① 「夢」と「過去」の間で揺れる精神状態
「イン モーション(In Motion)」の歌詞には、hide特有の詩的かつ情緒的なフレーズが散りばめられています。その中でも「駆け巡る季節」や「散らばる過去」といった語句は、過ぎ去った時間に対する未練や、過去の自分との葛藤を表現していると読み取れます。
多くのファンブログでは、この楽曲が「自分の内面と向き合う曲」であると解釈されており、「夢」や「過去」が精神の中で交錯し、そこから抜け出そうとする姿が歌詞全体からにじみ出ています。hideは単に前向きなだけでなく、過去を引きずりながらも、それでも進もうとする「人間らしさ」を描いています。
② 「Emotion In Motion」が示す“動き続ける心”
サビ部分の「Emotion In Motion」というフレーズは、直訳すれば「動きの中にある感情」となります。hideが繰り返し表現する「ちぎって、投げつけて、転がる」という動作的な語彙からは、立ち止まることなく進み続ける精神のエネルギーが読み取れます。
この楽曲では、感情の“静”よりも“動”が強調されており、どんなに傷ついても、心は「止まらない」ことの美学を歌っています。まるで自分自身を奮い立たせるような力強いメッセージが、hideらしいロックスピリットとして伝わってきます。
③ 「自由」と「飛べない」選択肢の美学
「イン モーション」は、hideの代表曲「ever free」としばしば対比されます。「ever free」が「自由に飛ぶこと」をテーマにしているのに対し、「イン モーション」では“飛ばない自由”、つまり「地に足をつけて生きる自由」が描かれていると考察されています。
サビで「飛べないことを選んだ」と語る部分は、敢えて夢見がちな理想を追わず、現実と向き合うことの潔さや覚悟を象徴しています。これは、90年代という時代の不安定さや、hide自身の内面的な迷いも映し出しており、多くのファンにとって共感を呼ぶポイントとなっています。
④ 「死と再生」の寓意的世界観
この楽曲は、hideの死後に残されたデモ音源をもとに制作されたものであり、その背景から「死と再生」というテーマで語られることが多いです。特に、「繰り返す日々に殺され」「夢がドアを叩く」といった表現には、精神的な死から再生へと向かう過程が込められていると解釈されます。
hideが生前に抱えていた苦悩や葛藤、そして音楽を通じて再び命を吹き込まれた「イン モーション」は、まさに“魂の復活”といえる作品です。このような深い寓意が込められていることが、楽曲の神秘性と重厚さを高めています。
⑤ 制作背景から読み解く“未完成の完成”
「イン モーション」は、hideの生前に録音されたデモテープをもとに、PATAやI.N.A.らX JAPANのメンバーが補完し完成させた楽曲です。そのため、hideが直接仕上げた作品ではないという意味で“未完成”ともいえます。
しかし、この「未完成であること」こそが逆にhideの思想を体現していると、多くのファンや音楽評論家が語っています。途中で終わった命、途中で止まった楽曲が、仲間の手で完成を迎える――そのプロセスは、まさに「継承」と「再生」の物語です。hideの意志が生き続けていることを実感させるエピソードといえるでしょう。
総括
「イン モーション」は、hideが残した“未完のメッセージ”ともいえる楽曲です。夢と現実のはざまで葛藤しながらも、進み続ける心の力を描き出しています。その一方で、「飛ばない自由」や「再生」の象徴としても語られるなど、多層的なテーマを内包した作品です。
まとめ
「イン モーション」は、hideが遺した“動き続ける感情”を象徴する作品であり、その歌詞は「過去と夢」「自由と選択」「死と再生」など、人生の本質を鋭く、そして詩的に描いています。未完でありながら完結するこの楽曲には、hideの魂が確かに息づいています。