【歌詞考察】10-FEET『月 ~sound jammer せやな~』に込められた孤独と再生のメッセージとは?

10-FEETの楽曲『月 ~sound jammer せやな~』は、そのタイトルからしてミステリアスな雰囲気を漂わせています。夜の象徴である「月」、そして「sound jammer」「せやな」といった個性的な言葉が並ぶこの楽曲は、単なるロックナンバーにとどまらず、内面世界や感情の機微を繊細に描き出しています。

本記事では、歌詞の意味を深く掘り下げ、10-FEETがこの楽曲を通して何を伝えようとしているのか、音楽性や制作背景とあわせて読み解いていきます。


歌詞の“月”というモチーフが示すものとは?

タイトルにも登場する「月」は、古来より“孤独”“静寂”“夜”を象徴する存在として詩や歌に使われてきました。『月 ~sound jammer せやな~』でも、歌詞の中で「月」が暗い夜空にぽつんと浮かぶ存在として描かれ、その周囲の静けさが主人公の孤独とシンクロしています。

また、月は「満ち欠ける存在」であり、再生や変化の象徴でもあります。10-FEETが月をモチーフに選んだのは、変わっていく感情、忘れたくても消えない記憶、そしてその先にある“癒し”や“希望”といったテーマを託すためだったとも考えられます。


「~sound jammer せやな~」という副題と関西弁“せやな”の意味合い

この楽曲で特にユニークなのが、副題に含まれる「sound jammer せやな」という言葉です。

「sound jammer」は直訳すれば“音を妨害する装置”。ここでは“音=過去の声・記憶”と捉えることもでき、それをかき消したいという心情がにじみ出ています。一方で「せやな」という関西弁は、肯定・共感のニュアンスを含む柔らかい響きを持っています。

「消したい音もあるけど、それも自分やねん、せやな」といった心の葛藤と受容を、この副題一つで見事に表現しているのではないでしょうか。TAKUMA(Vo&G)の関西出身らしい言葉のチョイスが光るポイントです。


歌詞の中で繰り返される「消す」「忘れる」―再生・解放のプロセスを読む

歌詞では「消したくて」「忘れたくて」といった言葉が何度も登場します。これは過去の痛みや後悔を振り払いたいという強い願望の表れです。しかし、それと同時に「それでも残るもの」への諦めや受け入れも感じられます。

10-FEETはこの楽曲を通して、「無理に忘れようとしなくてもいい」「苦しい記憶もやがて月のように形を変えていく」といったメッセージを発信しているように思えます。歌詞の終盤にかけては、どこか前向きな印象も漂い、聴く者に小さな希望の光を残します。


アップテンポ×夜のメロディ構成から見る10‑FEETの挑戦と変化

楽曲はアップテンポなバンドサウンドでありながら、どこか夜を思わせるメロディ構成となっています。リズムの疾走感と裏腹に、旋律やコード進行には切なさが宿っており、そのギャップがリスナーの感情をより引き立たせます。

このような構成は、激しいエネルギーを持ちながらも内面に繊細さを抱える10-FEETらしい音楽的アプローチと言えます。彼らが“月”という静的なテーマを扱う中で、あえて激しいビートと組み合わせたことは、音楽的にも新たな挑戦だったのではないでしょうか。


バンド自身のインタビューから紐解く制作意図とリスナーへのメッセージ

10-FEETはこれまでのインタビューなどで、「自分の弱さや葛藤を、音楽に正直に乗せたい」と何度も語っています。この『月 ~sound jammer せやな~』においても、まさにそうした“自分との向き合い”が色濃く反映されています。

また、ファンへのメッセージとして「苦しいときは無理に前を向かなくてもいい」「音楽の中で心を解放してくれたらうれしい」といった言葉も残しており、この楽曲にもそうした思いが込められていると考えられます。


まとめ:『月』が映し出すのは、誰もが持つ“夜”と“再生”のストーリー

10-FEETの『月 ~sound jammer せやな~』は、歌詞の深い意味、音楽性、タイトルのユニークさすべてが絡み合った、非常に多層的な楽曲です。

誰もが持つ過去の痛みや忘れたい記憶を、“月”という普遍的なモチーフで包み込み、優しく肯定してくれるこの曲は、多くのリスナーにとっての心の灯りになるのではないでしょうか。