【STAY TUNE/Suchmos】歌詞の意味を考察、解釈する。

Suchmosの楽曲「STAY TUNE」は、その歌詞の奥深さに注目してみる価値があります。
この曲は、多くの人に愛されるSuchmosの代表曲であり、じっくりと聴いてみると、意外な洞察やメッセージが浮かび上がってくることでしょう。

歌詞の冒頭、「ステイチューン二ントーキョーフライデナーイ yeah」というフレーズが耳に飛び込んできます。
音楽だけを聴いていると、まるで「都心の夜の首都高」を駆け抜けるような感覚を想起させます。
これは、車のCMなどでもお馴染みのシチュエーションですが、歌詞の内容とは意外にも対照的です。
このギャップが聴衆を引き込むポイントであり、ジャミロクワイの楽曲が思い浮かぶかもしれませんが、実際にはSuchmosの独自のアプローチが際立っています。

「STAY TUNE」の歌詞は、作詞家YONCEとHSUによる共作です。
特にYONCEの影響が色濃く表れており、歌詞の奥深さを探求する際には彼の要素に着目することが重要です。

Stay tune in 東京 Friday night 

「STAY TUNE」は、一見すると東京の金曜夜にチューニングするようなメッセージを伝えているように思えますが、実際にはその裏に深い背景があります。
この曲は、元々はラジオ番組のジングル用に制作された短い楽曲でした(アンジャッシュの渡部が司会を務める「GOLD RUSH」などで使用されていたと思われます)。
その後、「STAY TUNE」のメロディとアレンジが気に入られて、「これはいい曲だ」という評価を受けたため、本格的な楽曲として制作されることになりました。
ちなみに、その過程でジングルに使われていた部分は、「Stay tune in~」というフレーズで、オリジナルのジングルとはテンポや音程が異なるものでした。

Oh Good time 癒えない like The “Dead rising” soon  

「デッドライジング」というゲームには、意外なことに”The”と空白が付いていることをご存知でしょうか?
私も以前までは気づかなかったのですが、このゲームはゾンビをテーマにした興味深い作品なのです。

「デッドライジング」は、その名の通りゾンビを題材にしたゲームであり、プレイヤーを独特の世界観へと引き込みます。
歌詞に登場する「もうすぐつかの間の酔いで満たされないゾンビみたいな奴らがやってくる金曜夜の東京、なんて素敵な時間!(皮肉)」というフレーズは、このゲームの雰囲気とリンクしているように感じられます。

どこを探しても見つからない
俺の目をかわす Good girl

こちらは、素敵な女性を見つけることを考えています。
「魅力的な人」は、私の視線を避けてどこかに隠れてしまったかのようで、どこを捜しても見当たりません。

風船ばっか見飽きたよ
うんざりだもう

皆、似たようなバルーンばかりです(鮮やかな服を身に纏い、軽やかに浮かぶが、その内側は虚無?)。
しかしそんなものは必要ありません。

襲ってくる 屍の Bad girl
偶然なんか待てないよ

電車に乗った際、まるでゾンビのような女性が眠り込んで、私に寄りかかってくることがあります。
もう本当に嫌気が差します。
偶然の出会いなんて、もはや待つ余裕はありません。

俺の目をかわすGood girl/襲ってくる屍の Bad girl 

この対比や、音楽的な要素だけでなく言葉選びにも素晴らしいセンスが感じられます。
また、英語が巧みに挿入されている点も魅力のひとつです。

I always searching for a piece so long time 

訳としては、「私はずっと、いつも、長い間ずっと、ずっと “a piece” を見つけているような気がしていました。」

最近気付いたのですが、これまでずっと “peace” だと思って聴いていました。
しかしながら、歌詞をよく見ると、実際には “piece” だったのです。
「peace」の綴り間違いの可能性も否定できませんし、”a piece of ~” だとしたら、「片方の、片割れ」という意味もあるのですが、この場面では “a piece” だけで “of ~” は存在しません。
「peace」に “a” を付けるのも変だし、おそらく “a piece of ~” の “of ~” が音的にはまらず、”a piece” になったのだと思います。

従って、「a piece」は「私たちは二人でひとつなんだ、と感じさせるような、運命の相手」という意味合いを持つと考えます。
そのため、”good girl” についても、ここでは「良家の子女」という意味ではなく、むしろ YONCE(HSU)的に「素晴らしい子」という意味合いがあるのかもしれません。

ブランド着てるやつ もう Good night
Mで待ってるやつ もう Good night
頭だけ良いやつ もう Good night
広くて浅いやつ もう Good night

これは本当に素晴らしいですね。
「高級ブランドの服を身に着けている人、Mで待っている人、頭脳明晰な人、幅広い知識を持つけれど深く突っ込まない人、皆、さっさと帰って休んでください。」
頭だけ優れている人は、誰が見ても嫌な人だと感じることがあるかもしれませんが、高級ブランドを身に着けている人や表面的な知識を持つ人々に対しても、Good Nightの気持ちを送っているようです。
その中で、派手に目立つ人々に対する反感が見受けられます。

「Mで待っている人」というフレーズは、様々な解釈ができます。
マクドナルドやモアイ、漫画喫茶、あるいはSとMのMなど、いくつかの可能性が考えられますが、Suchmosはマクドナルドを「違う」と明確に示していますね。
ただし、これが本当の意図なのかは明確ではありません。
また、「ここあんまり気にしないで」とも言っていました。

一方で、アディダスはOKとされているようです。
おそらく、ブランドの服を身に着けること自体は問題ではなく、その人自体がその服を長く愛用していることを重要視している可能性があります。
流行に飛びつくのではなく、個々のスタイルやアイデンティティに合った服装を選ぶ姿勢が、Suchmosの評価を得るポイントなのかもしれません。

23 Haunted now the time
“SAT” Scramble comin’

こちらも再び東京に関する内容です。
おそらく「現在、金曜日の23時、お化けのような時間がやってきました。土曜日の渋谷のスクランブル交差点は、ありんこのような群れになることがもうすぐです。」
かなりの不満が感じられますね。

Somebody to love 澄ましても見つからない

こちらはまた、素敵な女性を見つけることを考えています。
しかし、

Somebody to love

引用符はついていませんが、クイーンの「愛にすべてを」のことを指しているのでしょうか。

YONCEの歌唱スタイルも、この部分ではまるで祈りを捧げているかのような感覚を醸し出しており、ミュージックビデオでも再生中の2周目でYONCEが手を交差させて胸元に触れています。
毎日、厳しい労働をこなし、家に帰りひざまずいて神に祈りを捧げる中で、虐げられ、軽視され、苦しみから逃れることができない現実に直面しています。
この歌は、労働者たちの心の中で響く声を聴かせています。
「神よ、私は何をしたのでしょうか。どうか、私に愛すべき人を教えてください」という、彼らの叫びが歌に込められています。

この部分はまるでQUEENの「Somebody to Love」と重なるようです。
どれほど注意深く耳を傾けても、彼女の足音すらも意図的に聞こえないように感じられます。
代わりに、どこかで聞いたような浅い名言だけが耳に届きます。
この状況に対して、どうしたら良いのか分からなくなります。

ここでは、女性を見つけるために視覚だけでなく聴覚も駆使している点が興味深いです。
YONCE(HSU)は音楽を愛しており、外見だけでなく内面も重要視していることを示しています。
また、QUEENの「Somebody to Love」を持ち出すことで、単なる「いい女性がいない」という話にとどまらず、社会的なメッセージを込めて締めくくっています。
素晴らしい手腕です。

Sexy な Mouth をほころばせて
Peace な話を聞かせて
Cool な視線で見つめて
一度だけ俺を試して

曲が転調して、シーンがわずかに変わり、具体的に特定の相手と向き合っている様子が描かれています。
相手はセクシーでクールでありつつ、内面にも深みがあり、平穏なことを考えているような女性です。
彼女の話を聞かせてもらいたいと思うほど、魅力的なお姉さんです。
そのような憧れのお姉さんと一緒に過ごす中で、一度自分を試してみないかという誘いがあります。
この部分は「待てないよ」と前の部分と繋がっており、風船のように軽やかな女の子には運命の相手を本気で探しているとしながらも、それに対してはさらっと断ってしまう様子が描かれています。
しかしながら、あまりにも魅力的な相手に出会えず、男としての焦りが次第に高まり、身近な場所に魅力的なお姉さんがいたら、ちょっと自分を試してみるという男性らしい欲望が表れています。
この要素が一風変わった面白さを醸し出しています。

歌詞の条件で考えると、セクシーでクールな外見、そして内面に平穏な要素を持つ女性として、椎名林檎が思い浮かびます。
林檎は過去にはエキセントリックな楽曲を歌っていましたが(現在でも少女らしい側面を感じさせることがあります)、最近は平穏な歌詞を歌うこともあり、「ありあまる富」などの曲は聴く人々に感動を与えることもあります。
ただし、YONCE(HSU)が具体的にどのようなイメージを抱いているかはわかりませんが、この部分では椎名林檎のようなパブリックイメージを考えておくのも一つのアプローチかもしれません。

まとめ

この曲には、いくつかの要素が含まれていると感じます。
まず、東京の金曜夜に現れる大勢の酔っ払いに皮肉を込めている箇所があります。
また、都会の中でちゃらちゃらと振る舞う人々に対する嫌悪感も表現されています。
さらに、労働者の悲哀や叫びも歌詞に込められているかもしれません(「Somebody to Love」の要素を含む場合)。

曲の中では、真剣に愛せる相手を見つける努力が描かれていますが、なかなか出会えない苛立ちも感じられます。
そんな中で、「待てないよ」という気持ちが織り交ぜられており、憧れのお姉さんを試すことを考えています(男性らしい欲望)。
セクシーでクールな女性との出会いが描かれており、その相手に興味を持ち、試してみることを示唆しています。

この歌詞の内容には情報が凝縮されており、特に「もうGood Night」というキラーフレーズが印象的です。
Suchmosは音楽を重視しているため、歌詞が一見単語の羅列のように見えるかもしれませんが、実際には多くの要素が組み込まれています。

また、Mireeの例を挙げると、この曲も女性を探すというテーマを持ちつつ、実は深い意味が込められていることが伺えます。
Mireeは男性らしい欲望を強調する歌詞が特徴的であり、STAY TUNEは運命の相手を求める気持ちが含まれているようです。
これがYONCEの独自の要素かもしれません。

ジャミロクワイの「Virtual Insanity」も、カッコいい曲調とテクノロジー批判の歌詞が組み合わさっており、同様に「STAY TUNE」も複数の意味を持つ歌詞とカッコいい音楽が結びついている点が興味深いです。
こうした類似点が20年前と現在の音楽シーンの共通点を示していると感じます。