自分の選んできた道を振り返ったとき、誇れることと同じくらい、やり直したいことが浮かぶ。そんな人生を、どうすれば自分のものとして受け止められるのでしょうか。
BE:FIRSTの「It’s not a bad life」は、映画『RYUJI 竜二』の主題歌です。タイトルを日本語にすると、「悪くない人生だ」という意味になります。BE:FIRST
この言葉には、傷や後悔を抱えたまま、自分の生きてきた時間に価値を見いだそうとする意志が感じられます。同時に、歌詞には、自分を肯定したい気持ちだけでは片づけられない痛みも残っています。
この記事では、タイトルの控えめな肯定、光と影のイメージ、英語の反復、そして映画の設定を手がかりに、この曲が描く人生への向き合い方を考察します。
※本記事は2026年10月25日時点の公開情報に基づきます。映画との関係は公開済みのあらすじを手がかりにしたもので、歌詞の解釈は筆者個人の見解です。
「It’s not a bad life」はどんな曲?配信日と制作情報
「It’s not a bad life」は、2026年10月12日に先行配信されたBE:FIRSTの楽曲です。11月3日発売予定のアルバム『BE:4U』に収録されます。befirst.tokyo
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| アーティスト | BE:FIRST |
| 曲名 | It’s not a bad life |
| 先行配信日 | 2026年10月12日 |
| 収録アルバム | 『BE:4U』 |
| 作詞 | SKY-HI・JUNON |
| 作曲 | Ryosuke“Dr.R”Sakai・Daisuke Nakamura・SKY-HI・JUNON |
| タイアップ | 映画『RYUJI 竜二』主題歌 |
作詞・作曲には、映画でひろし役を演じるJUNONも参加しています。楽曲クレジットと映画の出演情報から、演技と音楽の両方を通して作品に関わっていることが分かります。歌ネット
この制作背景は、歌詞の強い言葉を考えるうえでも手がかりになります。登場人物が置かれた状況や、その人が何を守ろうとしているのかを重ねることで、言葉の響きも変わってくるでしょう。
タイトルの意味|なぜ「悪くない人生」と歌うのか
「悪くない」という表現には、人生を振り返る余地があります。
何もかもがうまくいったと胸を張るには、思い出したくない失敗がある。それでも、誰かと過ごした時間や、自分で選んだ瞬間まで、無価値だったとは思いたくない。タイトルには、そうした複雑な実感を受け止める響きがあります。
たとえば、一つの選択を悔やむことと、それまで生きてきた自分のすべてを否定することは、同じではありません。判断を誤ったと認めながら、確かに大切だったものを思い返すこともできるはずです。
この曲のタイトルも、そのような振り返り方として読むことができます。
しかも、その言葉を口にするのは、人生の外側から採点する誰かではありません。歌の語り手自身です。周りの評価に揺さぶられながらも、自分が経験してきた時間について、自分の言葉で語ろうとする。その姿勢が、短いタイトルに重みを与えています。
「悪くない人生だ」と言えることは、過去について考えるのをやめることとは違う。考えたうえで、それでも自分の人生を生き続けようとする言葉なのだと思います。
光と影のイメージが描く、切り離せない過去
歌詞では、光と影をともに受け入れようとする姿勢が示されます。歌ネット
この二つを、人生の成功と失敗に重ねることはできるでしょう。ただ、同じ出来事の中にも、光と影の両方があると考えると、さらに読みが深まります。
ある人との出会いに救われた。その関係の中で、別の誰かを傷つけたこともある。夢を追った時間は大切だったけれど、近くにいる人の寂しさに気づけなかった。人生には、一つの出来事に一つの評価をつけるだけでは捉えきれない経験があります。
だからこそ、この曲で考えたいのは、過去のどこを美しく語れるかということに加えて、語りにくい部分をどう引き受けるかという問題です。
後悔している出来事を思い出すたび、自分にはもう何の価値もないと感じてしまうことがある。しかし、反省のためにも、その先を生きる自分が必要になります。過去を見つめることと、今の自分を支えることは、どちらも欠かせません。
光と影を抱えるという読み方には、その難しい両立が含まれているのではないでしょうか。
ただし、誰かを傷つけた行為まで、愛があったからと正当化できるわけではありません。この曲にある痛みや償いへの意識を踏まえると、自分の人生を肯定することには、残された問題と向き合う重さも伴うと考えられます。
英語の反復に表れる、覚悟と危うさ
歌詞には「If I die, I die」という、死を引き受ける意味の強い表現が登場します。歌ネット
この言葉には、先のことを恐れずに進もうとする覚悟が感じられます。同時に、追い詰められた人の投げやりな響きも含まれています。聴く場面によって、そのどちらが強く聞こえるかは変わるでしょう。
人生を肯定するタイトルと、死に触れる言葉が隣り合っていることが、この曲の緊張を生んでいます。
語り手は、自分の人生に価値を見つけようとしています。しかし、心の中が穏やかに整理されているようには見えません。強く言い切らなければ保てない気持ちもあるのかもしれません。
そのため、繰り返される肯定の言葉を、すでに得られた答えとしても、自分を支えるための呼びかけとしても聴くことができます。
同じ言葉を重ねる行為には、確信を示す働きと、揺らぐ確信をつなぎとめる働きがあります。この両方を感じ取ると、歌の力強さの奥にある不安にも耳を向けられるはずです。
映画『RYUJI 竜二』との関係|家族を守ることの難しさ
映画『RYUJI 竜二』は、2026年10月30日公開予定の作品です。柳楽優弥が主人公・竜二を演じ、JUNONは竜二を慕う舎弟・ひろしを演じています。映画「RYUJI 竜二」公式サイト
公表されたあらすじでは、竜二は家族と暮らすために裏社会から離れ、堅気として働き始めます。しかし、新しい生活にも困難があり、かつての仲間との関係が再び日常に入り込んできます。アップリンク吉祥寺
この設定を踏まえると、主題歌にある人生への肯定も、具体的な葛藤を帯びて聞こえてきます。
家族を大切に思う気持ちがあっても、その思いを日々の行動として続けることは簡単ではありません。また、過去の人間関係には、離れると決めただけでは消えない恩や愛着が残ります。
竜二にとって大切なものが複数あるからこそ、そのすべてを同じように守れるのかという問いが生まれるのでしょう。
ここで、楽曲の光と影のイメージにも意味が加わります。ある場所で自分を支えてくれた関係が、新しい暮らしでは悩みの原因にもなる。その複雑さは、人と関わりながら生きることの難しさとして、映画の外にも通じています。
誰かを愛しているという実感と、その人を幸せにできているかという問いは、常に一致するとは限りません。
この距離に目を向けると、主題歌を、登場人物の生き方を無条件に称賛する歌としてだけ捉える必要はなくなります。彼らの切実さに寄り添いながら、その選択が何をもたらすのかも問いかける歌として聴けるのではないでしょうか。
自分の人生を肯定する言葉に、何が残るのか
「It’s not a bad life」というタイトルは、人生についての最終的な判定にも、これからを生きるための言葉にも聞こえます。
過去を振り返って、そこに価値があったと認める。そう認めることで、次に何を大切にするかを考えられるようになる。肯定には、未来へつながる働きもあるのでしょう。
もちろん、自分を許せるようになった瞬間に、傷つけた相手との関係が元に戻るわけではありません。自分の中の納得と、他者との間に残る責任には、それぞれの時間が必要です。
それでも、自分の人生を丸ごと無価値だと決めつけてしまえば、その責任に向き合い続ける力まで失ってしまうことがあります。
この曲が差し出す「悪くない」という言葉に、悔いを残した人が、もう一度自分の時間を生きるための足場を見いだせます。
光と影を抱えた自分に、これから何を選べるのか。その問いを残してくれるところに、BE:FIRST「It’s not a bad life」の力があるのだと思います。

