映画「三度目の殺人」の批評と感想。

みなさんは是枝裕和監督の作品を観たことがあるでしょうか?

主役を演じた柳楽優弥が第57回カンヌ国際映画祭において史上最年少で最優秀主演男優賞を受賞したことでも話題となった2004年公開の映画『誰も知らない』や、子供の取り違えを題材にした2013年公開の映画『そして父になる』、そのほかにも、腹違いの妹と三人の姉の絆を描いた作品である2015年公開の映画『海街diary』など、是枝監督は国内だけでなく海外でも話題となる作品を多く生み出しています。

そんな是枝監督が、『そして父になる』で主演を務めた福山雅治と再びタッグを組んだ作品が映画『三度目の殺人』です。

スリル満点のミステリーでも、最後にはすべての謎が明らかになるようなサスペンスでもなくて、じっくり考えながら観る映画、それが今回ご紹介する映画『三度目の殺人』でしょう。

「映画を観ながら哲学したい!」、そんな方に本作はかなりオススメです。

2017年に公開されたミステリー・ヒューマンドラマの映画『三度目の殺人』。
この作品は、是枝監督のオリジナル脚本による映画で、第74回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門にも正式出品された作品となっています。

ここでは、そんな映画『三度目の殺人』について、著者の感想や批評などを書いていきたいと思います。

はじめに、映画『三度目の殺人』のストーリーを大まかに見ていきましょう。

裁判に真実は必ずしも必要ではないと考える弁護士の重盛朋章。
そんな重盛が、殺人の前科がある三隅高司という人物の弁護を担当することになったことから物語は始まります。

強盗殺人の容疑で逮捕された三隅の刑を死刑ではなく無期懲役にまで減刑させるため、重盛は三隅と被害者の周りを調べ始めるが、調べを進めるにつれ事件の中に違和感を抱き始めます。
三隅が会うたびに供述を変えるのです。
強盗殺人だったはずが、週刊誌のインタビューでは被害者の妻に頼まれたと話す三隅。
加えて、三隅と被害者の娘・咲江との間に接点があったことが咲江の話から明らかになるのでした。

三隅と咲江の関係について調べていく重盛は、一つの秘密にたどり着きます。
事件の調査、そして三隅との接見を重ねるにつれ、得体の知れない三隅の人格に呑み込まれていく重盛。
弁護するためには真実は必要ないと信じていた重盛が三隅に出会い、初めて真実を知りたいという気持ちを抱きます。
そして、真実を探った先に待ち受けている本当の真実とは何なのか。
観る人に委ねてくる物語。

この作品の感想を一言で言うと、「深い!」です。

それでは、具体的に著者目線の注目ポイントを中心に話していきたいと思います。

映画『三度目の殺人』を魅力的な作品にしているのは、なんと言っても細かく作り込まれているストーリーでしょう。

本作のストーリーは一見すると何を訴えたいのか、よく分からないものかも知れません。
殺人事件の真犯人を見つける物語でも、エンディングでどんでん返しが用意されているものでもないんです。
だけど、どこか観る人の概念に訴えてくるようなメッセージが込められていると著者は思うんです。

この記事の冒頭で「哲学」って言葉に触れましたが、この作品は深く考えながら観る映画になっています。
ですので、そういうことが苦手な方は退屈してしまうかも知れませんね。
深く思考を巡らしながら鑑賞できるのは、ものすごく丁寧に撮影されているからでしょう。

映画の中には原作となる小説や漫画を背景に持つ作品も非常に多いです。
それに対して、原案から脚本、さらには編集そして監督まで、本作では全てを担当している是枝裕和はまさしく映画のプロなんだと思います。

そんな本作の中で最大の見どころと言えば、接見室でのシーンでしょう。

この映画では、三隅と重盛が会う接見室でのシーンが多くあります。
接見室という狭い部屋で、ただ話すだけの内容だが、それこそが本作のメイン舞台となっています。
特に見逃せないシーンが、物語の後半、接見室で重盛が三隅のリズムに呑み込まれていき熱くなるシーンなんですが、このシーンだけで10分ほどもあって、この部分が最大の見どころとなっています。

また、本作の中には注目して頂きたい表現があるんです。
それは「器」という言葉です。
映画では何回かこの表現が出てくるんですけど、これが謎の男・三隅を解明するキーになっていると著者は思うんです。

以前、北海道で三隅を捕まえた警察官は三隅のことを「空っぽの器のようだ」と表現します。
また、映画終盤では重盛も接見室で三隅に「あなたは、ただの器?」と言っているんです。
本人に動機があるのではなく、周りの思いを器として受け取って殺人を犯したということなんだと思いませんか?

また、この映画では回収されない伏線が非常に多いです。
強盗殺人放火事件の真犯人は誰なのか、タイトルに三度目とあるが三回目の殺人とは何なのか(三隅にとって山中社長殺害は二度目の殺人)、十字架の形の意図とは、三隅と咲江の具体的な関係について、重盛と三隅そして咲江の三人で雪遊びをする想像のシーンなどなど、たくさんあるのです。

映画を観終わって、はっきりした結論にたどり着けるわけではなくて、むしろ、物語が進むにつれ二転三転する三隅の言動があって、何が本当で何が嘘なのか、どんどん分からなくなっていきます。
そして最後まで誰が山中社長を殺したのか分からないのです。

たくさんの謎を残したまま終わる作品。
観客に委ねることで、観客と共同で完成させる作品になっているのだと著者は思います。
ですので、考える映画であることを何度も強調しているんです。

このような作品を作り上げるには、演技力に長けた役者たちを揃える必要があるが、本作はそれを十分にクリアしていると言えるでしょう。
この映画のメインキャラクターである重盛、三隅、咲江役はそれぞれ福山雅治、役所広司、広瀬すずが演じています。

テレビドラマにも多くの出演作がある福山の代表作といえば、当初、『ひとつ屋根の下』だったけど、最近では『ガリレオ』じゃないでしょうか。
それくらい浸透していますよね。
『ガリレオ』を映画化した二つの作品も大ヒットでした。
ちなみに、映画ガリレオ二作目の『真夏の方程式』と福山が初めて是枝作品に参加した作品『そして父になる』は同じ年に公開されています。
また、広瀬も是枝作品には二度目の出演で、前作と比べて役者として凄まじく成長しているのが一目でわかりました。
広瀬は役者としてまだまだ成長し続ける素質があるので、今後も注目していきたい役者です。

そして、本作が初めての是枝作品への出演だった役所広司は、本当に数えきれないくらい多くの映画に出演している、まさに日本を代表する役者の一人と言えます。
演技派の役所のほかに三隅をここまで謎の男として表現できる役者はいないでしょう。

周りのキャラクター勢を演じる役者たちも、斉藤由貴や吉田鋼太郎、満島真之介そして市川実日子といったように味のある方々が集まっていて、物語に深みを出しています。

映画で扱われている事件って、映画を観ている時は、「なんて怖い事件なんだろう、すごいストーリーだな」って思うんじゃないでしょうか。
けど、著者は是枝監督が作り出した映画の中の事件は、単なる空想ではないと思うんです。
つまり、我々がテレビで目にする事件の話、それらの中にも様々な物語があるんだと思うんです。
この映画を見た後に、是非よく考えて見てみてください。
誰かが逮捕されたニュース、ある裁判のニュース。
もしかしたらニュースの奥には、公表されていない、または、裁判では話されていない真実があるかもしれません。

今から初めて映画『三度目の殺人』を鑑賞する方は、見終わっても分からないことがあったり、難しく感じたりするかも知れません。
ですが、この記事を読んだ方は、ちょっとだけ頭の中が整理されているんじゃないでしょうか。

また、この映画は、一度や二度ではなく何度も観て味わう作品だと著者は思っているので是非回数を重ねて鑑賞してみてください。

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