ELLEGARDENの「モンスター」は、2005年リリースのアルバム『RIOT ON THE GRILL』に収録されている楽曲で、激しいギターと共に疾走感あるメロディが印象的です。英語と日本語が混ざった歌詞は一見抽象的でありながら、深く読むと“自分自身との戦い”や“未熟さと向き合う姿勢”が浮かび上がってきます。
この記事では、ファンの間で語られる解釈や歌詞の流れを丁寧に分析。内面の葛藤や成長を描いたこの楽曲の本質に迫ります。
歌詞冒頭~「二つとない宝物を集めて」の象徴的イメージ
「二つとない宝物を集めて」は、冒頭から聴き手の想像力を刺激する印象的な一節です。「二つとない」という言葉には、唯一無二の価値が込められており、それを「集める」という動詞が続くことで、まるで自分にとってかけがえのないものを探し続ける旅を暗示しているようです。
これは、青春時代の不安定な心の中で“本当に大切なもの”を模索する姿とも取れます。この冒頭部分が楽曲全体の感情的な核となっており、以降の歌詞がこのテーマを軸に展開されていきます。
英語パートに込められた“学び”“無知”“時間”というテーマ
「You don’t know anything about me」や「I’ve learned that time will pass me by」など、英語詞が歌詞の中で繰り返されるのもELLEGARDENらしい特徴です。ここには、自己認識の未熟さや時間の流れに対する焦りが込められています。
「知らない」という言葉は、単なる他者への拒絶ではなく、自分自身のことすら分からない未熟さの象徴とも解釈できます。そして「時間が通り過ぎる」と学んだという一節は、立ち止まることの危うさと、前に進まねばならないという決意を滲ませています。
こうした英語パートは、心の中の混乱や成長の過程を抽象的かつ直接的に表現しており、邦楽リスナーに新鮮な解釈を提供してくれます。
「不確かなまま駆けてく」というフレーズに見る若さ・迷い・前進
この日本語のサビ部分は、多くのリスナーにとって感情を大きく揺さぶる箇所でしょう。「不確かなまま」という言葉が示すのは、“まだ答えは出ていない、けれど動き出す”という強い意志です。
ELLEGARDENの楽曲には、完成された強さよりも、“未完成でも進む”というリアリティが詰まっています。この一節もまた、迷いながらも前に進もうとする若者たちの背中をそっと押すような力を持っています。
ここにこそ、バンドの魅力が凝縮されているのです。
“モンスター”とは誰/何か? 内面の葛藤・成長と捉える解釈
タイトルにもなっている「モンスター」とは、具体的に何を指すのでしょうか? 歌詞を通して見えてくるのは、自分の中に潜む“弱さ”“未熟さ”“逃げたい気持ち”といった感情です。
“モンスター”は外部の敵ではなく、むしろ自分自身が最も向き合うべき存在。未熟な自分を責め、時に押し殺そうとするその内面の存在が「モンスター」と表現されているように感じられます。
このような内面の描写は、聴き手にとって非常にパーソナルで共感を呼び、リスナー自身の“モンスター”と向き合うきっかけにもなるでしょう。
アルバム『RIOT ON THE GRILL』における位置づけとバンドのメッセージ性
『RIOT ON THE GRILL』はELLEGARDENの代表作として高く評価されており、その中でも「モンスター」は非常に感情的なエネルギーに満ちた楽曲です。このアルバムは、全体を通して“個の葛藤と解放”をテーマにしており、「モンスター」はその象徴ともいえる存在です。
激しいサウンドと混在する英語・日本語の歌詞、そして内省的なメッセージは、当時の日本ロックシーンにおいて異彩を放っていました。ELLEGARDENが単なる青春バンドではなく、“生きる”というテーマを深く描くバンドであることが、この楽曲によって証明されています。
まとめ|モンスター=自分自身。聴く者の心を揺さぶるメッセージ
「モンスター」は、自分の中に潜む不安や葛藤と向き合い、未完成なままでも進み続ける若者の姿を描いた楽曲です。その歌詞は一見抽象的でありながら、聴くたびに新たな気づきを与えてくれる奥深さがあります。
英語と日本語を巧みに織り交ぜた表現、そして“モンスター”という象徴的な存在が、聴き手の心に静かに爪痕を残します。ELLEGARDENが提示するこの世界観に触れることで、私たちもまた自分自身の中の“モンスター”と向き合う勇気をもらえるのではないでしょうか。