【マフラー shishamo 歌詞 意味】「思い出にしたくない」冬の失恋を結び直す歌詞考察

冬の夜、首元を守るはずのマフラーが、なぜか心まで締めつけてくる——。
SHISHAMO「マフラー」は、失恋の痛みを“忘れていく自分”への苛立ちごと描いた、静かに刺さる一曲です。

この曲が苦しいのは、ただ未練があるからじゃありません。
「忘れたいこと」と「忘れたくないこと」が同じ場所に並んでしまう矛盾、言葉にする前に“塞いでしまう”癖、そして思い出に変わっていく時間の残酷さ。そうした感情が、**“結ぶ/閉じ込める”**という動作に置き換えられているからです。

この記事では、タイトルの象徴性から、冬の情景(白い息)や「嘘」「夢」「閉じ込める」といったキーワードまで丁寧に拾いながら、SHISHAMO「マフラー」の歌詞が伝える意味を考察していきます。読後にはきっと、この曲を聴くたびに“結び目”の痛さが違って見えるはずです。

曲全体のあらすじ:冬の失恋と「思い出にしたくない」気持ち

この曲の核にあるのは、「昨日の出来事でさえ、時間が経てば“思い出”になってしまう」ことへの強い抵抗です。主人公は、忘れたくない相手や出来事があるのに、眠って起きたら少し薄れてしまう――その“自分の仕様”に苛立っていて、だからこそ「忘れないための儀式」を繰り返します。

その儀式として描かれるのが、“マフラーを結ぶ”という行為。冬の防寒具として自然なアイテムなのに、歌の中では「記憶を固定する」「感情を逃がさない」ための道具になっていて、失恋の痛みが生活の所作にまで染みているのが特徴です。

ネット上の考察でも、この曲は「好きだった人との記憶を忘れたくない心情」を描いたものとして受け止められていることが多いです。


タイトル「マフラー」が象徴するもの(温もり/結ぶ/ほどけない)

マフラーは本来、首元を温めるもの。つまり“安心”や“ぬくもり”の象徴になりやすい。でもこの曲では、温める以上に「結ぶ」「締める」「ほどけない」という機能が前面に出ています。主人公は“温度”より“固定”を選んでいるんですよね。

さらにマフラーは、口元まで覆えば息の熱や言葉まで包み込む。だからこそ、後半で出てくる「塞ぐ」「閉じ込める」という動作とも相性が良く、“外に出さない感情”のメタファーとして成立します。


忘却への苛立ち:時間が進むほど薄れていく記憶への抵抗

歌詞では、「昨日のこともいつかは忘れて思い出に変わっていく」と、忘却が“避けられない自然現象”のように語られます。問題は、それを分かっているのに止められないこと。しかも「眠ってしまえば忘れていく自分に辟易する」と、自分自身に嫌気が差している。

ここがこの曲の痛いところで、相手への未練だけじゃなく“自分への怒り”が混ざることで、感情がさらにほどけなくなっていきます。忘れられないのではなく、「忘れていく自分を許さない」と宣言するほど、意思として握りしめてしまう。


冬の情景描写の効き方:「白い息」が示す距離感と孤独

冬の描写で印象的なのが「白い息」。寒さが強いほど、吐いた息が“見える”ようになる。つまりこの曲では、見えないはずの感情(息/想い)が、冬の空気によって可視化されるんです。

しかも本作は“冬をテーマにしたコンセプトEP”の中の1曲として発表されています。季節設定が単なる背景じゃなく、感情表現のギミックとして最初から設計されているのが分かります。


“嘘”と“夢”のモチーフ考察:本音を言えないまま飲み込む心理

「嘘吐いて/夢吐いて」という並びが面白くて、ここには2種類の“現実逃避”が同居しています。

  • :現実をねじ曲げてでも平気なふりをする
  • :現実の代わりに、こうであってほしい物語を息として吐く

でもどちらも“吐く”のに、その直後に「そっと閉じ込める」が来る。つまり外に出したはずのものを、すぐ回収して胸の中に戻してしまう。感情表現の手前でブレーキを踏む癖が透けます。


キーワード「閉じ込める」:感情を外に出さない防衛反応

この曲の「閉じ込める」は、単に“しまう”じゃなくて、かなり身体的に描かれます。瞼・耳・口を順番に塞いでいく描写があり、視界も音も言葉も遮断して、世界との接点を減らしていく。

ここまでやるのは、傷つかないための防衛でもあるし、忘れないための儀式でもある。外に出ていった瞬間に薄れてしまうなら、最初から外に出さなければいい――そんな極端な心理が、“塞ぐ”という動作に変換されているように読めます。


サビにある矛盾(忘れたい×忘れたくない)が刺さる理由

サビでは「忘れたいことも/忘れたくないことも」と、相反する気持ちが同列に置かれます。ここがリアルで、失恋って“美しい部分だけ残したい”のに、痛い部分もセットでついてくる。消したいのに消せない。

だから主人公の願いは「思い出にならないように」。普通は“思い出にする”ことで前に進むのに、この曲は逆を行く。整理や昇華ではなく、未完のまま凍らせる。冬の曲としてこれ以上ない残酷さです。


「結び方」が強くなる変化:未練から決意へ(執着の濃度の上昇)

序盤は“ぎゅっと結ぶ”ですが、途中で“かたく結ぶ”に変化します。微妙な言葉の差なのに、感情の硬度が一段上がるのが分かるポイントです。さらに「絶対に許さない」「逃がさないで」と、言い切りが増えていく。

そして終盤では、相手ではなく「自分をぎゅっと抱きしめて」と視点が内側へ。誰かに縋る歌から、自分で自分を拘束する歌へ変わっていく。この変化が、未練を“決意”に見せてしまう怖さ(=執着の完成)を生みます。


この曲が響く瞬間:失恋直後・冬の夜・ひとりで歩く帰り道

この曲が刺さるのは、頭では「時間が解決する」と分かっているのに、心がついてこない時です。忘れたいのに忘れたくない矛盾を抱えたまま、寒い夜にひとりで歩く――その“体感”に、歌の所作(結ぶ/塞ぐ/抱きしめる)が寄り添います。


まとめ:「マフラー」は“体を温める”より“心を縛る”ための道具として描かれる

「マフラー」は、防寒具のはずなのに、この曲の中では記憶と感情を逃がさないための結び目として機能します。忘却に流される自分を許せない主人公が、冬の空気の中で“思い出化”を拒み続ける――それがこの曲の痛みであり、同時に強烈な魅力です。