「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」は、偽りの家族が活躍する物語だ。
家族3人がそれぞれ秘密を抱えており、他の家族にはばれないようにしている。
笑いあり、涙ありのハラハラドキドキのエンターテイメントで、アニメ化するほどの話題作である。
今回紹介する9巻は、家族の母親であるヨルがメインで描かれている長編の後半にあたる。
前巻8巻の終わりではボロボロになりながらも強敵に立ち向かおうとするヨルの姿という気になる終わり方をしていた。
この先の展開はどうなってしまうのか?
果たしてヨルは強敵を倒し、無事に任務を達成できるのか?
続きが気になって仕方がなく、9巻が非常に楽しみだった。
アニメも波に乗り、各キャラクターたちのファンアートが多く作られるなど盛り上がりを見せている。
そんな、漫画「SPY×FAMILY」9巻の批評と感想を紹介していきたい。
ネタバレありなので注意してほしい。
アーニャ大活躍
今回はヨルがメインの長編のため、やはりヨルの活躍に目が行きがちだが、アーニャの活躍にも注目したい。
8巻ではアーニャは機転をきかせて、ヨルと敵の戦いを騒ぎにならないようにサーカスにしたてあげるなど、影で活躍している。
9巻でも家族や船のピンチを救ってくれる。
ヨルは強敵との戦いの最中、武器がなくなりあと一歩のところでリーチが届かずに決定打を与えられずにいた。
そこで、近くにいたアーニャはそんなヨルの思考を読み取り、ヨルの武器を見つけ、力一杯投げる。
それが結果的にヨルに届くのだ。
この武器のお陰で、ヨルは手に入れたリーチを活かし、強敵との戦いに勝利する。
そして無事に護衛対象だったオルカたちの亡命という任務を成し遂げるのだった。
アーニャの活躍はそれだけではない。
悪者によって船内にしかけられた爆弾を見つけ出し、船のピンチを救う。
アーニャは超能力で、人の心を読める。
一見特別な存在に思えるが、それ以外は少し風変りな、かよわい女の子だ。
そんな彼女が家族のため、まわりの人々のために一生懸命に行動する姿は心打たれるものがある。
あえて、コメディーっぽい演出をいれることにより、堅苦しくなく、気軽に読み進めることができるのも魅力だ。
この軽快さが「SPY×FAMILY」のウリであり、幅広い年齢層に支持される理由の一つだろう。
穏やかな景色に潜む不穏
豪華クルーズ船での戦いが終わり、リゾート地でのフォージャー家の一家団欒が描かれるシーン。
3人乗りの自転車に乗ったり、海に潜ったりと微笑ましい場面にこちらも癒された。
つい先日までの船が沈むかもしれなかったピンチが嘘のように穏やかな光景。
ヨルヘのささやかなご褒美だと最初は思っていたが、ヨルの
「こんな平和がずっとずっと続けばいいですね。」
の一言に、なぜか胸騒ぎがした。
不穏な未来への伏線なのではないだろうかと勘ぐってしまう自分がいる。
「SPY×FAMILY」はコメディー要素が強く、明るいテイストが目立つが、この時代は不穏な冷戦時代で、ロイドの任務「オペレーション<梟ストリクス>」が大きな鍵を握っている。
この任務は決して明るい内容ではなく、戦争を企てる東国(オスタニア)の要人ドノバン・デズモンドに近づくという、シリアスな内容だ。
今後、物語が進み核心に迫るほど緊張感あふれる展開になるだろうと予想される。
このセリフはこれから起こる波乱の幕開けに思えてならない。
ヨルのセリフのあとのロイドの意味深な表情がそう思わせるのだ。
ヨルヘの疑惑、任務への責任、色々な思いが混ざりあった複雑な表情。
「SPY×FAMILY」は登場人物のこうした細やかな表情にも注目したい作品だ。
ちやほやされたいアーニャ
学校でのアーニャのシーンはいつも通りお笑いに満ち溢れており、私の癒しとなっている。
イーデン校の価値観からずれたアーニャは、毎回色々とやらかすが、今回も派手にやらかした。
豪華クルーズ船に乗ったことを早速クラスメイトに自慢するが、ここは超がつくほどのお金持ちの子供が通う学校。
周りにはたいしたことないと相手にしてもらえない。
しかし、どうしても、ダミアンと仲良くなるという「プランB」のため、というよりかはちやほやされたいアーニャは船にはやばいやつが100人乗っていたと話を盛り始める。
かさりがまのバーナビーの名を出すのだが、誰?となるクラスメイトたち。
当たり前の反応に、わかっていても笑えるシーンだ。
挙げ句の果てに秘密の悪者の正体はタコ星人だと嘘をつく。
そのときの彼女の目が完全にいってしまっていてアホっぽくて最高だ。
アーニャのこうした変顔は毎回読者を笑わせてくれる。
そんなアーニャを見て、飽きないやつだと評するダミアン。
アーニャの天真爛漫さとずれたところが、ダミアンの心に少しずつ変化をもたらしているのがよくわかる。
アーニャとダミアンの関係性の微妙な変化も今後の物語の楽しみの一つだ。
ロイドとボンド。優しさ溢れるエピソード
ボンドは予知能力を持った大型の犬で、フォージャー家の一員だ。
そんな、ボンドの優しさがわかるエピソードが展開される。
街中を散歩していたロイドとボンド。
ボンドは予知能力で火事を察知し、ロイドと共に現場にかけつける。
そこには燃え盛る一軒の家。
炎の中に飛び込んでいくボンド。
ロイドは戸惑いながらもボンドの後を追う。
建物の中には、なんと子犬が一匹取り残されていたのだ。
無事に子犬を救い出す二人。
お手柄のボンドだが、さらに犯人を見つけ出すという大手柄をたてる。
ボンドが子犬を思う優しさとボンドを気遣うロイドの優しさ。
たくさんの優しさに溢れた良いエピソードだった。
個人的に注目してほしいのが水に濡れて、ほっそりとしたボンドの姿だ。
普段のふわふわの毛並みとのギャップに多くの読者が笑うことだろう。
ほっそりとしたボンドを見て笑いをこらえきれていないロイドという絵もなかなかにレアなもので新鮮だ。
ボンドとロイドの仲がより深まった素敵な話にほっこりした。
まとめ
スパイファミリー9巻の感想と批評を紹介した。
9巻は豪華クルーズ編の結末が描かれ、そのあとにいつもの日常編が描かれている。
長編映画のようなハラハラドキドキの展開から、普段のコメディー色の強い日常に戻ってくることができ、どこかほっとした気持ちだ。
今後も家族の賑やかな日常を見届けたいが、先ほど紹介したヨルのセリフなど、そういう訳にはいかない予感を感じさせる巻だった。
これからも穏やかな日常とスリリングな非日常が繰り返されていくのだろうが、家族にはリゾート地でのように幸せに笑っていて欲しいと切に願うものだ。
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