳴らしながら
「またね」って笑ったんだ夏の終わりは通り雨の香り
「喉が渇いたよ」
「くるくると回る風車」と「下駄のかかと鳴らしながら」という歌詞から、以前登場した「君」とは「僕」の恋人であることが理解できますね。
歌詞は、夏祭りのデートの帰り道を描写しており、何となく甘い「色水」は夏祭りの象徴であるかき氷が溶けた液体かもしれないと感じさせます。
しかし、「風車」を弄ぶ「君」の姿と、「「またね」と笑った」という描写が特に印象的で、前述の「切なくて」という言葉から、少し嫌な予感が漂いますね。
これは、幸せの中にも不安を感じる心情を表しているのかもしれません。
歌詞が「夏の終わり」という言葉で始まることから、夏祭りデートの後、夏が終わりを告げる時、二人の恋も終わってしまったことが分かります。
「君」は「僕」の渇きを癒すことなく去ってしまい、「香り」だけを残して「通り雨」のように消えていきます。
一夏の恋の名残りだけが、「僕」の心に残されることになったのです。
実際の「渇き」は心の渇きであり、それを「喉が渇いた」という言葉で表現してごまかすしかなかったことも感じられます。
夏祭りの帰り道、「君」が風車を持ちながら笑顔を見せた光景が、未だに脳裏に焼き付いて離れないという描写は、その恋が終わってしまったことを象徴的に示しています。
言葉の少なさが、1つひとつのシーンを際立たせ、情感を深く伝えている素晴らしい歌詞ですね。
生ぬるい風が吹いて
夏は僕を笑った
茜色に溶けだした
空は僕を見ていた飛行機雲が淡く線を引く
いつか忘れてしまうのかな
夏がまだ厳しい終わりに、恋は既に幕を閉じてしまったのに、「ぬるい風が吹いて」、「夏は」まだ去っていないかのように、「僕を笑った」ような気がしてしまった瞬間がありました。
空を仰ぐと、恋人との思い出を象徴していた空色ではなく、様々な色が交じり合った「茜色」が広がっていました。
その色彩が「溶け出した」ように見えたのは、実は「僕」が空を仰ぎながら涙を流していたからかもしれません。
空には「飛行機雲が薄く線」を描いており、失恋した「僕」にとっては、その線が「僕」と「君」の間に引かれたように見え、二人の絆が断ち切られてしまったように映りました。
今、心は深い悲しみに包まれているのに、「いつかは忘れるのだろうか」という疑問が「僕」の中で渦巻いています。
その複雑な心情が切なく心に残りますね。
写真に写る君の手の中で
風車は回り続けるのに
君が僕にくれたブルーハワイは
今、溶け始めたんだ。
「写真に写る君」を見ると、「手の中で」風車が回り続けているかのように感じられ、まるで「君」と一緒だった日々と同じように、時間が「僕」の内側で流れているのに、「君」との恋はもはや過去の思い出へと変わりつつあったのです。
その象徴となるのが、「君がくれたブルーハワイは」が「溶け始めた」という歌詞です。
「色水」は、「君」から贈られた「ブルーハワイ」が溶けたものであることがわかります。
かき氷は、「僕」と「君」の体温でゆっくりと溶けていくように、二人の愛もまた溶けて思い出となってしまったのです。
「ブルーハワイ」のかき氷が溶ける様子は、美味しそうでありながら飲むことができない、絵の具などに色が染まった水に例えられています。
これは、幸せな思い出であったとしても、もう触れることができず、戻ることもできない恋の象徴として表現されています。
「色水」という言葉が使われた背後には、戻ることのない過去の恋を、溶けたかき氷のように美しくも切なく描いていることが窺えます。
この歌詞から、おいしくるメロンパンというバンドの才能が光っていることが感じられますね。
色水になってく 甘い甘いそれは
君と僕の手の温度で 思い出を彩ってく
寂しくはないけど ちょっと切なくて
流し込んだ空の味
ここまでの解釈から明らかになりましたが、サビの歌詞は、「君」との愛を、夏祭りの時に一緒に楽しんだ「ブルーハワイ」のかき氷の思い出に結びつけ、振り返っているということですね。
この視点から考えると、「寂しくはないけど ちょっと切なくて」という歌詞も、恋が終わり時間が経ってしまった後でも、もはや寂しさは感じないけれど、夏が去ってしまう瞬間のような切なさを感じるという意味となります。
「僕」は当初、いつかは忘れてしまうのだろうかと思っていましたが、実際には「君」との夏の恋は、ずっと「ブルーハワイ」の空色とともに胸に残っていくことになったのですね。
このように、歌詞が夏の風景と愛の思い出を巧みに結びつけて描かれており、その情感が心に響く魅力が感じられます。