1. 『Home』の歌詞に込められた家族への想いとメッセージ
MY FIRST STORYの楽曲『Home』は、そのタイトルが示す通り「家」や「家族」に対する強い想いが込められた楽曲です。歌詞を読み解くと、単なる懐かしさや感傷だけではなく、深い悲しみや孤独、そして未練のような感情が綴られていることがわかります。
「記憶は残らず 消えてしまったの？」という冒頭の一節からは、幼少期の記憶が断片的であること、それに対する喪失感が表現されています。また、「生まれ変われたら幸せになると 試してみたのに楽になれず」というラインでは、自身の存在意義に対する葛藤や絶望感が垣間見えます。
しかし、これらのネガティブな感情の中に、「今 越えたくて」といった前向きな意志も見え隠れし、家族の記憶と対峙することで新たな自分に向き合おうとする姿勢も感じられます。
2. Hiroの実体験と『Home』の背景にある家族関係
『Home』という楽曲を理解するうえで欠かせないのが、ボーカル・Hiroのパーソナルな背景です。彼は、ONE OK ROCKのTakaを兄に持ち、森進一・森昌子という著名な両親のもとに生まれました。しかし、両親の離婚や家庭環境の変化は、彼の人格形成や音楽的表現に強い影響を与えたと考えられています。
Hiro自身がライブMCで「家族がバラバラになるのに何かをするには僕は幼すぎました」と語ったように、彼は幼少期に無力感を味わった経験があります。これが『Home』の歌詞における「記憶の断絶」や「痛み」として表れているのです。
このような背景を踏まえると、『Home』はただの家族愛の表現ではなく、喪失と再生の記録とも受け取れます。過去の自分との対話、そして家族への想いを音楽に昇華するという彼なりの方法が、この楽曲に込められているのです。
3. 『Home』のライブパフォーマンスとファンの反響
『Home』はアルバム『ANTITHESE』の中でも特に感情的な楽曲として知られていますが、ライブではあまり頻繁に演奏されていません。とくに印象的なのは、日本武道館公演で披露されたパフォーマンスで、多くのファンにとって記憶に残るシーンとなりました。
また、YouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」で披露されたアコースティックバージョンも話題となりました。シンプルな編成で演奏されたことにより、歌詞の持つ意味や感情がよりストレートに伝わり、視聴者からは「涙が出た」「心に響いた」といった反響が寄せられています。
このように、ライブや映像を通じて『Home』のメッセージが伝わっていくことで、リスナーはより深く歌詞の意味に共感し、楽曲への思い入れを深めていくのです。
4. 『Home』の歌詞に見る自己肯定と再生のテーマ
『Home』の歌詞は、過去の痛みを描きつつも、そこに留まることなく未来に向かおうとする意志が見えます。たとえば「僕は僕のままで 何が悪いの？」という一節は、過去に否定されてきた自分自身を肯定しようとする強い姿勢の表れです。
さらに、「僕がいる意味を知るために」「今 越えたくて」など、再生への意志が込められた言葉が続きます。これは、単なる後悔や懺悔ではなく、自分の人生を取り戻すための闘いともいえるでしょう。
MY FIRST STORYの音楽には、絶望を乗り越える力強さが一貫して存在していますが、『Home』はその中でも特にパーソナルな感情とリンクしているため、多くの人の心に深く刺さるのです。
5. 『Home』が示すMY FIRST STORYの音楽的進化と意義
『Home』はバンドの代表的なロックサウンドとは異なり、内省的でバラード調のアレンジが施されています。このような構成は、MY FIRST STORYの音楽的な幅の広がりを象徴しており、単なる感情の爆発だけではなく、静けさの中に潜む激情を表現する力を見せつけました。
アルバム『ANTITHESE』全体においても、『Home』は物語性や構成上の「核心」となる位置づけにあります。バンドの音楽性が成熟していく中で、こうした内面に迫る楽曲が果たす役割は大きく、ファンにとっても「聴き直すたびに意味が深まる」存在となっています。
このように、『Home』はMY FIRST STORYにとって挑戦的でありながら、確実に新たな地平を切り開いた一曲といえるでしょう。
