【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」16巻の批評と感想。

漫画「よふかしのうた」はコトヤマ先生による作品で、「週刊少年サンデー」で2019年より連載中である。
2023年6月の段階で電子版を含む累計発行部数は250万部を突破の大人気作品だ。
2022年にはアニメ化もしている。

ストーリーは、不登校の中学2年生のコウが、ある晩吸血鬼のナズナと出会うところから物語が始まる。
吸血鬼になりたいコウだったが、吸血鬼になるには相手に恋をしなければならない。
コウはナズナに恋をしようと奮闘する。
その過程で多くの吸血鬼と知り合うなどして物語が進んでいく。

今回は、16巻の批評と感想を紹介したい。
16巻はキクとキョウコの対面が描かれるなど、重要なシーンが多い。
舞台が北海道なので、美しい背景にも注目したい。

裏切られたキク

「第151夜:恋」では冒頭、マヒルとの恋愛で上機嫌なキクが描かれる。
町中の人々に声をかけられていることからキクの人気ぶりがうかがえる。

浮かれているキクにとっては、自分が辺り一面花畑にいるような感覚なのだろう。
花畑でポーズをとるキク。
「恋って なんて素晴らしいんだろう」と微笑みながら、コウモリと戯れている。
ここでコウモリがでてくることが吸血鬼であることを思い出させてくれる、面白い仕掛けだ。
綺麗な花畑にいる場違いなコウモリに少し笑ってしまった。

バタンと、ホテルのドアを閉め、現実に戻ってくるキク。
ドアというのは境界線なのかもしれない。
ベッドに横になり、目を瞑り、マヒルのことを考える。
自分は恋をしているのだと。
しかし、次の瞬間、有頂天になっているキクは絶望に叩き落される。

マヒルが燃やさずに残しておいたスマホを見つけてしまうのだ。
15巻にて、吸血鬼は人間だったころの思い入れの強いものが弱点となるため、マヒルは自分の私物をすべて燃やす予定だった。
ところが、マヒルはスマホに残っていた、コウとアキラの3人で撮った写真を見つけてしまい、捨てることができなかったのだ。

スマホをみつけてしまったキクは自分に嘘をついて隠し持っていたのかと、怒りを露にする。
電源をつけ、3人が撮った写真を眺めるキク。
何も言葉を発しないのが、かえって彼女の深い絶望を表している。

キクの立場になり考えてみると、裏切られた悲しみは大きいだろう。
自分のためにすべてを捨ててくれたと信じていたのに裏切られたのだから。
有頂天から一気に絶望に叩き落されるところは読んでいて心が苦しかった。
長い時を生きてきたキクはやっと本物の恋ができたと思っていただけに、ショックは大きかったに違いない。

殺されかけるコウ

キクから連絡を受け、1人で彼女に会いに行くコウ。
事情を聞くとマヒルがスマホを燃やさずに隠し持っており、彼に裏切られたと語る。
キクはコウにとってマヒルは何のかという質問をする。
「友達だ」と答えるコウ。
返答に対して、キクは恋人と友達であれば恋人を選ぶのは当然だと言う。
キクはもう自分の命しか捨てるものがないと言い、その言葉にコウは、キクは「恋がしたい」だけで、自分と同じだと気付く。

コウは出血して半吸血鬼化するためのピアッサーをすべて破壊し、マヒルの元へ連れていってほしいと頼み込む。
不気味な笑みを浮かべるキクに警戒しながらも、キクの後をついていくコウ。
しかし、途中でキクはコウを川に突き落とし、窒息死させようとする。
大ピンチのコウだったが、アザミやススキに助けられる。

キクの特徴として隙を見せてきたと思ったら、手のひらを返したように暴力的になるところが挙げられる。
今回も好きな人のスマホを勝手に見たなんて言えないと、照れた表情を見せてコウを油断させている。
そこからの殺意にはぞっとした。

5巻でも同じような構成になっている。
自分が吸血鬼であることをマヒルには言わないでくれと頼みこむのだ。
コウは彼女の人間らしさに心を許すが、キクは豹変してコウを殺そうとするのだ。
キクのこの激しい感情の落差には毎回驚かされる。

キョウコの復讐

キクと因縁のあったキョウコがついにキクと対面するシーン。
キョウコの父親はキクと浮気をしており、キクによって吸血鬼にされてしまった。
キョウコの誕生日に、父親はキョウコの母親の血を吸い、殺害する。
キョウコにも襲い掛かってきたが、キョウコは前に父親にプレゼントしたライターを使って、父親を殺害した。

キョウコはキクへの復讐のために、10年間過ごしてきた。
ようやく、キクに復讐するチャンスが巡ってきたのだ。
キクとの会話中、キョウコは突然ナイフを投げてキクに攻撃をしかける。
突然の出来事に驚く、ススキやハルカ。
それもそのはず、事前の打ち合わせではキクは殺さないという話になっていたからだ。
しかし、キョウコはムシャクシャしたと語っている。

それは当然の反応だろう。
自分の愛する家族を奪った相手を目の前に冷静に対応できる方がおかしい。
改めて、人間らしい心の機微が、リアルで繊細に描かれていると感じる。

キクはキョウコとの別れ際に、何かを伝えている。
それを聞いたキョウコは驚いたような反応を見せている。
そして、それ以上は言及せずにキクに別れを告げた。
その後のキクの回想シーンでキクの命がもう長くないことが判明していることから、恐らくはこのあたりの話なのではないだろうかと推測ができる。

まとめ

「よふかしのうた」16巻の批評と感想を紹介した。
マヒルがスマホを隠し持っていたことがキクにバレたり、キクとキョウコの対面、キクの命が長くはないことなど、重要なイベントが多かった。
個人的には、キクとキョウコの対面が印象的で、リアルな復讐の描かれ方に、コトヤマ先生の心理描写の巧みさを感じた。
次回予告も気になるコマがピックアップされ、今後の展開の想像が膨らむ。
マヒルとキクは果たしてどうなってしまうのか。
17巻を読むのが楽しみだ。

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