アニメ『チェンソーマン』第7話のEDとして流れたano「ちゅ、多様性。」。
初見は「かわいい曲だな〜」と思ったのに、よく聞くと歌詞もMVもどこかグロくて不穏で、「これは一体何の歌なんだ…?」とざわざわした人も多いはずです。
特にサビの「Get on chu!」は、“あるシーン”を知っている人には忘れられないフレーズになっていますよね。
この記事では、「ano ちゅ、多様性。 歌詞 意味」で検索してきた方に向けて、
- 曲の基本情報(『チェンソーマン』との関係)
- 歌詞全体が描く世界観
- Aメロ・Bメロごとの細かな解釈
- サビ「Get on chu!」の意味(ゲロチューとの関係)
- タイトル「ちゅ、多様性。」に込められたメッセージ
を順番に丁寧に解説していきます。公式の解答ではなく、あくまで一リスナーとしての考察ですが、歌詞を読み解くヒントになればうれしいです。
ちゅ、多様性。とは?anoと『チェンソーマン』第7話ED・曲の基本情報
まずは基本情報から整理しておきます。
- アーティスト:ano
- 曲名:ちゅ、多様性。
- リリース:2022年11月23日
- タイアップ:TVアニメ『チェンソーマン』第7話エンディングテーマ
- 作詞:あの・真部脩一
- 作曲:真部脩一
- 編曲:TAKU INOUE
『チェンソーマン』は各話ごとにED曲が変わるという豪華仕様で、第7話を担当したのが「ちゅ、多様性。」。
問題の「第7話」は、作中でも伝説級の“ゲロチュー回”。
泥酔した姫野がデンジにキスをした瞬間、口の中に嘔吐してしまう、という強烈すぎるシーンです。
この“ゲロチュー”を、「かわいい×ポップ×ダーク」で描き直したのが「ちゅ、多様性。」。
インタビューでもanoは、この曲について
ポップでキュートなのに、ゲロチューって歌ってるみたいな違和感が好き
と語っており、あえて“かわいさ”と“グロさ”を同居させることを意識していることが分かります。
サウンド面では、相対性理論の元メンバー・真部脩一(Ba)と西浦謙助(Dr)が関わっており、「ポップだけでは収まらない変態的で中毒性のあるバンドサウンド」が作り上げられています。
つまり、この曲は
チェンソーマンのゲロチュー回
× ano特有の「かわいいのに毒まみれ」な世界観
× 変態的ポップサウンド
が合体した、“多様性”そのもののような楽曲だと言えます。
歌詞の意味を全体から考察:エロとグロが交わる中毒的な恋愛の世界
歌詞全体をざっくり眺めると、テーマは一言で言えば
「トラウマレベルに気持ち悪いのに、なぜか離れられない恋愛・依存」
です。
- 酔っている/醒めない
- トラウマの味
- 孤独を鼓動で消して
- 独裁して・独占して
- 中毒になるまでチュー
といったワードが続き、健康的な恋愛というよりは「依存」「共依存」「中毒」に近い関係性が描かれています。
そこに、「ゲロチュー」を連想させるサビのフレーズが組み合わさることで、
- 身体的にも精神的にも「気持ち悪い」はずなのに
- それが快感と結びついてしまっている
- だからやめられない、むしろもっとほしい
という、快楽と嫌悪がねじれて混ざり合う、チェンソーマンらしい“危うい愛”の形が浮かび上がってきます。
同時に、歌詞の中には
- 「本気で狂えるくらいの鬱々しさが美しい」
といったニュアンスの言葉もあり(インタビューでano自身が特に気に入っているフレーズだと述べています)、
普通なら「病み」と呼ばれて避けられる感情や、他人には見せたくない“闇の部分”すら、美しいと肯定してしまう視点
が、この曲の根っこにあるのだと分かります。
エロ・グロ・病み・かわいさ・ポップさ。
相反する要素が全部ごちゃ混ぜの“カオス”こそが、「ちゅ、多様性。」が描く恋愛であり、世界そのものなのです。
Aメロ・Bメロ歌詞解釈:トラウマ・孤独・依存心としての「恋」の描写
ここからは、歌詞の流れに沿ってもう少し細かく見ていきます。
(※歌詞は著作権の都合上、要約・一部引用に留めています)
Aメロ:酔いと恋が醒めない、壊れた自分の自己紹介
冒頭では、中国語の「我愛イ尓(I love you)」と共に、
「酔いが覚めない」「恋が醒めない」と繰り返されます。
ここでの「酔い」は、アルコールだけでなく
- 人に依存してしまう“心の酔い”
- 正常な判断ができなくなる状態
をも暗示しているように感じられます。
さらに、
- 「お生憎様の慣れ果て」=ボロボロになった自分
- 「破滅してみて」=壊れていく未来をどこかで望んでいる
というフレーズから、すでに「この恋は健全じゃない」ことを自覚しつつ、それでもそこから離れられない語り手の歪んだ自己肯定感が伝わってきます。
Bメロ:トラウマの味と、孤独をごまかす鼓動
Aメロのあとに続くのが、「トラウマの味」「喉の奥がチクンチクン」といった、生々しい身体感覚の描写。
- キス=甘いもの、ではなく「トラウマの味」
- 喉がチクンチクンする不快感
- それでも、「鼓動で孤独を消してほしい」と願う
という流れは、
本当はつらいし、どこかおかしいと分かっている関係なのに、
“一人でいる孤独”よりはマシだと思ってしまう
という、負の依存関係を象徴しているようにも読めます。
「愛も恋も独裁して」「僕を独占して」というフレーズも印象的です。
ここでは、相手が自分を一方的に支配する「独裁」の構図が描かれていますが、語り手自身もそれを望んでしまっているのがポイント。
- 支配/被支配
- 依存/依存させる
といった関係性から逃げ出すどころか、「中毒になるまでチューしよ」と進んでのめり込もうとしている。
この危うさが、チェンソーマン世界の歪んだ魅力ともリンクしているように感じられます。
サビ「Get on chu!」「Bet on chu!」の意味を徹底解説【ゲロチュー×空耳表現】
サビでひたすらリフレインされるのが、
「Get get get on! Get on chu!」
という英語風フレーズ。
これが「ゲロチュー」に空耳できることは、ファンの間でもよく知られています。
「ゲロチュー」そのままだとエグすぎる問題
“ゲロチュー”とは、
嘔吐しながらのキス=相手の口の中にゲロを流し込むキス
という、かなり衝撃的な行為。
アニメ第7話のあのシーンをそのまま歌詞にすると、さすがに刺激が強すぎます。
そこで、
- 聴こえ方としては「ゲロチュー」を想起させる
- でも歌詞としては「Get on chu!」という英語風フレーズにしておく
という“空耳テクニック”が使われていると考えられます。
この仕掛けによって、
- アニメを知っている人には「うわ、あのゲロチューだ…」と刺さる
- 知らない人には「なんかノリの良い英語っぽいフレーズ」に聞こえる
という二重構造になっているわけです。
「Get on / Bet on」に込められたニュアンス
英語として見ると、「Get on」は「乗る」「乗っかる」、「Bet on」は「賭ける」。
- Get on chu! =「chu(キス)に乗れ!」
- Bet on chu! =「キスに賭けろ!」
というニュアンスにも取れますが、実際は意味よりも“響き”を優先して作られたフレーズだと解釈されることが多いです。
とはいえ、「気持ち悪くて最低なキス」に乗っかっていく、そこに自分の全部を賭けてしまう――
そんな、愚かで歪んだロマンチシズムが、「Get on / Bet on」という言い回しには込められているようにも感じられます。
タイトル「ちゅ、多様性。」の意味:色んな“ちゅ”と「多様性=受け入れること」
タイトル「ちゅ、多様性。」も、なかなか意味深です。
「ちゅ」と「多様性」をくっつける違和感
- 「ちゅ」=キス、愛情表現、甘さ、かわいさ
- 「多様性(ダイバーシティ)」=現代のキーワード。価値観・性・生き方など、さまざまな違いを認め合おうという考え方
普通ならあまりくっつかない2つの言葉を、あえて「ちゅ、多様性。」と並べているのがポイント。
ある考察では、
厄介で曖昧な概念である「多様性」に、“ちゅ”という愛を与える歌
として読み解かれています。
「多様性」という言葉は、便利なスローガンとして使われる一方で、
- 実際には“自分と違う他者”を受け入れるのは物凄くしんどい
- 思考停止で「多様性だから」で片付けてしまう危険性もある
という“現実の重さ”も抱えています。
そんなややこしい概念に対して、
- 「まぁまあ、よしよし」とキスする
- きれいごとだけじゃない、多様性のグロさも丸ごと抱きしめる
という姿勢が、「ちゅ、多様性。」というタイトルには込められているように見えます。
いろんな“ちゅ”が存在する=多様性
さらに、この曲の中には
- 甘いキスとしての「ちゅ」
- ゲロチューとしての「ちゅ」
- トラウマ混じりの、気持ち悪いけどクセになる「ちゅ」
など、いろんな“ちゅ”が混在しています。
キレイなものだけじゃなく、汚いものも、グロいものも、
それでも「ちゅ」と呼び、愛情表現として扱ってしまう
この雑多さこそが、「多様性」の一つの姿なのかもしれません。
つまり「ちゅ、多様性。」とは、
「どんな“ちゅ”もここにいていい」
という宣言のようにも読めるのです。
「ちゅ、多様性。」が私たちに投げかけるメッセージと、共感を呼ぶ理由
最後に、この曲がなぜここまで多くの人の記憶に残ったのかを整理してみます。
① “キレイじゃない自分”も認めていいのかもしれない
歌詞に描かれるのは、
- 依存的で、まともとは言えない恋愛
- トラウマまみれの愛情表現
- 病みと快楽が混ざりあった感情
といった、「本来なら隠したくなるような感情」ばかりです。
でもanoは、そうした感情を
- ポップなサウンド
- かわいいビジュアル
- キャッチーなフレーズ
でラッピングして「これもアリだよね?」と提示してみせる。
だからこそ、
「自分もどこかおかしいし、健康的な恋愛だけしてきたわけじゃない」
というリスナーほど、「ちゅ、多様性。」に妙な安心感や共感を覚えるのかもしれません。
② SNS時代の“多様性”を皮肉りつつ、それでも愛そうとする
現代は「多様性」がキーワードとして頻繁に語られる一方で、
- 実際には、他者の価値観に怒ったり、攻撃したり
- “理解できないもの”を排除したり
ということが日常的に起きています。
「多様性」という言葉自体が“便利な免罪符”になってしまう危うさを指摘する論考もありますが、
「ちゅ、多様性。」は、その厄介さを分かったうえで、
それでも“ちゅ”してみるしかないよね
と、ちゃっかり愛を送ってしまう。
- 理解できない
- 気持ち悪い
- でも、完全には切り捨てられない
そんな、矛盾だらけの感情に寄り添ってくれるからこそ、この曲はただの“ネタソング”や“ゲロチューの曲”に終わらず、長く聴かれ続けているのではないでしょうか。


