「OH HEY」とは?羊文学とLÜCYのコラボ背景を紐解く
2022年に発表された「OH HEY」は、日本のオルタナティブ・ロックバンド羊文学と台湾のシンガーソングライターLÜCYによるコラボレーション楽曲です。この曲は、LÜCYがInstagramを通じて羊文学にメッセージを送ったことがきっかけで始まったプロジェクトで、パンデミック下のリモート環境で制作が進められました。
羊文学のボーカル・塩塚モエカとLÜCYは直接会うことなくオンラインでのやり取りを重ねながら、互いの言語と感性を融合させた楽曲を完成させました。国境や言語の壁を越えて生まれた「OH HEY」は、まさに現代的な制作スタイルの象徴とも言えます。
歌詞に込められた“愛”の意味—友情や家族まで広がる感情の深み
「OH HEY」の歌詞では、明確に“恋愛”という言葉が使われているわけではありませんが、全体を通じて“誰かを想う気持ち”が丁寧に描かれています。LÜCYが歌う英語パートでは「何も知らないけれど、ただあなたに会いたい」というような、純粋で曖昧な愛の形が示され、塩塚モエカが歌う日本語パートでは「私はまた今日もあなたの夢を見た」といった切なさと懐かしさがにじみ出ます。
このように、歌詞は恋愛だけでなく友情や家族、過去に対するノスタルジーといった複雑な感情を織り交ぜながら、“愛”というテーマを広く捉えて表現しています。リスナーは自身の経験と重ね合わせながら、多様な解釈を楽しめる作品となっています。
英日混合歌詞の構造分析—言語が生むエモーショナルな効果
「OH HEY」の特徴のひとつは、英語と日本語が自然に混在した歌詞構成にあります。LÜCYが歌う英語パートは、柔らかく感情を包み込むような言葉遣いが特徴であり、一方の塩塚モエカによる日本語パートは、情緒的でどこか内省的な印象を与えます。
この言語の切り替えが曲の流れに緩急を与えると同時に、リスナーの感情にも静かな波を起こします。言語を超えた“心の声”のようなものが感じられ、双方のボーカルが絶妙に溶け合うことで、楽曲に奥行きと多様性が加わっています。
サウンドと歌詞の融合—オルタナティブ・ギターとメロウな歌声が描く世界
サウンド面では、羊文学らしいオルタナティブ・ロックの骨格に、シンセサイザーの柔らかな音色が加わり、LÜCYの透明感のある声と絶妙なコントラストを生み出しています。特に、間奏部分における歪んだギターとLÜCYのボーカルの絡みは、聴く者の感情を揺さぶります。
また、楽曲後半の盛り上がりは、感情の爆発にも似たクライマックスを演出しており、歌詞のメッセージとサウンドが一体となって深い没入感を与えています。羊文学のファンはもちろん、初めて聴くリスナーにも強い印象を残す一曲です。
リモート制作で生まれた共感—Instagram発コラボの舞台裏
この曲の制作は、コロナ禍における制約の中で実現しました。対面でのセッションが難しい状況にもかかわらず、羊文学とLÜCYはSNSを介して音楽的な共感を育み、メールやファイルのやり取りを通じて制作を進めました。
塩塚モエカはインタビューで「直接会ったことがないとは思えないくらい、LÜCYとの距離感が自然だった」と語っており、音楽という共通言語が2人の距離を一気に縮めたことが伝わってきます。
このような背景を知ることで、「OH HEY」に込められた誠実な感情や、離れていても伝わる想いの大切さをより深く感じることができるでしょう。