【MISERY/hide】歌詞の意味を考察、解釈する。

X JAPANのギタリストとして著名な活動をしていたhide(ヒデ)は、突然この世を去ったアーティストの一人です。
今回は彼のソロ作品である『MISERY(ミザリー)』に焦点を当ててみましょう。
この素晴らしい曲が誕生した背後には、特定の一人の少女の影響が深く関わっていました……。

運命的な出会い

『MISERY』の誕生には、hideとある少女の運命的な出会いが影響を与えました。
この少女の名前は貴志真由子さんで、彼女はガングリオシドーシス、一般的にはライソゾーム病として知られる先天性代謝異常の病気に苦しんでいました。
真由子さんは世界で20数例しか報告されていない非常に希少な疾患を抱えており、hideの熱烈なファンでもありました。
彼女は難病を抱える子供たちのための団体を設立し、その団体の活動がhideとの運命的な出会いをもたらすことになりました。

リスナーたちに勇気を与える手段

hideは真由子さんとの出会いを通じて、骨髄提供に尽力する決意をしました。
hideは真由子さんを「難病の少女」という視点ではなく、一人の熱心なファンとして見ていました。
彼は真由子さんと過ごす時間を通じて、自然体で接していたと言われています。

hideはX JAPANのギタリストとして非常に成功し、社会的な地位を築きました。
成功した人々の中には、自己主張を強調し、傲慢になる人もいますが、hideはそうではありませんでした。
彼はギタリストとして卓越した才能を持っていただけでなく、一人の人間としても優れた質を持っていたのです。

hideは真由子さんの生き様から多くの感銘を受け、自分が何をできるかという問いに直面したことでしょう。
hideにとって音楽は大きな存在であり、真由子さんをはじめとするリスナーたちに勇気を与える手段として、『MISERY』という曲が生み出されました。

『MISERY』の歌詞について解説していきたいと思います。

主人公の葛藤

ハレルヤ ラ ミゼラブル
Do you wanna show me how low & low?
ハレルヤ ラ ミゼラブル
Do you wanna show me how low & low?
SAY ハレルヤ

「ハレルヤ」という言葉はおそらく多くの方が聞いたことがあるでしょう。
これはヘブライ語で、日本語に訳すと「讃える」という意味になります。
また、次に挙げる「ラ ミゼラブル」も、多くの人が聞き覚えのある言葉でしょう。
これはヴィクトル・ユゴーの名作に由来し、「ああ無常」と訳されることもありますが、より柔らかい表現で「無常」や「悲しみ」と解釈されることもあります。

「讃えよう、悲しみを」という言葉を並べると、矛盾したような意味に見えるかもしれません。
通常、悲しみや無常観は否定的な感情と結びつけられます。
しかし、hideがこれらの言葉を組み合わせた背後には、真由子さんという少女の存在がありました。

真由子さんは幼いながらも難病と向き合い、生き続けてきました。
難病を抱えること自体は望ましいことではありませんが、hideは彼女や彼女の家族の苦しみを目にし、病気に対する疑問や苦悩を抱えたことでしょう。
「讃えよう、悲しみを」という言葉は、その中に「悲しみを克服し、人生を称賛し、前向きに生きていこう」というhideからのメッセージが込められています。


hideが伝えたメッセージは、真由子さんに限らず、広く人々に共鳴するものでした。
確かに真由子さんはこのメッセージの主人公ですが、そのテーマは普遍的なもので、人々にとっても有効です。

有名な作曲家であるベートーヴェンも、苦難を克服し歓喜へと至るテーマを探求しました。
彼は若い頃から難聴に苦しむこととなり、これは作曲家にとっては特に困難な試練でした。
しかし、ベートーヴェンはそれを「試練」と捉え、見事に乗り越え、数々の名曲を創り出しました。

真由子さんにとって病気が試練であるかどうかは、彼女自身にしかわかりません。
しかし、彼女は病気に負けず、明るく振る舞う姿勢を示しました。
病気を自覚し、生きる覚悟を決めるまでの間、彼女は苦しみに直面したことでしょう。
hideはその間、彼女のそばにいて支えました。
そして、真由子さんは辛い時に元気づけてくれたhideへの感謝の気持ちから、『MISERY』という曲を生み出しました。
これはhideから真由子さんへの「お返し」と言えるものですね。


君の痛み うれしそうに 羽根を広げて舞い降りてくる
昼の光は 君の傷を抱いて 優しく広げてゆく

予兆もなく、苦痛や悲嘆が主人公に突如として押し寄せます。
まさに「青天の霹靂」です。
それ以前は何事もなく平穏な生活を送っていたかもしれません。
実際、急襲的な出来事であるため、痛みや悲しみの実感もないかもしれません。
人生には幸せだけでなく、悲しい出来事や苦難も等しく訪れます。
その中で、一生忘れられない「ネガティブな出来事」があることは、多くの人に共通する経験でしょう。


ハレルヤ ラ ミゼラブル 星の嘆き聞けば
ハレルヤ ラ ミゼラブル ほんの小さな事だろう
SAY ハレルヤ

自分自身にとって最も大きな悲劇であっても、星々の悲嘆と比べると取るに足りないことかもしれません。
これは主人公が自身に対して語っているかのような言葉です。
ネガティブな感情に囚われず、前向きに進むことを心に決めた決意が、歌詞から伝わってきます。


夜の闇に落ちてゆけば 忘れてしまう事なのかも
揺れる思い つかのまの夢 小さな悲劇

降る星の数 数えたら 泣くのに飽きたろう
笑う月の蒼さ 傷をなでて 閉じてゆく

忘れようとしても、ますます効果がないかのように、主人公は行き詰まっています。
もしかしたら、夜の闇に身を委ねることが最善の選択かもしれません。
主人公の葛藤が、この言葉から垣間見えます。

悲しみを「抱きしめる」ほどに強くなる

Stay free your misery.
降りそそぐ悲しみを その腕の中に抱きしめて
Kiss your misery.
枯れるまで踊るだろう 全て受け止めるよ このまま
Stay free my misery(repeat4 times)

『MISERY』の中で、特にサビの歌詞が非常に重要だと感じます。
「降りそそぐ悲しみをその腕の中に抱きしめて」という部分は、マイナスの感情である「悲しみ」を克服しようというメッセージを伝えています。
そして、その悲しみを「抱きしめる」ほどに強くなるように、hideからの励ましでもあります。

これを実際に実践できる人はどれだけいるでしょうか?
皆さんはどう思われますか?
悲しみを乗り越えてポジティブな感情に変えることができるでしょうか?
この曲の主人公であるhideと真由子さんは、その点で非常に強い人々である可能性があります。
彼らは確かに非常に強靭な意志を持っているように思えます。