【歌詞解釈】sumika「雨天決行」に込められた覚悟と再出発のメッセージを読み解く

① 「雨天決行」の背景と制作史：sumika前身バンドとのつながり

「雨天決行」は、sumikaが2013年に発表した1stミニアルバム『新世界オリハルコン』に収録された楽曲です。この曲は、sumikaとしての初期の代表曲であるだけでなく、実はsumikaの前身バンド「banbi」時代から演奏されていた曲でもあります。

banbiは解散を経てsumikaへと生まれ変わりましたが、「雨天決行」はその変遷の中でもなお歌い継がれてきた、彼らにとって重要な楽曲です。変わりゆくバンドの体制や環境の中でも、この曲だけは“変わらずにある”という存在であり、sumikaの原点とも言えるのです。

制作当時、メンバーはまだ不安定な状況にあり、自分たちの音楽が本当に求められているのか、手探りの状態でした。そんな中で生まれたこの曲は、言わば「何があっても前へ進む」という強い決意を象徴しており、その後のsumikaの活動にも通じる精神的な支柱となっています。

タイトルにある「雨天決行」は、悪天候であっても計画を強行するという意味を持ちます。これは、そのまま歌詞のテーマと直結しており、主人公の内面の“覚悟”を象徴しています。

「雨が降ろうが槍が降ろうがやめはしない」

この一節に表れるのは、周囲の反対や困難な状況に負けず、自分の信じた道を歩み続けようとする強い意思です。現実世界では、時に他人の声や社会的な常識が行動を制限することもありますが、「雨天決行」の主人公は、それらを意に介さず進み続けます。

このような自己決定的な姿勢は、sumika自身の活動スタイルや、音楽に対する誠実な向き合い方を体現しており、ファンにとっても勇気を与えるものとなっています。

歌詞の中には、「空想地図」「子供の駄々」「お絵描き」など、子供のような純粋な表現が多く登場します。これは、夢を持つことの美しさと、それを現実化する難しさを対比的に描いています。

「空想地図が滲んでしまって夢が涙で破れてしまって」

ここでは、自らが描いた未来への理想が現実の厳しさによって崩れていく様子が語られています。だが、その一方で、

「それでもまた描いてゆく」

と続けられることで、夢に破れてもなお再び描き直そうとする、前向きな姿勢が示されます。これは、挫折を乗り越えて何度も挑戦する姿を通じて、リスナーに「諦めずに進もう」というメッセージを投げかけているのです。

「雨天決行」の歌詞の中でも、特に印象的かつ衝撃的なフレーズが以下の一節です。

「生まれ落ちた排泄物がキラキラ光って駆けてった」

通常、「排泄物」という言葉はネガティブな印象を与えます。しかし、このフレーズは、作り手が自身の心の底から生み出した“言葉”や“感情”を、あえて汚れたものに例えながら、それでもそれが“キラキラ光る”可能性を持つという逆説的な表現です。

この対比は、創作活動における苦しみと美しさ、そしてそれを世に出すことの勇気を象徴しています。自分の未熟な部分や、汚い感情さえも受け入れて、それを作品として昇華させようとする姿は、非常にリアルで人間的です。

sumikaは「雨天決行」をライブでも頻繁に披露しており、特に2023年の横浜スタジアム公演では、この楽曲を“第二楽章”として再解釈する演出が話題となりました。

「第一楽章」はかつての苦悩や迷いを、「第二楽章」はそれを越えた覚悟と希望を象徴するもので、10年を経たsumikaがファンと共に歩んできた軌跡を感じさせます。

このようにライブでの演出も含めて、「雨天決行」は時代と共に“育ってきた”楽曲です。楽曲に込められたメッセージは、演奏のたびに新しい意味を帯び、聴く人の人生の節目に寄り添ってくれる存在となっています。

「雨天決行」は、ただの楽曲ではなく、sumikaの歩みそのものを映し出した“決意の歌”です。未熟さ、挫折、理想、覚悟、再出発——これらが混じり合うことで、楽曲は多層的な意味を持つようになります。

一人ひとりが抱える“雨”の中でも、歩みを止めない——そんな力強いメッセージが、「雨天決行」には込められています。人生に迷ったとき、そっと背中を押してくれるような力を持った一曲です。