【ネタバレあり】漫画「よふかしのうた」10巻の批評と感想。

人間と吸血鬼の恋愛を新たな形で描く『よふかしのうた』

「だがしかし」でも人気を博したコトヤマ先生が手掛けている。

7月にはアニメ化もされ、先日はキャラクターが勢ぞろいしたキービジュアルが公開された。
怪しく輝く夜の街を背景に、思い思いのポーズをとっているキャラクターたち。
その姿は印象に残ること間違いなしだ。
アニメに関しては徐々に情報が解禁されていき、期待感が増していく。

今回はそんな『よふかしのうた』の10巻について批評と感想を述べる。

前作の9巻では、ナズナと餡子がいる体育館に夜守がやってくるところで終わっていた。
これからどうなってしまうのか。
気になる読者も多かったことだろう。

10巻ではハロウィン編の結末が描かれ、餡子の家族を悲劇に陥れた吸血鬼へとフォーカスが当たっていく。
その吸血鬼の正体もここまで物語を読んできた読者であれば、察しがつくだろう。
今まで断片的だった情報がつながっていくのは圧巻の一言だ。

10巻について詳しくみていきたい。

ハロウィン編の結末

ナズナと餡子の死闘は、夜守の乱入によって状況が変わる。
餡子は計画の邪魔をしてくる夜守に銃をつきつけた。
だが、餡子に彼を殺す気はなく、逆に自分が殺されるつもりだったのだ。
餡子は自分の死んだときの映像を残して、吸血鬼の存在を世に知らしめようとしていた。
吸血鬼の存在が明るみに出れば、人々は夜出歩かなくなり、吸血鬼は絶滅すると考えたのだ。

餡子の狙いは一体何のだろうか?
とずっと考えていたが、まさか自分の死で吸血鬼を絶滅させようとしていたとは思わなかった。
餡子はその言動からわかるように、用意周到な計画を立て、今日に臨んだのだろう。
吸血鬼への憎しみと執念を感じた。

他にも夜守に自分の狙いを暴かれ、動揺しながら「黙れ」と連呼する餡子はどこまでも人間味がある。
夜守が体育館に現れた時の餡子の狼狽えた表情といい、餡子は感情が表に出やすいようだ。

ハロウィン編は餡子の掘り下げと、読者の餡子への共感を呼ぶことに成功している。
今後、餡子の父親を吸血鬼に変えた吸血鬼の正体に迫る物語が展開していき、物語はより核心へ近づいていくのだろう。
その導入として、大きな役割を果たした「ハロウィン編」。

見ごたえのあるストーリー展開と、細やかな感情表現は私の心に残るものとなった。
特に20ページの餡子の「夜は静かな方がいい」は「よふかし」の「よる」が描かれ、印象的なシーンとなっている。

夜守、銃で撃たれる

ハロウィン編の結末には続きがある。
餡子の野望を阻止した夜守とナズナだったが、餡子が気になり、追いかける2人。
夜守が駆け込んだ部屋では餡子が拳銃を頭に突きつけ、自殺を図ろうとしていた。
それを止めようとした夜守だったが、餡子に誤って撃たれてしまう。
普通なら命に関わる致命傷だが、夜守は生きていた。
なんと一時的に脳が恋愛状態だと錯覚し、吸血鬼化したのだ。

自殺を止めようとして、誤って撃たれるシチュエーションはよくあるが、主人公が一時的とはいえ、吸血鬼になる展開は新鮮だ。
恋愛感情が欠落しているのでは?
と心配されていた夜守にも恋愛感情はあったのだ。
これには読者も一安心だ。
主人公の恋愛感情が欠落していたら、お話として破綻してしまう。

そして、物語が進み、餡子とは飲み会の席で、恋愛感情の話になるのだが、気になるのは、その話題のときのナズナの表情。
嬉しい話題のはすなのに、なぜ、そっぽをむいているのか。
今後の伏線ではないだろうか?
何か思うところがあるのだろうか?

髪切った?

先ほど少し触れたが、ハロウィンの事件後、まさかの餡子との飲み会が開催される。
何故夜守が銃で撃たれたのに無傷だったのかについて彼女に尋ねるためだ。
つい先程まで命のやりとりをしていた相手と飲み会という展開には驚きだ。

そこで話題となるのが、餡子の髪が短くなったということだ。
餡子の「何か気付かないか?」の言葉にどう返せばいいか悩む夜守とナズナ。
そこで夜守は「髪、似合いますね!」という感想で「パーフェクトコミュニケーション」をたたき出すこことに成功する。

このしょうもないやり取りがどこか「だがしかし」の日常を思い起こさせるのだ。
着眼点が共感できる話題なのが面白い。
共感を呼び起こす話題について掘り下げていくスタイルは読んでいて読者を飽きさせない。
同じ作者であることを感じさせられて、どこかほっこりする。

夜守と餡子の添い寝シーン

そういえば、ナズナは添い寝屋だったなあと思い起こさせるイベントがやってくる。
飲み会で酔っぱらってしまった、餡子を休ませるために、ナズナの部屋へとやってくる3人。

そこで衝撃の出来事が起こる。
餡子が夜守を押し倒すのだ。
動揺する夜守に対し、餡子はいたって冷静だ。
添い寝をしてくれないから強硬手段に出たまでだと。
そして、餡子の悲しい独白が始まる。

人間臭い表情と言葉。

普通に生きることの、難しさ。

人は弱っていると人に甘えたくなるが餡子も例外ではなかったようだ。
涙を流す彼女。
彼女を安心させるために、夜守は餡子をぎゅっと抱きしめる。
それと同時に夜守は餡子の力になることを決意する。
静かで派手さはないが、餡子の悲哀、夜守の優しさが伝わってくる素敵なシーンだった。

まとめ

『よふかしのうた』10巻の批評と感想を述べた。

ハロウィン編は今後の物語のターニングポイントになることは間違いない。
物語の先が気になり、どんどん読み進めてしまったが、恐らくは多くの伏線が散りばめられていたと思われる。
しかし、今作は伏線のことを気にせずとも、丁寧に段階を踏んでくれるので安心している。

餡子が個人的に好きなキャラクターなのだが、10巻でより彼女のことを深く知ることができて、好感度が上がった。
彼女には心の底から笑っていてほしいものだ。

今後は餡子の父親を吸血鬼化させたであろう犯人に迫るわけだが、どうにも一筋縄ではいかなさそうだ。
またどんでん返しがある予感がするのだ。

それも含めて11巻が出るのが今から楽しみで仕方ない。

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