NEEの「不革命前夜」には、何かが始まりそうな高揚感と、二人の関係が動き出さないもどかしさが重なっています。
相手の気持ちを知りたいのに、問いかけは答えにつながらない。新しい朝が近づいているようで、心は同じ夜にとどまっている。そんな状態として読むと、タイトルに付けられた「不」の一文字が、歌詞全体と結びついて見えてきます。
本記事では、変化を期待しながら踏み出せない二人の関係を、一つの解釈として考察します。あわせて、制作者の対談をもとに、アニメーションMVと楽曲の関係も紹介します。
「不革命前夜」の発売日と収録作品
「不革命前夜」は、2020年8月9日発売の楽曲で、作詞・作曲はくぅです。歌詞全体は、歌ネット「不革命前夜」で確認できます。
配信シングル『JINRUI』のリード曲として発表され、NEEが広く知られるきっかけになりました。その位置づけは、所属レーベルのビクター公式プロフィールでも紹介されています。
その後、2021年9月1日発売のメジャーデビューアルバム『NEE』にも収録されました。出典:Real Sound掲載のリリース情報
タイトル「不革命前夜」の「不」は何を意味するのか
革命前夜という言葉からは、今までの状況が大きく変わる直前の、落ち着かない空気を想像できます。そこに否定を思わせる「不」を付けたタイトルには、変化への期待と、その期待を打ち消す感覚が同居しています。
歌詞の中でも、二人の関係には不安や疑いがあり、終盤まで明確な決着は示されません。参照:歌ネット掲載歌詞
この点から、本記事ではタイトルを、変わりそうで変われない時間の表現として捉えます。
相手と話し合うことも、別れを決めることも、二人にとっては今までの関係を変える大きな出来事です。けれど、どちらへ進むにも、自分の本音を明かしたり、相手の答えを受け止めたりする必要があります。
その直前で立ち止まり続けるから、いつまでも前夜が終わらない。タイトルには、そうした心理的な足踏みを重ねて読むことができます。
別れの判断を相手に委ねる、冒頭の切実さ
冒頭の語り手は、その日の別れを決める役割を相手に渡しています。参照:歌ネット掲載歌詞
ここでの別れは、その日の別れの挨拶とも、関係そのものを終わらせることとも受け取れます。この幅があるため、何気ない会話のような始まりにも、不穏さが残ります。
自分から決められないのは、まだ一緒にいたいからかもしれません。あるいは、終わりを告げる側になることが怖いのかもしれません。いずれにしても、自分の気持ちだけでは次の一歩を選べない状態が感じられます。
相手に決めてもらえれば、少なくとも曖昧な時間には区切りがつく。その期待と、自分の望まない答えが返ってくる怖さが、一つの呼びかけの中にあるように思えます。
この決断のためらいを出発点にすると、後に続く問いかけや疑いも、二人の関係を確かめようとする試みとしてつながってきます。
愛情を確かめる言葉が、すれ違いを深くする
歌詞では、相手の意図を問いただす言葉や、理解しているのかを確かめる言葉が交わされます。その一方で、気づかないふりや嘘への疑いも描かれます。参照:歌ネット掲載歌詞
二人とも言葉を発しているのに、その言葉が関係を落ち着かせてくれない。ここに、この曲のもどかしさがあります。
近しい相手ほど、説明しなくてもわかってほしいと思うことがあります。しかし、その期待が外れたとき、尋ねる言葉には責める響きが混じりやすくなります。相手も身構えてしまえば、本当に知りたかった気持ちから、ますます遠ざかってしまうでしょう。
この曲の問いかけも、相手とつながるための言葉でありながら、互いの距離を浮かび上がらせているように読めます。
また、歌詞に現れる単純な愛の歌への言及も印象的です。恋の始まりには、わかりやすい言葉に自分たちを重ねられたのかもしれません。それが今は、疑いやためらいを抱えた関係をうまく説明してくれない。理想として思い描く恋と、実際に向き合う相手とのずれが感じられます。
夜明けが近づいても、心の夜が終わらない
歌詞には夜明けや朝焼けの景色が登場する一方、夜がまだ終わらないという感覚も置かれています。参照:歌ネット掲載歌詞
これを心情の表現として読むと、外の時間と、二人の内側の時間がずれているように見えます。
朝になれば、街も生活も次の日へ進んでいきます。しかし、言えなかった本音や、解決しなかった問題が、時刻に合わせて消えるわけではありません。周囲が動き始めるほど、自分たちだけが取り残されたように感じることもあるでしょう。
さらに曲の終わりでも、二人は言葉を出せない状態にあります。何も話していなかったわけではないのに、肝心なことは伝わらないままです。
この終わり方が、タイトルの前夜という感覚を残します。変化の可能性はある。それでも、関係を変える言葉にはまだたどり着けていない。その途中の時間に、聴き手も置かれるのです。
MVはどう作られた? こむぎこ2000が音から広げた物語
「不革命前夜」のアニメーションMVを手がけたのは、こむぎこ2000です。2021年の対談では、くぅが本人に直接連絡し、制作を依頼した経緯が語られています。出典:Real Sound・くぅ×こむぎこ2000対談
この対談で、こむぎこ2000は、主に音から映像を思い浮かべると説明しています。曲を聴いて浮かんだ断片的な場面をつなぎ、展開の複雑さに合わせて物語を膨らませていったそうです。くぅも、曲の説明を細かく伝えず、映像はこむぎこ2000に任せたと話しています。
この制作方法を踏まえると、MVは、音の動きや雰囲気を受け取った作家が、別の表現へと広げた作品として楽しめます。映像内の出来事を、そのまま歌詞の人物に起きた出来事だと断定する必要はありません。
歌詞からは、二人の関係をめぐる揺れが見えてくる。映像からは、曲の展開を物語として体験できる。同じ音楽が異なる想像を生み出しているところに、この組み合わせの面白さがあります。
映像は、NEE「不革命前夜」公式MVで確認できます。
聴きやすさの中に残る、不安な感触
くぅは制作者対談で、NEEの音楽では親しみやすさに、怖さや違和感を組み合わせ、そのバランスを大切にしていると説明しています。出典:Real Sound・制作者対談後半
この考え方は、「不革命前夜」の言葉を読むうえでも手がかりになります。何かが始まりそうな勢いがあるほど、二人が答えを出せないことが気にかかる。前へ進む気分と、その場から動けない感情が重なっているのです。
変わるきっかけを相手に求めながら、自分も本音を差し出せずにいる。その状態は、関係を失いたくない人の気持ちとして身近に感じられます。
「不革命前夜」というタイトルが心に残るのは、大きな変化の予感と、何も決められない夜の小さな痛みを、一つの言葉で抱えているからなのかもしれません。
NEEのほかの楽曲については、こちらの記事でも歌詞を考察しています。


