2018年に、アーティスト、芸人、現代音楽家が一堂に会して結成された、非常に独創的なバンド、ジェニーハイがついにデビューしました。
このバンドのリーダーでありプロデューサーでもある川谷絵音(通称えのんP)が、作詞と作曲を手がけました。
過去に物議を醸した彼が描く“異常な恋”の歌とは一体どのようなものなのでしょうか?
その歌詞を私なりに解釈してみました。
彼らの堅実な演奏が強調されている
「片目で異常に恋してる」のミュージックビデオは、真っ白なバックグラウンドに5人が演奏する様子が中心です。
元来音楽の世界で活動していた川谷絵音、中嶋イッキュウ、新垣隆は言うまでもなく、芸人の小藪千豊やくっきーも非常にプロフェッショナルな演奏を披露しており、それが非常にカッコいいですね!
彼らが奇抜なバンドとしてではなく、しっかりとした演奏グループとして見られるように工夫されているのでしょうか。
特別な工夫なしに、彼らの堅実な演奏が強調されているように感じます。
ちなみに、ミュージックビデオの中で学生服を着た姿が登場するシーンは、ジェニーハイの「ジェニーハイ学園物語」からのものです。
「片目で異常に恋してる」のMVが真面目な雰囲気で撮影されている一方で、こちらの映像は芸人たちのユーモア溢れる面白いシーンが盛り込まれています。
ぜひ一緒にご覧くださいね。
主人公の切ない恋心
「片目で異常に恋してる」というタイトル、どこかで聞いたことがありませんか?
そうですね。
ボーイズ・タウン・ギャングの「君の瞳に恋してる」と似ている部分がありますね。
ただし、内容は全く異なります。
「君の瞳に恋してる」は、相手を口説こうとする積極的な歌詞です。
一方、「片目で異常に恋してる」は、もうこのままでは苦しいので相手から離れたい、という消極的な歌詞に思えます。
このような消極的な片思いの表現が特徴的な「片目で異常に恋してる」。
具体的な内容は一体どのようなものでしょうか?
苦しゅうない苦しゅうない
私が愛想つかすことなんて
こない気がするから
嫌われるって怖がって
愛想つかしたふりならするかもしれないわ
この曲の主人公が抱えているのは、他のライバルに好きな人を奪われるのではなく、好きな人が自分を嫌いになってしまうことへの不安です。
彼女は自分から好きな人を嫌いにさせることができないと確信していますが、自分の感情が相手に負担になるのではないかという心配から、好意を示さないようにする決意をします。
だからこそ、彼女は相手に気を使わないでほしいと思っています。
このような主人公の切ない恋心が歌われています。
恋愛は時に人を狂わせる
BAZOOKAぶっ放したくらいの
漫画のような心
狸寝入りした最高潮の私の潤いは
危険と隣り合わせであーもう嫌になっちゃうな
こうなったらドーピングして視界を狭めよう
相手の視線や仕草、そして会話の内容に関わらず、今の主人公はどんな些細なことにも極度に動揺しています。
まるで漫画で言えば、バズーカを撃たれた直後のような感覚です。
彼女は表面上は無関心を装っていますが、内心は常に不安に満ちています。
「突然相手が姿を消したらどうしよう」という不安が彼女を襲います。
このような考えによって、彼女の心臓はドキドキと落ち着きません。
この状態が続くなら、彼女はどんな手段を使ってでも愛する人を自分から遠ざけたいとさえ思っています。
主人公は理性を保つことが難しくなっています。
恋愛は時に人を狂わせるほどの力を持っていますが、主人公も今、その狂気の中心にいると言えるでしょう。
Aメロの冒頭で登場する“BAZOOKA”という英語表記について疑問を持った方もいるでしょう。
この曲は自己紹介ソングではなく、純粋なラブソングですが、歌詞の中で番組名をちゃっかり宣伝する川谷絵音のセンスはさすがと言えるでしょう。
自分でもこの感情が異常であることに気付いている
もういいや
切ないや
苦しいや
じゃなくて
漬物みたいに
塩分強めの脇役でOK
主人公と彼(彼女)の関係がどこまで進んでいるのかはっきりしていないが、現時点で主人公は彼(彼女)と非常に近しい関係にある。
しかし、その親密な関係が主人公を苦しめている。
“私は彼(彼女)にとって一体何なのか?”という疑問に苦しむ日々が続き、とうとう”彼(彼女)の人生における脇役の一人になってしまってもいいかもしれない”という妥協的な考えに至る。
しかし、そうした諦めの念が湧き上がる一方で、未練がましい思いがついつい心に残る。
まるで塩分の強い漬物のように、彼(彼女)に自分のことをまだ気にかけてもらいたいという願いが残っているのだ。
片目で異常に恋してる
私あなたしか見えないの
主人公はまさに「惚れた欲目」という状態にあります。
相手の欠点すら見えなくなるほど、恋愛感情が偏っています。
しかしながら、彼女は自分でもこの感情が異常であることに気付いています。
恋愛においてほぼ盲目的な状態に近いが、少しだけ客観的な視点を持てる自覚があるからこそ、彼女はかろうじて片目を開いていられるのかもしれません。
毎度お騒がせします
つまりはまたお騒がせします
つまらないことではない
でも面白くもない
恋のお話を歌にしてます
恋愛に振り回されている人は、気づかぬうちに周囲を騒がせています。
自分にとっては重要な恋愛相談だが、他人からすれば興味のない話題かもしれません。
自分の悩みについて相談するでもなく、いつも騒がしいばかりです。
これは一見、そのような解釈ができる歌詞ですが、実は川谷絵音自身のスキャンダルを自虐ネタとして歌っているようにも聞こえます。
なぜなら、この歌詞の部分は中嶋イッキュウが歌い終えた後、再び同じ歌詞を川谷絵音本人が歌っているからです。
このような工夫によって、リスナーが考えさせられるようになっており、非常に面白い歌詞だと思います。
恋の終わりは突然
とりあえずとりあえず
両目で見てみたら
そんなに魅力的に見えないし
嫌われるって怖がった
過去すら笑っちゃう
時間無駄にしたな
恋の終わりは突然訪れるものだ。
両目で見ることを躊躇していた主人公は、ついに一歩踏み出した。
ところが、驚いたことに、かつて愛し合っていた相手が、自分の人生の一部に出てくる“脇役”のように見える。
「私はなぜ今までこの人に嫌われるのを恐れていたのだろう?」
恋する少女のような日々を振り返り、笑いがこみ上げてくる。
経験値が上がったわけではなく、ただ思い続けた日々。
自分の愚かな行動に後悔を感じている。
最大限の強がり
みんな凝視しすぎじゃない?
どんなコースを生きてくの?
私はフルコース
品数多めで飽き足ります
最後に、恋の呪縛から解放された主人公は、同じような恋愛をしている人々に問いかける。
「このまま今の恋愛で時間を無駄にしていくつもり?みんなも両目で相手のことを見てみたら?」
そして、自分の恋愛はフルコースだと断言する。
このフルコースについて、私は2つの意味を解釈した。
1つ目の解釈は、これまでの恋愛をフルコースに例えているのではないかと考察した。
終わりのないモヤモヤと向き合いながら恋愛を続けていくなんて、デザートを目の前にいつまでも前菜を食べているようなもの。
しかし、主人公は人を好きになり、悩み、そして結論が出せた。
つまり、コース料理を完食できたのです。
結末はどうであれ、恋愛をフルコースで味わえたから、私は十分満足していますという意味合いに受け取れます。
そしてもう一つの考えは、将来の恋愛体験をフルコースの食事に例えているのではないかと思いました。
満足できない場合は、次の料理を試せばいいという考え方です。
「誰もがラーメンだけで満足するとは限らないでしょう?私は、ラーメンだけでは物足りないと感じたら、餃子やチャーハン、最後には杏仁豆腐まで注文しちゃいますよ?」
未来はわからないけれども、私は満足するつもりでフルコースを楽しむつもりです。
主人公は以前は消極的な恋愛に没頭していましたが、こんな考えを持てるほど前向きになったようにも感じます。
片目で見た恋
多分引きずるわ
主人公は吹っ切れたような言葉を口にしますが、過去の恋を完全に断ち切れたかどうかはまだ不透明です。
なぜなら、両目を見開く直前に、主人公は「諦めても多分しばらく引きずっちゃうだろうな…」と予測しているからです。
主人公が「フルコースで満足」という言葉を口にするのは、恐らく彼らの最大限の強がりなのかもしれません。
今後の恋愛をどう楽しむか
タイトルも歌詞も初めは理解しにくい「片目で異常に恋してる」。
しかし、何度も歌詞を繰り返し解釈するうちに、この歌の内容が恋愛に悩む人々にとって共感を呼ぶものであることに気づきました。
実際、この歌には恋愛にまつわる普遍的なテーマが詰まっているように感じます。
消極的な恋愛に悩んでいる人々にとって、この曲を通じて今後の恋愛をどう楽しむか考えるきっかけになるかもしれません。