「それ町」こと漫画「それでも町は廻っている」は2005年から連載がスタートし、2016年に完結しました。
独特の世界観で多くの読者を魅了した漫画作品のひとつなのですが、今回はそんな漫画「それでも町は廻っている」の作中の名言を名シーンと共にご紹介していきたいと思います。
- 「神様ありがとうございます!ありがとうございます!!」「そんな無慈悲な!!この世には神も仏もいないのかよ!!」
- 「その…家も学校も商店街もみんな今の感じが続くといいなっ……っていうか……」「誰にも嫌な事が起こらず誰ひとり欠けてほしくなくて……」
- 「プラスに働かせるよりマイナスに働かせた方が有効だったりするんです 私なら武器をそういう風に使います」
- 「べつに一生のハジになるわけでなし なんでもやっといた方が得ですよ!」
- 「嵐山さんは多分…私が一番行きたかった場所にいるんだから…」
- 「ハンバーグとチーズとピクルスが入ってないしょんぼりバーガーと同じだ 君は!」
- 「エロ本が ふたりの女子にバレたから 今日はサナダ記念日」
- 「ありがとう」
「神様ありがとうございます!ありがとうございます!!」「そんな無慈悲な!!この世には神も仏もいないのかよ!!」
「それでも町は廻っている」の主人公となるのは、嵐山歩鳥です。
その歩鳥の幼馴染である真田広章は歩鳥に対して、恋心を抱いています。
鈍感な歩鳥と広章のやり取りはどれも面白いのですが、これはふたりでバスに乗っているときの広章のセリフになります。
ある日のこと、歩鳥と広章がバスに乗っていると歩鳥が広章にもたれかかるような形で眠ってしまいます。
広章にとっては最高のシチュエーションなのですが、その幸せをかみしめた瞬間、無慈悲にもバス停到着のアナウンスが流れるのです。
神に感謝したその直後に神も仏もいないのかと嘆く広章に思わず笑ってしまった読者の方は多いはずです。
「その…家も学校も商店街もみんな今の感じが続くといいなっ……っていうか……」「誰にも嫌な事が起こらず誰ひとり欠けてほしくなくて……」
歩鳥がこれからのことを考えたときに出てきたセリフです。
基本的に「それでも町は廻っている」の世界というのは、本当に優しい世界です。
もちろん、シビアというかややビター気味な展開や結末もなくはないのですが、それでも優しい世界観が「それでも町は廻っている」の魅力のひとつになっています。
この歩鳥のセリフも「誰にも嫌な事が起こらず」という部分に歩鳥の優しさを感じます。
今が楽しかったり充実していたりすると誰だって「今がずっと続けばいいのに」と思ってしまうものです。
歩鳥の場合には今の感じが続いてほしいというだけではなく、そこにいるみんなに嫌なことが起こらないことも同時に願っているわけです。
人のことを自分のことのように考えて素直に願えるという部分には、歩鳥の心の綺麗さが表れているように思えます。
個人的にも優しくて、大好きなセリフです。
「プラスに働かせるよりマイナスに働かせた方が有効だったりするんです 私なら武器をそういう風に使います」
歩鳥の友達である辰野トシ子は広章のことが好きで、たびたびアプローチをしようとするのですが思うようにいきません。
そんなときに映画の試写会に当選します。
当然、トシ子は広章を誘おうとするのですが、結局誘うことはできませんでした。
その映画の試写会は歩鳥に譲ることにしました。
すべてを諦めてしまったのかと思いきや、試写会を歩鳥に譲ることでトシ子はアルバイトをしている喫茶店シーサイドで広章とふたりっきりになることに成功したのでした。
歩鳥とトシ子、広章は3人になることも多いのですが、トシ子は歩鳥を試写会に行かせることで広章とふたりっきりの時間を満喫したわけです。
もともとトシ子はアホっぽい歩鳥と対照的な感じで描かれることが多いのですが、このセリフからもトシ子の賢さがよくわかります。
これは恋愛テクニックとしてはもちろん、人生においても役立ちそうな考え方です。
「べつに一生のハジになるわけでなし なんでもやっといた方が得ですよ!」
これは歩鳥が先輩である紺双葉を町内の秋祭りに誘ったときのセリフです。
歩鳥はコロコロと表情が変わりますし、感情が表情に出やすいキャラクターです。
そんな歩鳥に対して、双葉は表情があまり変わらないクールなキャラクターとして描かれています。
そのため、歩鳥は双葉があまり楽しめていないのではないかと思ってしまうのです。
あまり楽しめていないのであれば何とか楽しませようと、歩鳥は歩鳥なりに一生懸命頑張ります。
もちろん、双葉は双葉で楽しんでおり、それが表情にあまり出ないだけです。
そういった中で歩鳥が盆踊りに双葉を誘います。
これはそのときのセリフになります。
最初、双葉は嫌がるのですが、結局は歩鳥と一緒に盆踊りに参加することになります。
何でもやっておいたほうがいいというのは、何でも楽しめている歩鳥だからこそ説得力のあるセリフでもあります。
「嵐山さんは多分…私が一番行きたかった場所にいるんだから…」
歩鳥とトシ子と針原春江は双葉の後輩でもあります。
春江は卓球部の先輩として双葉を尊敬していますし、だからこそ仲良くなりたいという気持ちもありました。
ただ、春江とは関係のないところで双葉は双葉で人間関係の悩みを抱えていました。
仲の良かった相手から突然悪意を向けられ、ショックを受けた双葉は心を閉ざしてしまいます。
春江はその閉ざした心を開けてほしかったのですが、春江にはできませんでした。
ただ、歩鳥はあっさりと双葉の心を開いてしまったのです。
もちろん、春江は歩鳥のことも友達として好きです。
だからこその複雑な気持ちもあるでしょう。
優しい世界ではあるものの、ちょっと切ないセリフです。
「ハンバーグとチーズとピクルスが入ってないしょんぼりバーガーと同じだ 君は!」
警察官の松田旬作は歩鳥とはことあるごとに衝突しています。
その旬作の名言として挙げるのがこのセリフです。
おそらく「それでも町は廻っている」の読者の方であれば、一度はこのセリフを使ってみたいと思うはずです。
しょんぼりバーガーという表現が本当に的確で、使いたくなります。
「エロ本が ふたりの女子にバレたから 今日はサナダ記念日」
広章の家にはパソコンがあるからと、歩鳥とトシ子が広章の部屋を訪ねます。
ただ、広章も年頃の男の子なのでパソコンの中には女子に見られてはいけないデータがたくさん保存されていました。
それを片思いしている歩鳥のために削除するのですが、棚の上にあったエロ本が歩鳥とトシ子に見つかってしまいます。
トシ子はそういうものはあるだろうと思っていたようですが、歩鳥は衝撃を受け、怒って帰ってしまいます。
そのとき、広章の心の中で読まれたセリフがこれです。
短いセリフではありますが、年頃の男の子の絶望感がこれでもかとぎゅっと詰まっています。
そして、その笑いのセンスも抜群です。
「ありがとう」
双葉が引っ越すことになり、歩鳥はその手伝いをします。
実はこの引っ越しに関しては歩鳥のほうでいろいろと勘違いがあったのですが、引っ越しという節目のタイミングでお互いにいろいろとこみ上げるものがありました。
その中で普段はクールな双葉が素直に「ありがとう」と感謝の言葉を伝えるシーンにはぐっと来たという方も多いでしょう。
実際にこの言葉には歩鳥も大量の涙を流します。
この感動シーンがあった後で歩鳥の中での誤解が解けていくギャップも含めて印象的なシーンです。
「それでも町は廻っている」という作品はこういった緩急のつけ方がうまいので、余計に何でもないセリフが印象に残ってしまうのかもしれません。