2021年8月4日に発売された「憂国のモリアーティ」15巻。
前巻で幕を閉じた「最後の事件編」から3年後の世界が描かれる新章「空き家の冒険編」がスタートです!
最後の事件を終えたキャラクターたちの立ち位置や心情が気になる15巻の感想をお伝えします。
がっつりネタバレを含むため、未読の方はご注意ください。
「憂国のモリアーティ」15巻の感想
15巻はルイス率いる新体制のMI6が表立って動きますが、ストーリーの本質は3年前から行方をくらませているセバスチャン・モランと、行方どころか生存確認すら取れていないウィリアム&シャーロックにスポットが当たっています。
ただしモランについてはまだまだ身を隠している状態なので、ほとんど登場しません。
頑固一徹なやり方でウィリアムに尽くそうとするモランはどこか痛々しくとても健気で、今後の展開が楽しみです。
また、MI6の長官として活躍するルイスは見た目も中身も「素敵な英国紳士」となり、かつてのウィリアムを見ているよう。
ストーリーを通してキャラクターが大きく成長する姿は、読み手に感動を与えてくれますよね。
そしてそんなMI6の元に突如シャーロックが現れたことにより、ウィリアムが生存していることが判明しました。
意識を取り戻し屋上のベンチに腰掛けるウィリアムの横顔は、淡く微笑むシャーロックとは打って変わって絶望の色に染まっているように見え、2人のコントラストに胸が苦しくなります。
ちなみに、空き家の冒険編でウィリアムが生きているのは原案にはない「憂国のモリアーティ」だけのオリジナル設定です。
ウィリアムがどのような心境なのか、テムズ川落下による後遺症はないのかなど詳細は明かされず、次巻以降へ持ち越される形となりました。
「憂国のモリアーティ」15巻の見どころ
ここからは、さらに詳しく「憂国のモリアーティ」15巻の見どころをお話します!
女性キャラたちが輝く
これまでのストーリーでは、男性キャラの活躍のほうが目立っていた「憂国のモリアーティ」。
しかし15巻では、マネーペニーが大活躍!
ナイスバディを活かした色仕掛け攻撃はもちろん、完璧とはいえないながらも努力が伝わる男装を披露し、彼女の新たな一面を見ることができました。
また、ボンドは久々にアイリーンとしてシャーロックの前に現れ、女性らしさを爆発させていましたね!
シャーロックに対し「少しだけこうしていさせて…」と切なげに言ったアイリーンはすぐさまいつもの明るい笑顔に戻りますが、あの言葉こそが彼女の本音だったのではないでしょうか?
「憂国のモリアーティ」に登場する女性キャラは皆強い芯を持った「イイ女たち」なので、今後の活躍も楽しみです。
シャーロックとマイクロフトの絆
生還したシャーロックを見てあくまで平静を装う兄のマイクロフトですが、ティーカップを持つ手は小刻みに震えていました。
マイクロフトにとってこの3年間は、最愛の弟が生きているのか死んでいるのかもわからず常に不安だったのでしょう。
「生きていてくれて嬉しい」「今までの話を聞かせてほしい」など、きっとあらゆる感情がせめぎあっていたからこその震えだったのではないかと捉えています。
しかし、自分の個人的な感情を表に出すことなく、凛とした姿で弟を迎えたところにマイクロフトが持つ兄のプライドを感じました。
「憂国のモリアーティ」15巻の気になる点
新たな物語へと大きく舵を切った「憂国のモリアーティ」15巻ですが、少し疑問に思う部分や納得できない点もありました。
今回のモヤモヤポイントは、ルイスが言う「罪を償う」ことについてです。
「計画を終えた今、僕達は犯した罪を償わねばならない」というのは理解できますが、なぜそれが「身勝手な私刑は許されないんだ」と言い切ってモランに強要することなのかがわかりません。
確かに身勝手な私刑は許されるものではありませんし、ルイス自身がそう考え行動するのは自由です。
ですが、過去とはいえ私刑経験者のルイスたちに、モランを止める権利があるのでしょうか?
犯罪者に「犯罪はダメだよ」と言われても心に響かず、お前が言うなよと思ってしまうのが人間というもの。
また「許されないけど私刑をする」という矛盾こそが物語のスパイスとなっていたため、今後スリルや緊張感に欠けるのでは?と心配です。
まとめ
「憂国のモリアーティ」15巻の批評と感想でした。
15巻は新章展開のための土台作りをしていた印象で、話が大きく進展することはありません。
一冊を通したテンポはあまり良くありませんでしたが、キャラクターたちがこれまでよりも個性的に動いてくれたおかげで楽しく読むことができました。
「ウィリアムが生きている」ということが判明する巻ではあるため、ウィリアムファンの方なら15巻に感動的な印象を持つかもしれませんね。
しかし、ウィリアムが生きていること、登場キャラクターたちがほぼ団結していることから、今後は「原作ありき」だったこれまでとは異なりオリジナル色の強いストーリー展開となることが予想されます。
それが吉と出るか凶と出るかはわかりませんが、面白くなることを期待しつつ16巻発売を待ちたいです。
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