「よふかしのうた」はコトヤマ先生による漫画作品で、「週刊少年サンデー」にて、2019年より連載している。
2022年6月の段階で電子版を含む累計発行部数は250万部を突破、大人気漫画作品である。
2022年にはアニメも放送されており、話題になった。
ストーリーは中学2年生の夜守がある晩、吸血鬼の少女ナズナと出会うところから始まる。
夜守は多くの人間や吸血鬼と出会い、成長しながら、襲い掛かる事件に立ち向かっていく。
今回紹介する14巻は久々に昼間の世界が舞台だ。
夜守の母親が初登場したり、夜守がずっと休んでいた学校に登校したりする。
しかし、そこには確かにナズナや餡子などの非日常を象徴するキャラクターが顔を出し、その不思議なバランスが読者を「よふかしのうた」の怪しげな世界へと誘ってくれる。
夜守の母親初登場
ここにきて、やっと夜守の母親であるケイが登場する。
彼女は女手一つで夜守を育ててきた。
水商売をしており、夜守に関しては放任主義。
1巻では初めて夜中に夜の世界にやってきた夜守は「親は自分を心配はしていないだろう」といったニュアンスのセリフを言っている。
このセリフから何か夜守の家族は訳アリかもしれないという憶測を立てていた。
しかし、彼の親のことよりもナズナたち吸血鬼とのよふかしの物語が楽しくて、あまり気にならなかった。
しかし、確かに昼間の世界のことを考えると、親が出てくるのは自然な流れかもしれない。
ケイについてだが、夜守が学校に行ってないことを一方的に怒ることはせず、きちんと話を聞いてくれるのでとても好感がもてた。
個人的に、このタイミングでの母親の登場はありがたかった。
物語の最初の方に登場してしまうと、夜守家という情報量が増えてしまい、余計なノイズが発生して、純粋に楽しめなかったかもしれない。
新キャラや新しい情報が出るたびに思うが、タイミングが秀逸だと思う。
修学旅行をさぼる2人
夜守とマヒルは小学生のときに修学旅行をさぼっている。
14巻ではその時のエピソードが語られる。
印象的だったのが、「夢の中にいるような感覚が僕らを包み込んでいた」という言葉だ。
この言葉を聞いたとき、「よふかし」のことを思い出した。
皆、修学旅行に行ってしまい自分だけしかいない世界。
皆寝てしまい、出歩いているのは自分だけしかいない世界。
2つの世界は日常から切り離され、どこか夢の世界のような共通点を持っている。
夜守の「よふかし」の原点はこの修学旅行をさぼったことにあるのではないだろうか。
夜守が「よふかし」を始めたのも、無意識につらい日常から遠ざかり、非日常の世界を味わいたかったのかもしれない。
修学旅行をさぼったエピソードは、キクとマヒルの行方を追う手掛かりになる重要なエピソードだ。
「北海道」というキーワードだけではなく、夜守とマヒルの友情、マヒルの傷ついた心の描写など盛りだくさんの回でもある。
情報量は多いはずだが、それらをさりげなく演出しているため、煩雑になることなく、印象的なエピソードとして描かれている。
成長した夜守
夜守が不登校になったのはクラスメイトの朝倉をふったことにより、そのことを朝倉の友人二人に咎められ、学校に行くのが面倒になったからである。
そんな事情を抱えつつ、夜守はキクとマヒルを探しに北海道へ行くために、たまたま行き先が北海道だった修学旅行に参加することになる。
そのために久々に学校に行くのだが、当然、夜守を責めた2人組がちょっかいを出しにやってくる。
昔の夜守ならばまいってしまうところだが、今の夜守には2人組の悪口はまったく響かない。
彼のあまりにも堂々とした態度に、逆に2人組のほうが戸惑うのだ。
夜守が修学旅行に行くことを2人に告げると、驚きながらも、同じ班に来たらどうかと誘ってくるまでに。
夜守はナズナたちと出会い、多くの出来事を乗り越えてきたからこそ小さなことが気にならなくなったのだろう。
昔は他人に対して心を閉ざしていたが、今はオープンになっているため、2人組も心を許して同じ班に誘ってくれたと考えられる。
夜守の人間的な成長が感じられるエピソードだ。
ナズナの弱点
13巻でキクから手に入れたナズナの弱点はまさかの「へその緒」だった。
ナズナ本人のものだと思われる。
何故こんなものをキクが持っていたのか。
おそらく、キクとナズナの母、七草ハルは近い関係にあったのではないかと考えられる。
確かに、13巻でナズナはキクに対して、どこか口うるさい母親のような印象を抱いていた。
それがなにか伏線になっているのだろうか。
ハルの眷属であるカブラに聞いても、答えはわからなかった。
ハルはあまり私生活を話さなかったようである。
しかし、カブラの目から見てハルはどこか人間みたいなことがしたかったのではないだろうかと思われる。
「人間みたいなこと」というのが人間との恋愛、出産だったのかもしれない。
そう考えるとキクも普通の恋愛がしたいと話していたことと似ている。
もしかしたら、2人は同じ価値観で仲が良かったのかもしれない。
まとめ
今回は13巻のように、ド派手な戦闘シーンもなく、過去の思い出、学校生活など夜守が日常に戻ってきた回だった。
夜守が不登校の原因となった二人組を前にしても動じないところは彼の成長がうかがえ、感慨深かった。
次回の予告を見る限り、また派手なバトルが戻ってきそうだ。
新キャラも登場し、大波乱になるかもしれない。
果たして夜守はキクとマヒルに会えるのだろうか。
11巻での「それから マヒル君には 最後の時まで会えなかった」というセリフに悪い予感しか感じないのは私だけではないだろう。
マヒルのつらい過去を考えると彼には幸せになってほしいものだ。
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