【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」9巻の批評と感想。

エンターテイメント作品には、様々なものがあるが、所謂「吸血鬼もの」は、人間との禁断の恋が描かれるなどして、昔から人気のあるジャンルだ。

そんな吸血鬼と人間の恋愛を丁寧に深堀していったのが、今回ご紹介する『よふかしのうた』になる。

今作は2022年7月からはアニメ化も予定されており、話題となっている。

キービジュアルに描かれた自動販売機にもたれかかる本作のヒロイン、「七草ナズナ」。

彼女のどこか危なげな雰囲気は漫画のイメージそのものであり、期待が高まる。

この物語は人間の主人公がある夜、吸血鬼の少女と出会うところから始まる。

序盤では「よふかし」「恋」がメインで進み、徐々に「吸血鬼」やヒロインの過去について明らかになっていく。

作者のコトヤマ氏は前作「だがしかし」で独特なノスタルジックな世界観や思春期の初々しい恋心を描き切り、高い評価を受けている。

主人公はどちらのヒロインとくっつくのか?

気になった読者も多いのではないだろうか?

今作『よふかしのうた』も大きな期待がかかっていたと思うが、その期待を裏切らない面白さだと感じている。

『よふかしのうた』の9巻の批評と感想の紹介を通して、今作の魅力について語っていきたい。
ネタバレ有なので注意して欲しい。

『よふかしのうた』の概要

『よふかしのうた』は、「週刊少年サンデー」にて、2019年より、連載が始まった。
2021年11月時点で電子版を含む累計発行部数は160万部を突破しており、大人気の作品である。

タイトルはヒップホップ・ユニット、Creepy Nutsの楽曲「よふかしのうた」からきている。

1巻が発売された際には同楽曲を使ったコラボPVが公開されていて、漫画の印象的なシーンがピックアップされ、どこか退廃的な歌が夜の世界観と非常に合っていた。
アニメ版でもCreepy Nutsが主題歌を担当するので楽しみだ。

物語は不登校の中学2年生の主人公「夜守コウ」が、夜中に1人で外へ出たことから始まる。
彼は最近夜眠れない日々を過ごしていた。

昼間の世界とは違う夜の世界を満喫しているときに、謎の少女「七草ナズナ」と出会う。

フードをかぶった怪しげなナズナに、警戒心を抱いていた夜守だったが、徐々に彼女に心を開いていく。

そして、彼女の家に案内され、布団で一緒に寝ることになる。

それだけでも衝撃的な出来事なのだが、さらにとんでもないことが起きる。

寝たふりをしていた夜守の首筋にナズナが噛みついて来たのだ。
そう、彼女は吸血鬼だった。

吸血鬼の話題となり、夜守は彼女と同じように夜の世界を生きたいと思うようになった。

そして、どうすれば吸血鬼になれるのか尋ねる。

ナズナが明かしたのは意外な答えだった。

「人が吸血鬼に恋をすることだ」

その言葉を聞き、夜守は吸血鬼になるために、ナズナに恋をすることを決意する。

ここから、夜守とナズナの不思議な関係が始まる。

夜の世界とナズナ

「よふかし」がテーマということで、夜の世界が描かれているのだが、その描写が非常にワクワクさせてくれるものなのだ。

夜守にとって夜の世界は非日常だ。

ただ、歩いているだけで、楽しい、自由な場所。

公園のブランコに久々に乗ると楽しい。

いつも見慣れた自動販売機が、夜になると明かりが眩しく感じられる。

いつもの何気ない風景がまるで違うものに感じられる夜の魅力。

そんな、夜の世界を案内してくれるのが、ヒロインであるナズナだ。

ナズナはまさに夜を体現したようなキャラクターだ。

性格は自由奔放、口調はどこか荒っぽい話し方をする。

下ネタ好きだが、恋愛話にはウブという、今までありそうでなかった性格をしている。

ビジュアルも、また個性的なものとなっている。

普段はフードをかぶっていて、その中は、ホットパンツに上はビキニ風と露出度が高いのだ。

とても刺激的な格好もまた、夜を連想させる。

このように、ナズナは子どもがしてはいけないこと、どこか背徳的な、よふかしを象徴するようなキャラクターに仕上がっている。

だが、時折見せる寂しそうな姿は孤独さを感じさせる。
そのギャップを感じ、好感を持つ人も多いだろう。

『よふかしのうた』を読み進める理由として、ナズナに惹かれたことをあげる人もいるのではないだろうか。

鶯餡子の正体が目代キョウコだと気づいた経緯

9巻で判明することだが、吸血鬼を殺そうとする謎の探偵「鶯餡子」の正体は、ナズナの友人であった「目代キョウコ」であった。

正体を探るためのヒントはたくさん出ており、カンの良い人は早く気付いたかもしれないが、私は気づくまで時間を要してしまった。

人によって、正体に気が付くタイミングは様々だろうが、私が正体に気づいた経緯について紹介したい。

目代キョウコが登場し、彼女とナズナが会話を始めても、私は餡子のことなど頭をかすめもしなかった。
完全に新キャラクターだと思い込んでしまったのである。
彼女の内面よりも、彼女とナズナの間に何があったのかが気になってしまいそれどころではなかったのだ。
ここは作者の思惑に見事に引っかかったとしか言いようがない。

物語が進み、違和感に気づいたのは、あるアイテムがきっかけだ。
そう、餡子が父親にプレゼントしたライターだ。

「ん? 前にもライター出てきたような。作者はライターが好きなんだなあ」

心にひっかかりがあったものの、私はページを先に進めてしまった。
このライターは6巻の96ページ、餡子の回想シーンですでに登場している。
今、思うとこのライターはかなり印象的な描き方をされている。
何故気が付かなかったのかと思うが、ネタ晴らしの直前に気づけたことで物語に感情移入できたと思えばかえって良かったのかもしれない。

そして、衝撃のシーン。
餡子の家族の和やかな団らんが一変、餡子の父親が吸血鬼と判明し、母親に噛みつき、血を吸いつくして殺してしまう。

餡子からしてみればまさに天国から地獄だっただろう。

この記事を書くために、何度かこのシーンを読み返したが、そのたびにとても胸が痛んだ。

ナズナとの約束の時間になっても来ない餡子を心配した彼女は餡子の家に向かったが、そこでのナズナを迎えた餡子の表情に凍り付いた。

「やぁ、吸血鬼。」

餡子の目つきは、どこからどうみても吸血鬼を殺そうとする謎の探偵「鶯餡子」のものだった。

この目つきに、心がざわつく。

ライターに、さらさらと宙を舞う灰。

あ!これは前に出てきた餡子の回想シーン!つまり、目代キョウコの正体は……

この瞬間にやっとすべてがつながったのである。

先述した通り、人によって餡子の正体がキョウコだと気づくタイミングは様々だろう。

しかし、今までの巻で出ていた情報がパズルのように組み合わさり、真実が明かされるのはとても爽快感があった。

読者を意識した丁寧な情報の出し方や、感情移入させる演出が巧みに合わさり、見事に読者を物語の世界へと誘導しているのだ。

巧妙に張られた伏線

今作では実に多くの伏線が張られており、それらは絶妙なタイミングで登場している。

まず、一番印象に残った伏線が、餡子が父親にプレゼントしたライターだ。

6巻の96ページにて、餡子の回想シーンが描かれているが、ここでライターが登場している。

ライターを単体で映し出し、蓋の開閉時の金属音が印象に残るようなコマ割りをしているのが特徴だ。

ここでライターと餡子がセットであるという印象付けを行われている。

その結果、9巻での餡子の過去のシーンでライターにあれ?どこかで見たような?という感覚にさせられるのだ。

その後、殺した父親の眼鏡を手に取る餡子。

ライター、眼鏡と揃えば、もう目代キョウコが餡子だとわかるだろう。

丁寧な導線によって、今までバラバラだっと情報が結びつき、答えが出される。

見事な伏線回収だ。

次に餡子のセリフに注目したい。
彼女は「~だと思っていたよ」といった特徴的な固い話し方をする。

4巻179ページでは餡子の事務所にやってきたマヒルに対して

「そろそろ来ると思っていたよ。」

というセリフがある。

このセリフに対応して、8巻の90ページでは、まだキョウコと呼ばれていたころの餡子がナズナに対して、

「やあ こんばんは七草 そろそろ来るころだと思っていたよ」

と言っている。

他にも、鶯餡子の苗字の鶯は鳥の種類で、目代キョウコの苗字の目代も漢字は違うが、同じ鳥のめじろを表している。

めじろは体の黄緑色から、鶯と間違える人も多い。
わざと似ている鳥の名前を持ってきているところがにくい演出だ。

一回読んだだけでは気がつかなかったが、至る所に餡子がキョウコであるというヒントは隠されていたのだ。

まとめ

漫画「よふかしのうた」9巻の批評と感想を紹介した。

吸血鬼と人間の恋というテーマを新たな解釈で捉えた今作は実に刺激的で、面白い。

その中でも9巻は物語が一気に動いていくターニングポイントになっている。

緊迫した命のやりとりが発生し、先が気になってどんどんページをめくってしまった。

10巻を読むことで気が付く伏線があるかもしれない。

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