【ネタバレあり】漫画「SPY×FAMILY」8巻の批評と感想。

「SPY×FAMILY(スパイファミリー)」は、凄腕スパイの父親と、殺し屋の母親、そして超能力者の娘で構成される偽りの家族である。

皆、それぞれの思惑があり、それを隠しながらどこにでもいるような家族を演じている。

一見、シリアスに聞こえるが、豊かな表情や、擬音の巧みさなど、中身はコメディーチックで読者を笑わせてくれる。
シリアスとコメディーのバランスは絶妙で、メリハリのある展開が読者を「SPY×FAMILY」の世界に引き込んでいる。

アニメ化も決定しており、勢いに乗っている本作。
2022年放送開始予定となっている。
PVは「SPY×FAMILY」のスパイもの独自のスタイリッシュな世界観で描かれており、期待が高まる。
加えて、最後、ロイドの「だめだ理解できん」の憔悴しきった顔で締めくくられるオチに「SPY×FAMILY」のユーモラスな部分が表現されていて、ほっこりする。

今回ふれる8巻だが、家族についてのそれぞれの関係性について語られている。
今までの巻でも家族についてふれている個所は多くあったが、今回はより踏み込んだ内容だ。
特にヨルと家族の関係にフォーカスが当たっている。

コメディー部分で読者を楽しませながら、家族と言う存在を必死に模索している3人の姿が丁寧に描かれている。

その中でも気になったのが、「すれ違い」を見事に使いながら、各キャラクターの内面に迫っていることだ。

このすれ違いは今までの話でも存分に使われていたが、この巻では特に顕著だと思われる。

今回は、すれ違いに注目して、各キャラクターの家族への関わり方を見ていきたい。

ロイドのアーニャに対するすれ違い

ロイドの正体は西国の凄腕スパイ「黄昏」である。
百戦錬磨のプロ中のプロだ。
しかし、父親業に関してはど素人も同然だった。
夫、父親の役割を必死に果たそうと、最適解を見つけようとしているが、たいてい空回りしている。

今回もアーニャの言動に振り回されたあげく、こう結論づける。

『アーニャの心には巨大な闇が巣喰っている。彼女の心のケアをするためにもハンドラー(ロイドの上司)は家族旅行という和平工作任務を自分に課したのだ』

ここを読んだ時は思わず、吹き出しそうになったが、ロイドはいたって真面目に考えた結果の結論である。

超能力者であるアーニャは他人の心を読むことができる。
ここでもロイドの心を読み取り、「ちちはいつもまとはずれだ」と心の中でつぶやいている。

ロイドは家族に対して理屈で攻めようとしている時点でずれているのだが、ヨルやアーニャと触れ合うことによって、変化の兆しを見せている。

現にロイドは、アーニャの「自分を楽しませるためにもっとわくわくを表現して欲しい」という要望に応え、店の洋服を試着し、とてもカッコ悪いがハッピーな父親像を演じようとしていた。

ロイドなりに必死になって、家族を演じようとしているのだ。
このシーンは明らかにコメディーだが、ロイドのずれたところが活かされ、彼が家族に向き合う重要な場面の1つとなっている。

ヨルのいばら姫に対するすれ違い

ヨルは表向きは、ロイドの妻であり、アーニャの母親だが、凄腕の殺し屋いばら姫という裏の顔を持つ。

今回の豪華客船の旅ではいばら姫の仕事の現場にロイドとアーニャがいるという、正体がばれるかもしれない危険な状況が続いている。
その中でヨルは家族について考えるのであった。

本当はロイド達と一緒に船の旅を楽しみたかった。
セリフはないが、そんな思いが表現されているシーンがある。

刺客との戦闘で、怪我をするのを恐れていたのは、言い訳できないほどの酷い怪我を負ったら、もうあの家にはいられなくなってしまうという思いがあったからだ。

今まで国のため、弟の幸せのためにと戦ってきたいばら姫の存在が彼女の中でずれていく。

それほどまでに今の家族がかけがえのないものになっていたのである。

今までも何度かヨルのいばら姫の仕事に対する迷いは垣間見えていたが、今回は特に重要視されている。

このずれは今後も大きな影響を与えるのではないかと正直心配だ。

アーニャのロイドとヨルに対するすれ違い

アーニャはたびたび、妄想をするが、その中のロイドとヨルは実に間抜けと言うかだいぶ抜けた存在となっている。

読者からはコメディーに見えるだけかも知れないが、ロイド同様、家族のために彼女もいたって真面目に考えているのだ。

彼女の中ではロイドたちが、単純化された存在になっている。
だが、案外的外れではないことが、鎖鎌使いのバーナビーとの戦いで証明される。

ヨルが上手く立ち回れるように、サーカスの人だと周りに伝えたのだ。
それによって乗客たちもイベントだと思って、安心する。

アーニャが繰り広げたつたない妄想が、確かにロイドやヨルのピンチを救っているのだ。
確かに現実とはずれた妄想だが、どこか的を得ているのだ。

その絶妙なずれが読者を笑わせ、また物語にメリハリをつけてくれている。

アーニャの二人に対するずれには家族への愛情が見て取れる。
中盤の食事のシーンでも3人一緒が良いと心情吐露しているように、家族はいつでも一緒にいたい存在なのだ。

まとめ

この作品の面白さの一つにすれ違いがあると思う。
皆、秘密をそれぞれ持っていて、それを隠している。

そこから生み出されるずれは読者の予想を良い意味で裏切ってくれる。

作中のずれに注目しながら、読んでみると新たな発見があるのではないだろうか。

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