SHISHAMO「なんとなく。」の歌詞が描く“報われない恋”の心情とは?
SHISHAMOの楽曲「なんとなく。」は、明確な理由のない“なんとなく”という曖昧な気持ちの中で揺れ動く恋心を描いた作品です。歌詞では、「本当は気づいている」「それでも嫌われたくない」という、どこか自己矛盾を孕んだ想いがにじみ出ています。
この楽曲の特徴は、恋愛における「わかっているけどやめられない」心理を丁寧にすくい取っている点にあります。報われないことを薄々感じつつも、相手の言動に一喜一憂してしまう、そんな切ない感情が胸に刺さります。
物語として明確な起承転結があるわけではなく、ただひたすら「好きだけどつらい」「嫌われたくないけど近づけない」という心のグラデーションが続く構成は、むしろリアルな恋愛のあり方を浮き彫りにしています。
歌詞に込められた“なんとなく”の違和感と恋愛のリアル
タイトルにもなっている「なんとなく。」という言葉は、一見するとあまり意味のないような表現に思えますが、この楽曲では核心に迫るキーワードとして機能しています。「なんとなくわかる」「なんとなく寂しい」「なんとなくやるせない」など、日常の中で感じる微細な感情を象徴するこの言葉が、恋愛のもどかしさを浮き彫りにします。
また、この“なんとなく”という言葉は、恋愛関係が曖昧な状態であることを暗示しています。確信を持てないまま関係を続けることへの不安や、自分でも説明のつかない感情に支配されることへのもどかしさが、歌詞の随所に込められています。
曖昧であるがゆえにリアル。そのリアリティが、多くのリスナーに共感される理由の一つとなっています。
宮崎朝子のインタビューから読み解く「なんとなく。」の制作背景
SHISHAMOのボーカル兼ギタリスト・宮崎朝子さんは、数々のインタビューで自身の楽曲制作について語っています。中でも「なんとなく。」に関しては、「自分の中の“女の子っぽさ”を正直に出した」と話しており、女性目線ならではの心の機微が色濃く反映されています。
また、楽曲制作時の感情については、「一歩踏み出せないけど、諦めきれない恋のもどかしさ」をテーマにしていたとも語っており、その言葉通り、歌詞には感情の揺れが丁寧に描かれています。
このように、作り手である宮崎さん自身のリアルな経験や心の動きが、楽曲の核心に大きく影響していることは間違いありません。だからこそ、聞き手にもその感情がまっすぐ伝わるのでしょう。
リリックビデオに見る“ダメな恋愛”のビジュアル表現
「なんとなく。」のリリックビデオでは、手描き風のアニメーションと文字がシンプルに構成され、主人公の孤独や切なさが視覚的にも強調されています。特に印象的なのは、表情が読み取りにくい女の子のキャラクターが、日常の中で無表情のまま過ごす様子。これは、歌詞の中にある“感情を押し殺してでも関係を続けたい”という苦しさを象徴しています。
色調は淡く、どこかフィルムのような質感で、まるで記憶の中にある恋を回想しているかのような演出がされています。また、時折見せる赤やピンクなどの暖色系の強調は、主人公の感情の揺らぎをビジュアルで表現しており、視聴者の感情移入を誘います。
歌詞と映像が呼応することで、「なんとなく。」の世界観がより立体的に伝わる仕組みになっているのです。
「なんとなく。」が共感を呼ぶ理由とSHISHAMOの魅力
「なんとなく。」が多くの人に共感される理由は、恋愛における“明確ではない感情”に焦点を当てているからです。好きだけど苦しい、近づきたいけど怖い、といった恋の曖昧な感情は、誰しも一度は経験したことがあるはず。SHISHAMOはそうした“ありふれているけれど言葉にしにくい感情”を音楽に変える力を持っています。
また、等身大の視点で描かれる歌詞と、感情をストレートに伝えるサウンドが、彼女たちの楽曲の最大の魅力です。特別な誰かの物語ではなく、“私自身の物語”として響くことが、多くのリスナーを惹きつけてやまない理由でしょう。
「なんとなく。」という楽曲は、その集大成ともいえる作品。SHISHAMOが描く恋愛のリアルさは、今後も多くの人々の心を捉えていくに違いありません。