月刊少年マガジンで連載されていた『四月は君の嘘』。
そこからアニメ化や実写映画で話題になりました。
今回はその「四月は君の嘘」の何が良かったか、何が悪かったかを考えていきます。
「四月は君の嘘」とは
『月刊少年マガジン』にて2011年から2015年まで連載されていました。
そして、2014年にアニメ化して、2016年に実写映画化しました。
本編は、中学校の学生生活を舞台にしています。
主人公の有馬公正は母親を亡くしたショックでピアノの音が聞こえなくなってしまい、音楽の道から離れてしまいます。
そこで同じ学校のヴァイオリニストの宮園かをりと出会い、有馬はその伴奏者としてピアノへ向かっていく様を描いています。
「四月は君の嘘」の総評
ここからは、全11巻まである「四月は君の嘘」について総評を行っていきます。
「四月は君の嘘」の良かった点
・音がなくても演奏シーンが楽しめる
・成長していく主人公
・最終巻
音がなくても演奏シーンが楽しめる
「四月は君の嘘」はヴァイオリンやピアノの演奏シーンが多く、それぞれの奏者がどれだけすごい演奏をしているのかが描写で伝わってくるので、読者がイメージがしやすくなっています。
特に第1巻の宮園かをりの演奏シーンでは、見開きをふんだんに用いて読者を引き込ませようとしています。
そこから観客や有馬の驚きから「この演奏はすごい」と勝手に思ってしまいました。
また、ヴァイオリンを弾く指さばきや流れるようなピアノの描写からもすごさが読み取れますね。
他のシーンでも演奏のすごさを読み取ることが出来ます。
それは、学園祭で有馬と相座凪との連弾シーンで、最初は2人の息があってとても和やかな演奏をしているのですが、有馬が練習とは全然違うリズムや雰囲気を出しており、怖いと思わせるような描写がありました。
このシーンでは、今まで自分探しをしていた有馬が、自分の個性を出して演奏しているという感動と、本気を出せば音を自在に自分の物に出来るという恐怖の2つが一気に押し寄せてきました。
そして、負けじと相座凪が自分のペースに持っていこうと踏ん張って、結果的に競い合ってお互いを高めている演奏にとても感動しました。
演奏中に2人の目が合う場面では、伴奏中に心が通じ合っていると思わせるのがよかったです。
成長していく主人公
主人公の有馬公正は母親を亡くしたショックでピアノの音が聞こえませんでした。
日常生活でも自分に自信がなく、見るもの、聞くもの、感じるものがモノトーンに見えると言っていました。
そこで宮園かをりと出会い、その世界がカラフルになっていきます。
作中では有馬の演奏シーンがありますが、物語が進むにつれ、かをりのためにピアノを弾いたり、母親のトラウマを払拭することで、ピアノの音が聞こえるようになっていきます。
特にかをりのためにピアノを弾いているシーンでは、今まで何のためにピアノを弾くのかわからなかった有馬がかをりのために弾いているので、自分の気持ちを素直に表現できています。
このように有馬が少しずつ自分の気持ちを表に出してきて、素晴らしい演奏を繰り広げるシーンは胸を打たれました。
特に「四月は君の嘘」では、読者が主人公の有馬に自分を重ね合わせることは少ないと感じているので、一人の人間の成長物語を見ていると思いながら見ると、感じ方が変わってきますね。
最終巻
誰もが感動した最終巻。
かをりの手術を控えてコンクールに臨む有馬。
とてもピアノを弾ける状態ではなく、ピアノの前で顔を伏せてしまいます。
そこで、同級生の椿のくしゃみによって落ち着きを取り戻し、ピアノを弾き始めます。
今まで人生で関わってきた人、豊かにしてくれた人のことを考えて弾く演奏は、観客も夢中です。
そこからまるでかをりと対話しているかのように演奏を続けます。
自分の想いを全てかをりに届ける気持ちが届いたのか、かをりと一緒に演奏しているかのような描写が描かれています。
かをりのヴァイオリンと有馬のピアノが合わさった演奏は、まるで私たちに聞こえてくるような感じがしますね。
そして、演奏の終盤ではかをりが消えてしまいます。
本当に心が通じ合っているのか、息ぴったりな2人の演奏はとても感動させられ、かをりが消えていく場面では、落胆とその後からくる寂しさでいっぱいになりました。
そして、最後にかをりが有馬に宛てた手紙のシーンです。
今までのかをりの有馬への想いが全て記されています。
本来であれば直接伝わるはずだった内容なので、少し悲しくなりますが、最後の同封された宝物を見て、ふと笑顔にさせられますね。
その宝物とは、かをりが幼少期、コンクールで撮った写真で、偶然有馬が写り込んでいます。
この写真を宝物にしているという点からそういうことかと納得させられました。
「四月は君の嘘」の悪かった点
・クラシック曲が分からない
・キャラクターの深堀が少ない
クラシック曲が分からない
「四月は君の嘘」はクラシック曲が分からなくても楽しめる作品です。
ですが、作中でショパンやベートーヴェンなどの曲が登場し、それを理解することが出来ない点が残念でした。
なので、アニメでどのような曲かを知る機会が多かったです。
ただ、これについては個人差があるので、とても悪い点とは言えないですね。
キャラクターの深堀が少ない
「四月は君の嘘」は主に有馬、かをりと同級生の澤部椿、渡亮太がメインとなっており、さらに有馬のライバルとして相座武士、井川絵見が登場します。
主な深堀は前の4人が多く、ライバルの2人の深堀は少ない印象を受けました。
ただ、別冊小説で二人が有馬に対してどういう思いを持っていたのかを知ることが出来たので、それは嬉しかったです。
総評
全体を通して「四月は君の嘘」と言う作品は青春、恋愛、音楽の3つの要素を取り入れた作品であり、演奏シーンでの描写、登場人物の感情表現がとても素晴らしかったです。
全体を通しての感想
全体を通して「四月は君の嘘」は読みやすい作品だと感じました。
全11巻であることもあり、簡単に読み始められるのではないかと感じます。
物語としては、1巻を読んでからだと、有馬とかをりの2人でコンクールを制覇していくのかなと思っていたので、この終わり方には驚かされました。
また、上記の通り、有馬の同級生やライバルの掘り下げが少なかったので、本編で見たかったという希望はあります。
さらに、有馬が成長していく様を見ているのは、とても面白く、演奏シーンでは目頭が熱くなりました。
もちろん、最後の演奏、手紙のシーンでは涙が止まりませんでした。
今までかをりが内に秘めていた思いを全て知れたのが印象的です。
また、悪い点でクラシックが分からないと挙げましたが、曲が分からなくても、奏者の感情や観客の表情でどんな音楽が流れているのが想像できるのが漫画の醍醐味ですね。
もし、自分でどんな音楽なのか想像してもアニメでどんな音楽が流れていたのか確認できるのも嬉しかったです。
最後に、かをりの手紙で「四月は君の嘘」というタイトルの伏線回収を行っているので、何度も見返したくなりますね。
まとめ
「四月は君の嘘」について批評を行ってきましたが、どうでしたか。
演奏シーンの読者に問いかけてくる描写や最終巻の演奏、手紙のシーンはとても素晴らしかったですね。
この作品は何度読み返しても素晴らしい作品なので、気になったら読んでみてください。