【歌詞考察】go!go!vanillas「アダムとイヴ」の意味とは?“罪”と“愛”に揺れる現代的ラブストーリー

近年、物語性の強い歌詞が注目される中、go!go!vanillasの「アダムとイヴ」はひときわ異彩を放っています。そのタイトルからも想起されるように、この楽曲は旧約聖書の「アダムとイヴ」——すなわち“原罪”と“愛”をめぐる象徴的な物語を引用しながら、現代の恋愛や人間関係に通じる深いテーマを内包しています。

今回は、歌詞の背景にあるモチーフやキーワード、表現技法を読み解きながら、この曲が私たちに投げかけるメッセージを探っていきます。


「アダムとイヴ」の概要と旧約聖書モチーフ――物語が持つ象徴性

「アダムとイヴ」と聞くと、誰もが一度は耳にしたことがあるであろう旧約聖書の創世記の物語を思い浮かべるでしょう。エデンの園に住む最初の男女が「知恵の実」を口にし、神の戒めを破ったことで楽園を追われる——それは“禁断”や“堕落”、そして“人間性”の象徴として語られてきました。

go!go!vanillasのこの楽曲においても、こうした宗教的背景が巧みに引用されており、単なる恋愛ソングにとどまらない奥行きを持たせています。たとえば、歌詞中に繰り返される「罪」や「後戻りできない」というフレーズは、アダムとイヴが知恵の実を食べた後の“不可逆的な選択”を想起させ、愛におけるリスクや覚悟を暗示しています。


歌詞のキーワードから読み解く「罪」と「後戻りできない恋」

この楽曲の中核をなすのは「罪」という概念です。単に悪いことをした、という意味ではなく、恋において人は誰しも“選ぶこと”によって何かを失うことがある、というテーマが内包されています。

罪を重ねた僕らは 戻れないのさ

この一節には、ただ情熱的に愛し合うだけではない、現実的な人間の弱さや過ちが描かれています。「罪を重ねた」という表現には、社会的な道徳や自分の中の良心を裏切るような行動があったことを示唆しつつも、それでもなお進むしかないという切実さが感じられます。

また、「戻れない」という表現には、過去を取り消せない“重さ”と、“前に進むしかない覚悟”の両方が共存しています。これは、恋愛に限らず人間関係全般に通じる感情であり、共感を呼ぶ要因のひとつと言えるでしょう。


「見てない・言ってない・聞いてない」とは何か――否認と距離感の心理

歌詞の中で特徴的に登場するのが、「見てない」「言ってない」「聞いてない」という三連の否定形です。

見てない 言ってない 聞いてない
それも全部ほんとの気持ちじゃない

この表現は、いわゆる「三猿」のように現実や感情から目をそらす姿勢を連想させます。恋愛において、時には言葉にできない・認めたくない・知られたくない感情が存在します。これらは人との距離感を保つための“防御反応”とも言えるでしょう。

しかし、「それもほんとの気持ちじゃない」と続けることで、否認の奥にある“本音”の存在を暗に示しています。これは、愛における“素直になれない自分”を認めながらも、そこにある誠実さを肯定しているようにも感じられます。


「それも含めて美しい/愛おしい」――欠点をも含めて魅せる愛のあり方

楽曲の中盤から終盤にかけては、先ほどの葛藤や罪の意識を乗り越えるような、肯定的なフレーズが登場します。

それも含めて美しい
それも含めて愛おしい

このように、すべての欠点や過去の過ちさえも“含めて”愛するというメッセージが強く打ち出されます。この視点は、恋愛における“理想”ではなく“現実”に対する成熟したまなざしとも言えるでしょう。

不完全であることを受け入れ、それを美しさとして肯定する姿勢は、go!go!vanillasの音楽的成長や哲学とも重なる部分があります。つまり、この曲は“無垢な恋愛”ではなく、“ありのままを受け入れる愛”を描いているのです。


MV/演出と音楽的アプローチから見る「新境地」への挑戦

go!go!vanillasはこの曲で、歌詞の内容だけでなく、音楽や映像面でも新しい試みをしています。MVでは、モノトーン調の映像や象徴的な動きが多数登場し、まるで演劇を見ているかのようなドラマチックな演出が印象的です。

サウンド面では、これまでよりも重く、濃密なアレンジが施されており、特にサビでの感情の爆発力は圧巻。ストリングスやシンセが織りなす奥行きのあるサウンドは、歌詞の内面世界を一層引き立てています。

このように、「アダムとイヴ」はgo!go!vanillasにとっても重要な“転機”の作品であり、聴き手に対して新しい価値観を提示する意欲作となっています。


【まとめ】go!go!vanillasが描く“現代のアダムとイヴ”とは

「アダムとイヴ」という古典的なモチーフを用いながらも、go!go!vanillasはそれを単なる引用に終わらせることなく、現代の恋愛・人間関係に通じる“複雑で矛盾をはらんだ感情”として再構築しています。

  • 禁断と知りながら惹かれ合う恋
  • 自分の弱さや他人の欠点をも愛することの大切さ
  • 見て見ぬふりをしてしまう心の揺れ
  • それでもなお前を向いて歩こうとする決意

これらすべてが「アダムとイヴ」という楽曲に凝縮されており、まさに“聖と俗”の狭間に立つ人間そのものが描かれていると言えるでしょう。