【グラデーション/SUPER BEAVER】歌詞の意味を考察、解釈する。

2023年4月1日に先行配信された新曲『グラデーション』は、大人気ロックバンド・SUPER BEAVER(スーパービーバー)による作品であり、4月19日にはシングルCDとして正式にリリースされました。
また、この曲は映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の主題歌としても採用されています。
今回は、『グラデーション』の歌詞について考察してみましょう。

東京リベンジャーズとは?

新たな楽曲『グラデーション』は、人気バンドSUPER BEAVER(通称・ビーバー)によって制作され、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』の主題歌として独自に作詞作曲されました。
この曲は柳沢亮太によって手がけられました。

『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』は、和久井健作の漫画『東京卍リベンジャーズ』を原作とした実写映画作品です。

この映画は、1作目の続編として2021年に公開され、物語は「血のハロウィン」というエピソードを前編「運命」と後編「決戦」に分けて描かれています。

「決戦」では、主人公であるタケミチが所属する暴走族「東京卍會」の崩壊をもたらす壮絶な戦いである「血のハロウィン」と呼ばれる事件が舞台となります。

タケミチは、元カノであるヒナタが凶悪化した東京卍會によって殺されるという最悪の結末を変えるため、過去にタイムリープします。

前編「運命」では、タイムリープしたタケミチがなぜ「血のハロウィン」が起こってしまったのかを知ることになります。

物語の中で明らかになるのは、かつての仲間たちの絆を引き裂いた悲しい事件の存在です。

過去の悲劇と次第に崩れていく仲間たちとの絆が交錯する様子が描かれています。

不器用な若者たちの想い

映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』のストーリーに基づき、『グラデーション』の歌詞を考察していきましょう。

嬉しそうな顔が見たいよ
助けたいし 時には許したい
声荒げて 責めても仕方ない
ひどく傷付けるなら 堪えたい

『グラデーション』の歌詞は、「嬉しそうな顔が見たいよ」という穏やかなフレーズで始まります。

『東京卍リベンジャーズ』という作品では、東京卍會が凶暴化する前の時代、彼らは互いに命をかけて仲間を守り合う最高のチームでした。

この柔らかな歌詞は、東京卍會のメンバーそれぞれの思いやりを表現していると捉えることができます。

また、物語が暴走族の世界を舞台にしているため、激しい怒号や殴り合いのシーンが多く描かれます。
そのような背景から、次の歌詞「声荒げて 責めても仕方ない ひどく傷付けるなら 堪えたい」という一節が強く響きます。

『東京卍リベンジャーズ』の登場人物たちは、衝動的で荒々しく、器用ではない若者たちですが、彼らは実は仲間想いなのです。

この歌詞は、彼らの優しい側面を表現しており、物語のテーマとも合致していると考えられます。

そんな気持ちは嘘ではなくて
でも気持ちはひとつでもなくて
行き場を失くした憤りに
溺れそうになったとき
掴むのは 信念か 身勝手か
思いやりか 自己犠牲か
僕ら笑い合いたいだけ

「嬉しそうな顔が見たいよ」「ひどく傷つけるなら 堪えたい」という歌詞だけではなく、それだけではない感情が存在しています。

この歌詞は、時に憎しみや恨み、憤りを相手に抱くこともあることを表現しています。
それは、血のハロウィンと呼ばれる壮絶な戦いがかつての親友同士の間で繰り広げられることを考慮すると、「行き場を失った憤り」という歌詞が映画のストーリーと完全に一致しています。

最後の「僕ら笑い合いたいだけ」という歌詞の切なさは、心を打つものです。

お互いに想いを寄せ合っているはずなのに、複雑な感情が入り組み、人間関係が困難になることの苦しさを感じると、心が重くなります。

「ごめんね」と「ありがとう」

続く歌詞について考察していきましょう。

それは
ごめんねに込めた ありがとうのよう
ありがとうに込めた ごめんねのよう

「ごめんね」と「ありがとう」という二つの感情が存在する場合でも、必ずしも両方を伝えることはできないかもしれません。

「ごめんね」は言えるけれども、「ありがとう」は照れくさくて言えない場合もありますし、相手に傷つけられたことからくる、「ありがとう」と言える立場にない場合もあります。

逆に、「ありがとう」は言えるけれども、自尊心が邪魔して「ごめんね」が言えない場合もあります。

相手に「謝らないで」と言われて、心の中に「ごめんね」と思いながらも言葉にできない場合もあります。

環境や精神状態によって、心情をそのまま言葉にできないこともあるのです。

そんな時、私たちは別の言葉でその思いを伝えようとするのかもしれませんね。

『東京卍リベンジャーズ』では、登場人物たちのさまざまな思いが交錯します。

「助けてくれてありがとう、助けてもらえなくてごめんね」

「助けられなくてごめんね、愛してくれてありがとう」

「心配させてごめんね、心配してくれてありがとう」

「傷つけてごめんね、許してくれてありがとう」

「与えてくれてありがとう、返せなくてごめんね」

タケミチとヒナタ、タケミチとマイキー、マイキーと一虎、場地と一虎、場地と千冬…それぞれの関係の中に、それぞれの「ごめんね」と「ありがとう」が存在します。

時には優しく、時には残酷な思いが存在し、また、その思いをそのまま言葉にできない不器用さや苦悩があることを、歌詞は巧みに表現していると考察できます。

正義と悪は表裏一体

続く歌詞の中で、「グラデーション」という言葉が重要な役割を果たしています。

連なった本当で グラデーションになった
曖昧の中から 愛を見つけ出せたなら

「ごめんね」という言葉には、実は「ありがとう」という感謝の気持ちも含まれていることがありますし、逆に「ありがとう」という言葉の中にも謝罪の気持ちが込められていることもあります。
私たちの世界では、見えるものだけが全てではありません。

人の感情は、グラデーションのようにさまざまな色合いを持っており、その中には曖昧さも含まれています。
しかし、その曖昧な部分も含めて、それが「本当の感情」と言えるのです。

白黒をつけようとすると、曖昧さのある部分が無視され、「本当の感情」から遠ざかってしまうこともあると思います。

白黒で区別できない曖昧な部分こそが「本当の感情」であり、『東京卍リベンジャーズ』と『グラデーション』という楽曲は、そんな曖昧さを丁寧に描いている点で共通していると言えるでしょう。

言葉や行動がどれほど暴力的であっても、その中に「本当の感情」に対する愛情が見えるからこそ、『東京卍リベンジャーズ』は多くの人々に愛される作品となっているのだと思います。

私たちは曖昧な部分を避けずに、彼らの不器用な愛情を見つけ出し、受け入れたいと思います。

白黒 善悪 正解 不正解
極端な取捨選択だけじゃない
どれもこれも嘘ではなくて
誰も聖人君子じゃなくて

自分にとっての正解を突き詰めると、周りの人からは不正解に映ることがあるかもしれません。
また、誰かにとっての正義が、他の誰かにとっては悪意になることもあります。

登場人物たちが抱く思いや、それぞれの信じるものについて考えると、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』と主題歌『グラデーション』を一緒に楽しむことで、物語がさらに深みを増すでしょう。