【The Strokes】1stアルバムから6thアルバムまでを解説。

1998年にニューヨークで結成された「The Strokes」(ストロークス)というバンドは、2001年にリリースされたデビューアルバム「Is This It」と共に肥大化してしまったロックンロールを切り裂き、それ以降のロックンロールを背負って立つ存在として鮮烈なデビューを果たした。

メンバー

ニューヨークの上流階級・富裕層の通う学校などで出会った彼らは「おぼっちゃまバンド」と揶揄されることも多い。
だが、90年代にヒップホップやR&Bが全盛を迎えたアメリカで、当時からすると「コスプレ」かのようなタイトなジーンズやスキニーパンツ・ハイカットのコンバースやライダースを身に纏い現れた彼らは、都会的で洗練されていながら古風なロックンロールをかき鳴らし、同世代のバンドであるザ・ホワイト・ストライプスらと共に、2000年代に巻き起こったロックンロールリバイバルの中心にいた。

ジュリアン・カサブランカス

ボーカル、ソングライター。
1978年生まれでニューヨーク出身。
モデル事務所「エリート・モデル」の創設者で実業家の父とモデルの母の間に生まれたが、両親は離婚し、母は画家と再婚。
画家の父が聴いていたドアーズなどに影響を受ける。
2009年にはソロアルバムを発表。
2013年からはバンド「The Voids」としての活動も行っている。

アルバート・ハモンドJr.

ギタリスト。
ギターはハイポジション。
1980年生まれでロサンゼルス出身。
映画の勉強のためにやって来たニューヨークでジュリアンと知り合う。
「It Never Rains in Southern California(カリフォルニアの青い空)」のヒットで知られるシンガーソングライター、アルバート・ハモンドの息子である。
2006年頃からソロでの活動も行っている。

ニック・ヴァレンシ

ギタリスト。
ギターはローポジション。
1981年生まれでニューヨーク出身。
それまではギターで有名な曲を弾ける程度で満足していたが、ジュリアン・カサブランカスと出会い、音楽にのめり込むことになる。
バンド「CRX」での活動も行っており、CRXではボーカルも務めている。

ニコライ・フレイチュア

ベーシスト。
1978年生まれでニューヨーク出身。
ジュリアンの幼馴染である。
ストロークスのメンバーはみな裕福な家庭の生まれだが、ニコライだけは一般家庭の生まれである。
2008年からは「Nickel Eye」というソロプロジェクトも行っている。

ファブリツィオ・モレッティ

ドラマー。
1980年生まれでリオデジャネイロ出身。
4歳のときにニューヨークに移住する。
バンド「Little Joy」としての活動も行っており、Little Joyではボーカルを務めることもある。

ロックンロールの歴史を変えた、自信に満ち溢れた1stアルバム「Is This It」

2001年にイギリスの名門レーベル「ラフ・トレード」にデモテープを送ると、すぐに契約が成立。
EP「The Modern Age」をリリース。
ニューヨークのバンドながら、先にイギリスで人気に火が点く。
その後、アメリカでも「RCA」と契約。

各音楽紙に”NEXT BIG THING”としてこぞって取り上げられると、一部からは「実力よりも人気先行のバンドである」などと批判されるが、2001年8月にリリースされたデビューアルバム「Is This It」で、彼らはその実力が確かなものであるということを世に知らしめ、それまでのロックンロールを大きく変えることになる。

アルバム名にもなっている「Is This It」から始まり、代表曲の1つである「Someday」、2000年代を代表するロックンロールアンセム「Last Nite」、当時起こった同時多発テロの影響もあり、アメリカ盤では「When It Started」に差し替えられた「New York City Cops」、そしてラストの「Take It or Leave It」まで、突き抜けたクールなロックンロールが鳴り響くこの1stアルバムは世界中で大ヒットを記録し、アークティック・モンキーズなど、それ以降に登場する数々のロックバンドに影響を与えることになる。

同じニューヨークのバンドである、かつてのヴェルヴェット・アンダーグラウンドに近い色気や危うさを感じさせる彼らの非常にラフでありながら、これ以上削ることも足すこともできないような洗練された雰囲気はアルバムのジャケットにも表れている。
「尻ジャケ」とも言われるこのジャケットは、アメリカ盤では「卑猥である」という理由で別のものに差し替えられたものの、彼らの有り余る自信が見て取れるデザインで、1stアルバムにして彼ら史上最大のヒットになった「Is This It」を象徴している。

ストロークス史上最もポップな2ndアルバム「Room On Fire」

前作の極端にシャープで洗練された、クールなイメージとは打って変わり、ポップに仕上がった2003年リリースの2ndアルバム「Room On Fire」。
当初はレディオヘッドのプロデューサーとして知られるナイジェル・ゴッドリッチをプロデューサーに迎えたが、ジュリアンと対立して契約は決裂。
最終的には前作も手掛けたゴードン・ラファエルをプロデューサーに迎えた。

代表曲の1つである「Reptilia」や、アナログシンセサイザーのような音色のギターが響く「12:51」などが収録された本作は、ジュリアンのソングライティングのバリエーションの豊かさを実感できると共に、楽曲に対するこだわりの強さも伺える内容になっている。

メンバー間の歪みが楽曲に表れた3rdアルバム「First impressions of Earth」

2006年にリリースされた3rdアルバム「First impressions of Earth」は前作までのゴードン・ラファエルに代わってデヴィッド・カーンをプロデューサーに迎え、1年以上もの期間を費やして制作された。
しかしこの頃から、すべての楽曲の作詞作曲を務めていたジュリアンと他のメンバーとの間に溝が生まれ始める。
さらに、メンバー間でのドラッグや酒に関する問題などが多発し、一時は「解散か」とまで言われるまでになってしまう。

そんな危機的状況の中制作された本作だが、個人的にはジュリアンのソングライティングセンスが光る楽曲が多いように思えた。
イントロから唸るようなギターリフが鳴り響く「Razorblade」や、ベースラインが印象的な「Juicebox」などが収録された本作は、先に述べたようなメンバー間での歪みがそのまま楽曲に表れたかのようなアルバムになっている。

彼らはこの「First impressions of Earth」のリリース後、「The Strokes」として約5年間もの事実上の活動休止を行う。
その間、ニック以外のメンバーはそれぞれのソロプロジェクトを始めている。

危機を乗り越え全員で楽曲を制作した4thアルバム「Angles」

成長し、危機を乗り越えた5人が「The Strokes」としての約5年間にも渡る空白の期間を経て全員で楽曲を制作し、2011年にリリースした4thアルバム「Angles」。
それぞれのソロプロジェクトなどによる活動から得たもの(具体的に言えば、ジュリアンのソロプロジェクトで多用されたシンセサイザーなど)がエッセンスとして加わり、いい意味で”ストロークスらしくない”サウンドを味わうことが出来る。

リズミカルなメロディーの「Under Cover of Darkness」のMVは5人の心が再び通じ合っていることを再認識させてくれる感動的なものになっており、涙を流したファンも少なくないだろう。

ツアー・プロモーション一切なし、これまでのストロークスを詰め込んだ5thアルバム「Comedown Machine」

前作からわずか2年後の2013年にリリースされた5thアルバム「Comedown Machine」。
本作も前作同様5人全員で楽曲を制作したが、アルバムツアーも、アルバムのプロモーションもなしでいきなりのリリースだった。
原点に回帰したような楽曲の多い本作は、大きなヒット曲こそないものの、1stアルバムの頃のような彼らを求めるファンにとっては、嬉しいものになった。

力強いドラムのビートが刻まれる壮大な楽曲「All The Time」のMVは、疾走感に溢れ、これまでのストロークスを思い起こさせるとともに、再び5人で歩みを進めていこうとしているのが感じ取れるものになっている。

これからのストロークスに大きな期待を抱かせる6thアルバム「The New Abnormal」

5thアルバムのリリース後7年の期間をあけて去年、2020年にリリースされた6thアルバム「The New Abnormal」。
この7年間は完全に空白だったわけではなく、ストロークスは4曲入りのEP「Future Present Past」のリリース・ツアーの開催などを行っていた。
そして2020年、同じニューヨーク出身の画家であるバスキアの絵画が描かれたジャケットのこのアルバムと共に、ついにストロークスが帰ってきた。

これまでのストロークスを振り返るような前作に対して、今までにない彼らのサウンドが光る今作。
約20年にも渡ってシーンの最前線に立つ彼らの最新作を、ぜひ自らの耳で確かめてほしいと思う。

90年代にヒップホップやR&Bが全盛を迎えたアメリカに2001年、突如現れた5人の「Abnormal」な若者たちは、約20年の時を経て「New Abnormal」として再びロックンロールの新たな可能性を切り開いていくだろう。
これからも「The Strokes」からは目が離せない。

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