【徹底考察】n-buna『ウミユリ海底譚』歌詞の意味とは?海底に沈む物語と喪失の正体

n-buna(ナブナ)が2014年に発表した「ウミユリ海底譚」は、ボカロ楽曲の中でも特に“物語性の高さ”と“胸に残る切なさ”で多くのファンに愛され続けている名曲です。
海底に沈んだ世界、繰り返される記憶、漂う孤独——まるで一篇の短編小説のように、聴くたびに新たな感情を呼び覚ましてくれます。

この記事では、
・歌詞が語る物語の核心
・海底やウミユリの象徴的意味
・主人公の心理状態
・n-buna作品全体とのつながり
を深掘りし、楽曲が持つ“本当の切なさ”に迫っていきます。


『ウミユリ海底譚』はどんな物語?歌詞が描く世界観の全体像

「ウミユリ海底譚」は、海底に沈んだような閉ざされた世界を舞台に、“記憶”と“喪失”をテーマに進行する物語のように描かれています。

歌詞には「海底」「ウミユリ」「泡」など、水中を想起させるワードが多く登場します。これらは単なる風景描写ではなく、“現実から切り離された時間の止まった空間” を象徴していると考えられます。

主人公はその空間で何かを探しているようでもあり、忘れようとしているようでもあります。“喪った誰か”や“過去の記憶”と向き合いきれず、海底に閉じこもっている状態が物語全体を包んでいます。


海底・ウミユリが象徴する“停滞と孤独”のメタファーとは

海底は一般的に「静寂」「孤立」「時間の停止」を象徴するモチーフです。
ウミユリという生き物は深海で静かに揺れる姿から、“変わらないもの” の象徴として扱われがちです。

これを踏まえると、ウミユリ海底譚の海底は
「変わらずにあり続けるけれど、誰も助けに来ない世界」
として解釈できます。

つまり、主人公が心の中で固まってしまった感情や、動かせない過去の記憶が海底に例えられているのです。
その世界で揺れるウミユリは、主人公自身の“変わらない気持ち”そのものを映し出していると言えるでしょう。


主人公はなぜ海底に沈んだのか?失われた記憶・喪失テーマの解釈

この曲には、明確に「何を失ったか」は書かれていません。
これはn-bunaの特徴である“余白のある物語”であり、リスナーに解釈を委ねています。

しかし、歌詞の節々から読み取れるのは
「誰かを失った喪失感」
「過去から逃れられない苦しさ」
の二つです。

主人公はその喪失に強いショックを受け、「海底のような感情の底」に沈み込んでしまった状態。
現実に戻ることもできず、思い出すことすら苦しいため、心が深海に閉じこめられたように動けなくなっていると解釈できます。


「忘れたいのに忘れられない」矛盾する感情が示す心理描写

歌詞には「忘れたい」「忘れられない」といった相反する感情が共存しています。
これは、喪失を経験した人が陥る典型的な心理で、n-bunaはこの矛盾を非常に繊細に描いています。

忘れてしまえば楽になれる。
でも、忘れてしまうとその人が“本当にいなくなってしまう”気がして怖い——。

この“記憶の引力”と“前に進みたい気持ち”の葛藤こそが、ウミユリ海底譚の最も切ない部分です。
海底に沈んでいるのは単なる比喩ではなく、主人公の心が揺れ動く複雑な感情表現そのものといえます。


n-bunaが繰り返し描く“時間の止まった世界”との共通点

n-bunaの作品には、“静止した時間”や“閉ざされた空間”がよく登場します。

例:
・「夜明けと蛍」…過去に取り残された少女
・「透明エレジー」…思い出に囚われた心
・「アラクレ」…動けない感情と葛藤

これらに共通するのは、
「心が過去に縛られたまま、前に進めない人物」
の存在です。

「ウミユリ海底譚」もまた、海底という時の流れが感じられない世界を通して、主人公の“停まった心”を描いています。
n-bunaらしい美しい孤独感が、物語全体に深く染み込んでいるのが特徴です。


楽曲構造とメロディが物語の“沈む感覚”をどう表現しているか

楽曲は、静かなイントロから徐々に広がりを見せる構成になっています。
特にサビ前に向けての少し重く沈むようなコード進行は、まさに海底へ沈むような感覚をもたらします。

・透明感のあるサウンド
・繰り返しのフレーズ
・伸びやかなメロディライン

これらが相まって、主人公が「海底で漂いながら過去を見つめている」状況を音として表現しているのです。

メロディそのものが物語の一部となり、聴き手の感情を深く海の底へと誘います。


多くのリスナーに刺さる理由──現代の若者の心情との共鳴点

「ウミユリ海底譚」が長く愛され続けている背景には、
“心が沈んで動けない状態”
が現代の若者の不安や孤独と共鳴している点があります。

・人間関係の喪失
・将来への不安
・自己肯定感の揺らぎ
・過去の傷から抜け出せない感覚

こうした感情を経験した人なら、歌詞の空気感に自然と自分自身を投影してしまいます。
主人公の孤独や迷いは、特別なものではなく“誰もが抱く普遍的感情”なのです。


『ウミユリ海底譚』をさらに深く読むための考察ポイントまとめ

最後に、楽曲をより深く味わうためのポイントを整理します。

  • 海底=主人公の心の底
  • ウミユリ=変わらない感情、記憶の象徴
  • 物語の核心は“忘れられない喪失”
  • n-buna特有の“時間の停止”が隠れテーマ
  • メロディも世界観づくりに大きく関与

これらを意識して聴くと、ウミユリ海底譚は“ただの切ない曲”ではなく、
「喪失と記憶の間でもがく一人の心理劇」
として立体的に浮かび上がります。