映画「TENET(テネット)」の批評と感想。

コロナ渦という逆風の中で公開されたにも関わらず、多くの人を惹きつけ、話題になった映画をご存知でしょうか。
それこそが、映画「TENET」です。

この映画は、難解さと映像の凄さを醍醐味とするクリストファー・ノーラン監督らしく、一回では把握しきれない物語の奥深さと、見るだけで面白い派手なシーンを併せ持つ作品です。

今回の記事では、そんな「TENET」のあらすじと映画批評、そして実際に見た感想を書いていきたいと思います。

映画「TENET」の映画概要

映画「TENET」は2020年に公開された、アメリカとイギリス合作のSF映画です。

監督は、「インセプション」や「ダークナイト トリロジー」で有名なクリストファー・ノーラン。
今作でもノーラン監督の持ち味である「ノーラン風味」は健在です。
主演を務めるのは、ジョン・デヴィット・ワシントン。
彼は、名優デンゼル・ワシントンの息子でもあります。
物語上重要な悪役であるセイタ―を演じるのは、シェイクスピア劇を多く演じるケネス・ブラナー。
彼の存在感は、画面に緊張感を持たせてくれます。

勿論、ノーラン作品常連のマイケル・ケインも登場しています。
短いながらもインパクトのある彼のシーンは、「TENET」の名シーンの一つだと言っても過言ではありません。

本作は、時間を超越した戦いを描くSF映画です。
聞くだけで難しいテーマではありますが、名監督・ノーランはこれをどう描くのでしょうか。

あらすじ

ウクライナのキエフにある、大きなオペラ劇場。
ここで、大規模なテロ事件が発生しました。
しかし、その様相はただのテロではないようです。
1人の諜報員とみられる男性が、命を狙われていたからです。

主人公の「名もなき男」は、その諜報員を救うため雇われたCIAの工作員でした。
彼は諜報員と観客の命を救い、任務を達成したかに思えました。
しかしその直後、主人公はロシア人に捕まってしまいました。

主人公は苛烈な拷問を受けた末、自殺用の薬を飲んで命を落としたかに思えました。
しかし、彼は助けられ目を覚ましました。
彼には新しい使命が与えられ、それを遂行するためのエージェントとなったのです。

新しい主人公の使命。
それは、未来人が仕掛けてくる、第三次世界大戦の阻止でした。

考えたいという欲望と眼を満たす傑作~映画「TENET」批評~

ストーリーが難解かつ、娯楽性もある。
これを両立させるのは難しいものです。

ストーリーを複雑にし過ぎれば、見ている人が付いていくことができません。
しかし、娯楽性を求めすぎれば、物語は簡単になってしまいます。
リラックスして見られるコメディ映画や勧善懲悪的なアクション映画を考えると、分かりやすいでしょう。

リラックスして観られる映画。
これはこれで楽しいものですが、ときには頭を絞って考えなくてはならないような作品も見たくなります。

今作「TENET」には、スペクタクル溢れるスパイ映画的な一面や、見ているだけで楽しいカーチェイスシーン、そして、迫力ある戦闘シーンが多く描かれています。
これだけ聞くと、「TENET」が一般的なアクション映画であると思われるかもしれません。
しかし実際は、普通のアクション映画とは違う、かなり特異な作品なのです。

今作を見た人が一番びっくりするのは、ストーリーの難解さでしょう。

勿論、ノーラン監督のファンであれば、彼が作る作品の難しさは知っていることだと思います。
しかし、「TENET」の難解さは、その想像をはるかに上回って行くのです。

ノーラン監督と言えば、「時間」を作品の軸にすることが多いです。
過去作の「メメント」や「インセプション」などもそうですし、壮大なSF映画である「インターステラー」でも、時間経過の違いが重要な要素となっています。

そして、今作を難しいものとしているのは、正にこの「時間」という概念。
主人公は、時間が前向きに進む「現在」世界の人間です。
その現在世界に、違う時間軸(過去や未来)から来た物質が現れることにより、物語が展開していきます。

もし、今作の時間の概念を無理やり説明するのであれば、「タイムスリップ」という言葉が一番ふさわしいかもしれません。
しかし、見れば見るほど単純なタイムスリップではないことに気が付きます。
過去と未来がお互いに干渉し合い、複雑さを増しているからです。

これを理解するのは、なかなか一筋縄ではいきません。

ノーラン監督の過去作で描かれた「夢と現実の時間感覚の違い」や「宇宙と地球で変わる時間の流れ」は、難しくはありますが、科学的な知識が無くとも感覚的に理解ができました。
そして、理解の助けとなる説明も作中に含まれていました。

しかし、「TENET」は違います。
説明は少なく、見る側の理解力に依存していますし、一度で理解できる人は少ないでしょう。
それでも、映画に飽きることはありません。

見ごたえのあるシーンが、随所に含まれているからです。

今作は正に、「考える楽しみ」と「目で見える迫力」を両立させた傑作と言えるでしょう。

映画「TENET」を見て思うこと

筆者が初めて「TENET」を見たのは、劇場公開してすぐのこと。
大ファンであるノーラン監督の最新作だと聞いて、ワクワクしながら映画が始まるのを待っていたことを覚えています。

映画が始まってみるとどうでしょう。
確かに面白く、目は画面に釘付けになりました。
映像はノーラン監督らしく迫力があり、単純に楽しめるものとなっています。
そして、短いシーンながら存在感のあるマイケル・ケインを見て、「ここでも登場してくれた」と嬉しく思いました。

しかし、肝心のストーリーはイマイチ理解できないまま、物語は進んでいきます。
目が釘付けになっているにも関わらず、頭が追い付いていかないのです。

後々映画の内容を思い返し、「ああだろうか」・「こうだろうか」と考えてようやく、物語の概要を掴むことができた程です。

今回この記事を書くため、改めて「TENET」を見返しました。
すると、1回目よりはるかに多くの情報量が頭の中に入ってくるのが分かりました。
画面の細かな部分に目が行くようになり、物語を理解するためのヒントを手に入れることができたからです。

今までのノーラン監督作品では、物語を理解するためのヒントは、セリフの中に多く混ぜ込まれていました。
しかし、今作の「TENET」では、セリフから得られるヒントよりも、画面を見て得られるヒントの方が重要です。
映し出されるヒントとセリフのヒントを合わせることで、「理解」の最初の段階に立つことができるのです。

筆者の場合、2回見て理解への一歩を踏み出した、という具合です。
これを解説できるレベルにまで持っていこうとするのであれば、さらに見る回数を重ねる必要があるでしょう。

映画のストーリーを考えるのは楽しいものです。
描かれておらず見えない部分を理解するのは、筆者が映画を見る理由の一つでもあります。
そんな筆者の思いを、「TENET」は存分に満たしてくれます。

とは言え、この映画を真に理解する必要があるのかどうか。
おそらくこの映画は、理解することを前提としていません。
もし意味を知って欲しいのであれば、作中でもう少し説明をしてくれることでしょう。

映画の序盤、主人公を助ける女性がこんな意味の言葉を発します。
「考えるのではなく、感じることが大切」だと。

もしかすると、このセリフこそが「TENET」の本質なのかもしれません。

まとめ

人類が滅亡するような兵器。
祖父殺しのパラドックス。

SF好きであれば、こういった言葉でワクワクすることでしょう。
もし、兵器が発動したら?
もし自分が生まれる前の過去にもどり、祖父を殺してしまったら?
自分自身の存在が無くなってしまうのでしょうか。

今作「TENET」には、こうしたSF好きの心をくすぐる言葉が散りばめられています。
難しくとも見るのを止められない。
この理由には、迫力ある映像だけでなく、こうした「SFの定番」が含まれているからでしょう。

ノーラン監督は、難しい作品を作るイメージがあり、敬遠してしまう人がいるかもしれません。
しかし、その映像は素晴らしいもの。

「TENET」は多くのSF好きの人に、是非見てもらいたい作品の一つです。

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