【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」12巻の批評と感想。

『よふかしのうた』はコトヤマさんによる、吸血鬼の少女と人間の少年の恋愛を描いた漫画作品だ。
アニメ化も好評で、コトヤマさんの絵柄が生かされた作画により、原作の雰囲気がしっかりと再現されている。

今回紹介する12巻は新キャラが2人も登場する「動き」のある巻だった。
白熱のバトルシーンも多く描かれている。
テンポ良く進む物語に多くの読者が釘付けになるだろう。
そんな12巻の批評と感想を紹介したい。

夕家の謎

前巻の終盤、息子がまったく帰ってきていないのに心配する素振りも見せないマヒルの母親の様子が描かれていた。
今回は、その謎を探るべく、目代が留守中の夕家に不法侵入する。
いたって平凡な家の中。
だが、それこそが異常であった。
あるべきはずのものがないのだ。
そう、仏壇だ。

マヒルの兄は交通事故で亡くなっている。
子供を亡くしたら仏壇が置かれている場合が多いだろう。
しかし、この家には何もない。
マヒルの部屋に入ると、そこには子供用の勉強机が置かれ、マヒルの兄の名前が書かれた教科書がそのままにしてあった。

明らかに異様な光景だ。
家に誰が帰ってきたか、すぐわかるようにビーズカーテンもそのままにしてある。
母親はマヒルの兄の死を受け入れられていないことがわかるのだ。

目代から夕家の異様な様子を聞いた夜守はマヒルと仲直りがしたいだけだと話す。
連れ戻す気はないが、キクがマヒルを騙しているならば、連れ戻すと決意を新たにする。

あの明るいマヒルがこのような悲惨な環境で暮らしていたとは想像もしていなかった。
心の隙間を埋めるように、キクにのめり込んでいったことも頷ける。
自分の居場所がないマヒルはキクに自分の居場所を見つけたのだろう。

まだ中学生なのに、マヒルが不憫で仕方ない。
次巻でキクが何を考えているかがはっきりしそうだが、マヒルにとってそれが救いなのかそうではないのか気になるところだ。

どこか憎めない男アザミ

突如、夜守たちの前に謎のスーツ姿の吸血鬼の男アザミが現れる。
目代と朝井の二人を連れ去ろうとするが、それを阻止しようとするナズナと夜守。
一悶着あって、アザミは捕らえられ、彼の素性が明らかになる。
彼はキクの眷属だった。
ヤクザの下っ端をしていた時に、キクの気まぐれで吸血鬼にされ、彼女から色々教わってきたのだ。

キクの眷属たちが悪さをしないように見守っており、今回目代にたどり着いたというわけだ。
目代の事情を知り、彼女の協力者となるが、彼女を狙う謎の女吸血鬼と戦い、負けてしまう。

性格は、カッコつけてはいるが、どこか抜けており、憎めない。
登場シーンはスタイリッシュに決めたかと思ったら、コミカルな一面を覗かせ、夜守からもそこまで悪い人じゃない評価される始末。

作者コトヤマさんのキャラクター造形の巧みさも相まって、人間味あふれる魅力的なキャラクターに仕上がっている。
吸血鬼になったときに人は殺さないと決めているところも、今後どう転ぶか注目ポイントだろう。

謎の女吸血鬼

12巻ではアザミの他にも新キャラが登場する。
目代を狙う謎の女吸血鬼だ。
長い前髪により、表情は見えないのがミステリアスな雰囲気を演出している。
口数は少なく、最低限のことしか話さない。
金魚の醤油さしに血を入れているのも特徴的だ。

アザミをあっという間に戦闘不能にしてしまう様子から相当な手練れだと思われる。
連続ですり抜けをやってのけるなど、吸血鬼としての戦い方に慣れていることから、吸血鬼のことを熟知しているようだ。

アザミの推測から、吸血鬼の自警団的な組織の吸血鬼ではないだろうかと思われる。
この組織も今後物語に関わってくる可能性が高い。

長い前髪により、目が隠れて見えないというキャラクターデザインは個人的にとても好みなので、彼女の今後の動向にも注目したい。

迫力のバトルシーン

先ほど紹介した謎の女吸血鬼と夜守のバトルシーンが短いながらもカッコ良く迫力満点なのでぜひ紹介したい。
女吸血鬼によってアザミはダメージを負い、ナズナは遠くに飛ばされてしまった。
残った夜守は必死になって女吸血鬼と戦う。
ビルの天井をすり抜けて屋上にまでやってきた夜守。
女吸血鬼の動きが見える夜守は彼女の腹部にパンチを入れるが、透過後、透過を解除されてしまい、腕がちぎれてしまう。
しかし、ちぎれた腕と体が血のような液体で繋がり、女吸血鬼にビルごと破壊するような攻撃を加えるところで12巻は終わる。

バトルシーンでは猛スピードで動く2人を表現するために、背景が白のべた塗りと周りに飛び散る瓦礫で表現されている。
2人は普通の人間とは違う時間の流れの中で戦っていることが伝わり、異空間のような演出になっている。
パンチの描写も重くそれでいてスピード感のある線で描かれているので非常に迫力がある。

『よふかしのうた』は心理描写などの静かな描写が魅力的だが、バトルシーンも迫力があり、どちらも楽しめるのはとても満足度が高い。
作者のコトヤマさんの心理描写もしっかりと見せていくが、バトルでも盛り上げていくぞという意思が感じられる。

まとめ

12巻では、冒頭のマヒルの家のサスペンス的な暗い雰囲気から、迫力のバトルまで堪能でき、とても満足度の高い巻だった。
新キャラ2人も魅力的で、今後の活躍が楽しみだ。
気になるのが夜守の中の吸血鬼の濃度がどんどん上がっているかもしれないということだ。
彼には最後まで人間であってほしい、最後にナズナの手によって吸血鬼になってほしいなという思いがあるのだが、どんどん吸血鬼化していく主人公という展開も面白そうではある。

キクの動向も気になるところだ。
一体何を考えているのか。
マヒルはどうなってしまうのか。
次回予告ではマヒルの自宅にキクと共に訪れるようだが、そこで何が待ち構えているのか。
個人的に嫌な予感がしてならない。
今から13巻を読むのが楽しみだ。

関連 【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」11巻の批評と感想。

関連 【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」10巻の批評と感想。

関連 【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」9巻の批評と感想。

関連 【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」13巻の批評と感想。

タイトルとURLをコピーしました