【歌詞考察】緑黄色社会「Mela!」に込められた意味とは?燃え上がる感情と正義の衝動を読み解く

J-POPシーンにおいて、聴く人の背中をそっと押すようなエネルギーを放つ楽曲は数あれど、その中でも特に“今を生きる私たち”に寄り添う作品として語り継がれているのが、緑黄色社会の「Mela!」です。

疾走感あふれるサウンドと、耳に残る「メラメラ」という言葉。そして、歌詞全体に漂う焦燥と希望のコントラスト。この曲には、単なる応援ソングでは語りきれない深い人間模様が描かれています。

本記事では、この楽曲に込められたメッセージを丁寧に紐解いていきます。


「Mela!」の基本情報と歌詞が生まれた背景

「Mela!」は2020年にリリースされた、緑黄色社会の代表的な楽曲の一つです。作詞・作曲はボーカルの長屋晴子、編曲はバンド全体で手掛けられました。

この楽曲はTBS系テレビドラマ『G線上のあなたと私』の主題歌としても起用され、多くのリスナーの耳に届くこととなりました。タイトルの「Mela!」は、イタリア語で“リンゴ”を意味しますが、実際の楽曲では“メラメラと燃える感情”を表すオノマトペ的な使われ方がされています。

その名の通り、情熱・葛藤・衝動といった感情が、リズムに乗せて真っ直ぐに届けられる作品です。


歌詞の主人公 “僕” の葛藤と成長:弱さからヒーローへの歩み

歌詞冒頭、「僕じゃ頼りないかな」という一節が象徴するように、主人公は明確に“弱さ”を持った人物として描かれています。しかし、この弱さは単なる無力さではなく、「誰かの力になりたい」という願いからくるもの。

「眠っていた正義」という言葉からは、主人公の中にあった本当の想いが、ようやく目を覚まそうとしていることがわかります。社会や人間関係の中で自信を失い、感情を抑え込んできた人物が、衝動をきっかけにして自らの価値に気づいていく——そんな心の成長が描かれているのです。


“君”との関係性:信じること、預けることへの呼びかけ

この曲は、単に自己内省で終わるものではありません。特にサビの「信じてばかりの僕と 信じることが怖い君」という対比が示すように、主人公と“君”の関係性も物語の軸となっています。

“信じる”というテーマは、現代の人間関係において非常に重いものです。裏切られる怖さ、期待することへの不安。しかし、主人公は「荷物を少し預けてみては?」と、相手の心の重荷を共有しようと差し出しています。

これは一方的な救済ではなく、対等な立場での思いやり。相手を変えようとするのではなく、“君”が自分のままでいられるように支える姿勢が感じられます。


“正義”と “衝動” のモチーフ:言葉と行動の間で揺れる思い

「メラメラとたぎる正義」「衝動に駆られて」という表現は、この曲の中でも特に強いエネルギーを持っています。

ここでの“正義”とは、社会的な大義や道徳心というよりは、もっと個人的な「これだけは譲れない」という想い。それを押し殺してきた過去と、今にも爆発しそうな衝動の間で、主人公は揺れ動いています。

理屈では語れない感情に突き動かされる瞬間。その衝動こそが、抑圧された感情を解放し、人間らしさを取り戻す鍵になる——そう訴えかけているようにも感じられます。


この曲がリスナーに与えるメッセージと共感の要因

「Mela!」がこれほどまでに多くの人の心に響くのは、単なる励ましではなく、“迷いや葛藤を肯定する姿勢”にあるといえます。

すぐに前を向けない人、正義が何かわからなくなっている人、誰かに頼りたいけれど頼れない人——そうした現代の不安定な心を抱える人々にとって、この曲はまるで「それでもいいんだよ」と語りかける存在なのです。

また、抽象的ながらも感情に直結する言葉の選び方が秀逸で、聴くたびに新しい気づきがあるのも魅力の一つです。


総括

緑黄色社会の「Mela!」は、個人の内面と人との関係性、そして本能的な感情を丁寧に描いた楽曲です。弱さを抱えたままでも、信じることをやめない姿勢。それこそが、この歌詞が多くの人に届く理由なのかもしれません。

あなたが今、何かに迷っていたり、うまく感情を言葉にできないと感じていたら——ぜひこの曲をもう一度聴き直してみてください。きっとあなたの中にも、“メラメラ”と燃える何かが見つかるはずです。