フォーリミこと「04 Limited Sazabys」が2020年にリリースした楽曲「hug」。軽快なリズムとポップなメロディの裏に、切なさや葛藤を含んだ深い歌詞が込められています。「hug」のタイトルが示すように、“抱きしめる”という行為に象徴される心の距離感や愛情の形が、非常に繊細に描かれています。本記事では、その背景にある感情やメッセージを読み解いていきます。
1. 「hug」の歌詞に描かれる“恋の始まり”と“もだかしさ”の表現
「hug」は、一見すると甘酸っぱいラブソングのようですが、その内側には複雑な感情が織り交ぜられています。歌詞の序盤では、恋愛の初期特有の「好きだけど伝えられない」「近づきたいけど怖い」といった“もどかしさ”がにじみ出ています。
- 「何回もシミュレーションしてる」のような表現は、告白や会話の場面を繰り返し想像している様子を描写。
- 「あいまいにしたってもう気づいてるでしょ?」というフレーズは、相手との微妙な関係性に揺れる主人公の心情を表現しています。
こうした描写から、恋のはじまりに感じる「不安と期待」がリアルに伝わってきます。
2. サビの「ギュっと抱きしめてたいね」に込められた想いとは何か
タイトルにもある「hug(抱きしめる)」という言葉は、物理的な接触以上に、感情的な繋がりを象徴しています。サビで繰り返される「ギュっと抱きしめてたいね」というフレーズには、単なるスキンシップではなく「安心感」「共感」「つながり」が込められています。
- 抱きしめることによって不安を和らげたい、相手の心に触れたいという想い。
- 自分自身が壊れそうなとき、誰かの温もりに救われたいという願い。
この言葉は、相手を想う優しさと同時に、自分を守ってくれる存在を求める弱さの両面を映しています。
3. 「抜け出せないから」「ループ」の比喩—感情の迷いと繰り返し構造
歌詞中に登場する「ループ」「抜け出せない」というワードは、恋愛における“感情の迷路”を象徴しています。何度も考え直し、何度も後悔し、同じ場所をぐるぐる回っているような精神状態が描かれています。
- 「君のこと考えすぎて夜が明けた」など、恋愛が日常生活にも影響している様子。
- 「間違ってないけど正しくもない」という自己矛盾的な心の動き。
これは、多くの人が共感できる“好きだけど前に進めない”という心理を巧みに表現しており、「hug」の深みを増しています。
4. 他者との“折り合い”をテーマにした歌詞のメッセージ
「hug」は単なる恋愛ソングではなく、「他者との距離感」や「理解し合うことの難しさ」をテーマにもしています。恋人、友達、家族など、誰かとの関係において「ちょうどいい距離」が見つけられないときのジレンマが滲んでいます。
- 「近づきすぎると壊れそうで、離れると寂しい」といった絶妙な距離感。
- 「わかりたいけどわかりきれない」人間関係の複雑さ。
このようなメッセージは、特に若者の“生きづらさ”や“社会との摩擦”にも共通しており、多くのリスナーに刺さる要素となっています。
5. フォーリミ(04 Limited Sazabys)の音楽スタイルと「hug」の位置づけ
「hug」は、フォーリミが得意とするアップテンポなサウンドに、内省的な歌詞を乗せたバランスの取れた楽曲です。ポップパンクやメロコアをベースにしつつ、メロディアスで親しみやすい音づくりが特徴です。
- 従来の「疾走感」に「温もり」や「包容力」を加えた新境地。
- 青春の一瞬や揺れる感情を、直接的な言葉でなく“行間”で伝える詩的なセンス。
「hug」は、フォーリミの進化を象徴する一曲であり、バンドとしての幅を広げた代表的な作品といえるでしょう。
Key Takeaway
「hug」は、フォーリミの音楽性とリリックセンスが融合した名曲であり、恋愛に揺れる心、他者との関係性、不安と希望が繊細に描かれています。単なるラブソングではなく、リスナーの感情に寄り添う深いメッセージが込められているからこそ、多くの人の心に響くのです。