【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」11巻の批評と感想。

『よふかしのうた』はコトヤマさんが手がける漫画作品で、「週刊少年サンデー」にて連載中。
2022年6月時点で電子版を含む累計発行部数は250万部を突破していて、話題沸騰中だ。
2022年7月よりアニメ化も始まり、大いに盛り上がりを見せている。
「Creepy Nuts」によるオープニング曲「堕天」は夜の怪しい雰囲気が漂う今作に見事にマッチしていた。
特徴的なポーズを決めて動き回るナズナの描かれ方もこだわりが感じられる。
ナズナに翻弄される夜守のうろたえぶりもしっかりと再現されていて、対照的な2人が巻き起こす物語への期待が高まる。

今回は、漫画『よふかしのうた』11巻の批評と感想について紹介する。
11巻では謎に包まれた吸血鬼「星見キク」の過去が垣間見えたり、夜守と彼の幼馴染である夕真昼(セキマヒル)との対立が描かれたりと、物語は大きく動く。
中でも気になった話題について触れていきたい。

星見キクとはいったい何者なのか?

一見穏やかで優しい女性だが、その正体はなんと吸血鬼。
吸血鬼の仲間たちからも、何を考えているのかわからないと言われ、その正体は謎に包まれている。

今まで分かっていることは目代キョウコの父親を吸血鬼にした本人であること、夕真昼(セキマヒル)に好かれていることだ。
他にも、眷属の数が他の吸血鬼が一桁なのに対して、50人か100人なのか詳しい数がわかっていないほど、多いのではと思われる。

11巻で新たに分かったことは16世紀以前から生きているようで、様々な国を超えて眷属を増やし続ける吸血鬼であるということだ。
まさか、ここまで長生きだったとは思わなかったが、彼女のミステリアスな部分はここから来ているのかと納得はした。

目代の調査曰く、キクは人によって見せる姿はバラバラだ。
まるで別人のように印象が違う。
キクは目代に心情吐露する場面があるが「自分で自分がわからなくなっている」と語っている。
目代がキクに抱く印象は「まともに話ができるとは思えない」であり、前に夜守と会った時の異様な様子も相まって、彼女には狂気すら感じる。
そう考えるとキクが真昼に言った「普通に恋をしたいだけ」というあのセリフも本音なのかどうかもあやしい。

ただ、11巻の冒頭で見せた吸血したあとの悲しげな表情は本物だろう。
幸せのあとにやってくる絶望。
これの繰り返しに彼女は飽き飽きしているのではないだろうか。
『よふかしのうた』は吸血鬼と人間の恋がテーマだ。
このテーマに絡んでくるのではないだろうかと予想する。

夜守、半吸血鬼化する

11巻で衝撃だったことといえば、主人公夜守の半吸血鬼化だ。
前に死にかけて一時的に吸血鬼になりかけたことにより、極度な感情の高ぶりがトリガーとなって発動するようだ。
主人公が特殊能力を持つのはワクワクする展開だが、危うく真昼を傷つけるどころか殺すところだったいう素直に喜べない状況だ。
表紙の夜守は半吸血鬼化を表していたのかと合点がいった。

今まで、吸血鬼同士のバトルでは蚊帳の外だった夜守も今後はバトルにも参加できるのではないだろうか。
作者の描くバトルは迫力満点でスピード感がある演出が巧みなため、期待したい。

主人公と錯覚してしまう目代キョウコ

これは私だけかもしれないが、どうも目代が登場してからというもの、彼女が主人公ではないかと錯覚してしまうことが何度かあった。
主人公である夜守にしっかりと感情移入もできているし、夜守とナズナを取り巻く物語も丁寧に描かれているのになぜなのだろうと考えた。

明確な理由はわからないが、恐らく、私が、目代の父親を吸血鬼にして家庭崩壊させた張本人「星見キク」を追うという物語を中心に見ているのだろうと思われる。
犯人と真相を追い求めるサスペンス小説を読んでいるかのような錯覚を起こしてしまうのかもしれない。
主人公である夜守を通して、目代の物語を見ているはずが、夜守を通り越して、目代に感情移入している可能性が高い。

また、目代の表情や言動がこちらの共感を呼ぶものが多いのも理由の一つかもしれない。
目代はとにかく悲哀のある表情の描かれ方が素晴らしいのだ。
特に疲れ切った目の描き方が秀逸だ。
彼女の表情に思わず、同情し、思わず応援したくなる。
不思議な魅力を持った目代に今後も注目していきたい。

まとめ

「よふかしのうた」11巻の批評と感想を紹介した。
今回も、日常と非日常が入交り、常に感情を揺さぶられっぱなしだった。
その中でも真昼の変貌はなかなかに衝撃だった。
何が彼をそこまで追い詰めるのか。
これは一筋縄ではいかない原因がありそうだ。
異様な母親やお兄さんとの関係性も気になるところ。

久々に出番のあった「朝井アキラ」もしっかりと見せ場があった。
幼馴染としての積み重ねなど、人間関係を描くのが丁寧だなと改めて思う。
「夜守とアキラと真昼の3人でいるとなんとなく安心した」という幼馴染の絶妙な距離感が確かに演出されていて、読み応え抜群だ。
前作での「だがしかし」でも主人公と幼馴染の2人との関係性が繊細に描かれていたが、確かに今作でも引き継がれていると感じた。

星見キクの本心、真昼の暗い過去など、気になることは山ほどあるが、日々を一生懸命に生きている夜守たちの物語にも注目していきたい。
修行のシーンなど、確実に夜守とナズナの絆は深まっている。
多くの困難を糧に成長していく彼らを応戦していきたい。

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