1. 「アオ」に込められた“二回目の純粋さ”とは何か?
10-FEETの楽曲「アオ」において、最も印象的なキーワードのひとつが「二回目の純粋さ」です。これはボーカルのTAKUMAがインタビューなどでも言及しているように、「一度失われた純粋さを、自らの意思で取り戻そうとする心の在り方」を意味しています。
子どもの頃に持っていた無垢さや素直さは、成長とともに傷つき、曇ってしまうことがあります。しかし、「アオ」では、それをただ失ったものとして描くのではなく、「それでももう一度、信じてみよう」という意志を強く歌っています。この姿勢こそが“二回目の純粋さ”であり、聴く者の心に希望の光を灯します。
2. 嘘と優しさの関係性:歌詞に見る人間の複雑な感情
「アオ」の歌詞では、矛盾するように見える感情が繊細に表現されています。「信じたいから疑いました」や「守りたいから嘘をつきました」というフレーズが象徴するように、この楽曲は“優しさゆえの嘘”を肯定的に描いています。
一般的に「嘘」はネガティブに捉えられがちですが、「アオ」はその背景にある心情までを丁寧に掘り下げています。大切な誰かを守りたいという思いが、時に正直さではなく“嘘”という形で表れる。その複雑でリアルな人間の感情を、10-FEETは真正面から表現しています。
3. 青という色が象徴する感情と「アオ」の世界観
タイトルにもなっている「アオ」は、“色”としての「青」が持つ印象と密接に結びついています。青は冷たさや孤独、または透明感や誠実さを象徴する色ですが、「アオ」ではそれらのイメージが多層的に重ねられています。
特に、曲全体に漂う切なさや儚さは、まさに“青い感情”そのものです。色としての青を通じて、言葉だけでは表現しきれない内面的な葛藤や、希望と不安が交錯する心の景色が浮かび上がってきます。その抽象性が、リスナーそれぞれの感情と重なりやすい要因とも言えるでしょう。
4. 「アオ」と過去の楽曲とのつながり:TAKUMAのソングライティングの進化
10-FEETの楽曲には、常に「感情のリアルさ」がありますが、「アオ」はその中でも特に成熟した筆致を感じさせる一曲です。過去の代表曲「ヒトリセカイ」や「Fin」では、孤独や別れといったテーマが主軸にありましたが、「アオ」ではさらに一歩踏み込み、“それを乗り越える意志”が明確に描かれています。
これは、TAKUMAのソングライティングが年月とともに深化してきた証であり、単なる悲しみの吐露ではなく、そこから何を得て、どう生きるのかをリスナーに問いかけるような視点が加わっています。感情表現の豊かさと、構成の緻密さが見事に融合した一曲です。
5. リスナーの心に響く理由:共感を呼ぶ歌詞とメロディ
「アオ」が多くの人々に愛される理由のひとつは、その高い共感性にあります。複雑な感情を抱えながら生きる現代人にとって、「アオ」の歌詞はまるで自分の心を言語化してくれるような存在です。
また、感情を揺さぶるようなメロディと、心に残るサビの旋律も大きな魅力です。感情の起伏に寄り添うように展開する構成は、ただのバラードにとどまらず、ロックバンドとしての10-FEETらしい力強さと温かさを同時に感じさせます。
総括
「アオ」は、単なるラブソングやバラードではなく、人生の中で誰もが直面する「痛み」や「再生」に寄り添うような作品です。TAKUMAの表現力と、バンドとしての一体感が織りなすこの楽曲は、聴く者の心に深く残るメッセージを持っています。