【ネタバレあり】映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の批評と感想。

アメリカでヒッピー文化が隆盛を極めていたころ、とある事件が世間を震撼させました。
それは、「テート・ラビアンカ殺人事件」と呼ばれる、連続殺人事件です。
首謀者は、ヒッピーのコミューンを率いていたチャールズ・マンソン。

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、この「テート・ラビアンカ殺人事件」をモデルとして作られた映画作品です。

この記事では本作の批評と、実際に鑑賞した感想を書いていきます。

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の作品概要

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、2019年に公開されたアメリカのスリラー映画です。
60年代後半のアメリカを舞台としており、実在の集団や人物が登場していることが特徴です。

監督は、「キル・ビル」や「パルプ・フィクション」のクエンティン・タランティーノ。
主演は多数の主演作品を持つ名俳優のレオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの二人が務めています。

その他、キーパーソンにダコタ・ファニングを起用するなど、一流の俳優陣が勢ぞろいしている作品です。

あらすじ

俳優のリック・ダルトンは、かつて西部劇で名前を馳せたスターでした。
しかし今は、テレビ業界の流れに乗れず落ち目となっています。
それは、リックの親友兼専属スタントマンを務めるクリフも同じでした。

リックが済む豪邸の隣に、一組の夫婦が越してきます。
夫は時代の寵児であるロマン・ポランスキー監督。
妻は、若手女優としてキャリアを重ねるシャロン・テートです。
リックは、自身と正反対の境遇にある二人を羨ましく思っていました。

リックの今の仕事は、若手俳優を盛り上げるための悪役です。
リックは自身のキャリアを嘆きますが、相棒のクリフに励まされ、見事な悪役ぶりを見せたのです。

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」批評~爆発的暴力とタランティーノ流の仕掛けが映える作品~

数多ある映画の中には、苦手な人は絶対に見られないような、激しい暴力描写が含まれているものがあります。
そしてそれは、今回取り上げているクエンティン・タランティーノ監督作品に共通して言えることでもあります。

「イングロリアス・バスターズ」や「キル・ビル」、初期作品ではありますが「パルプ・フィクション」。
これらを見たことのある人であれば、その独特な、特徴的な暴力シーンを思い浮かべることができるはずです。

タランティーノ監督が描く暴力は、まるで炸裂する爆弾のよう。
ふとした拍子に破裂して、一旦そうなってしまえば止めることはできません。
その激しさは、一種のカタルシスさえ感じるほどです。

こうした暴力描写の特徴は、今作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」にも共通しています。

今作には、2人の主人公が存在しています。
それは、レオナルド・ディカプリオ演じるリックと、ブラッド・ピット演じるクリフです。
物語全体の主人公という点では、リックに軍配が上がるでしょう。
しかし、タランティーノ監督「らしい」暴力描写という点では、クリフが凄まじい役割を果たしています。

クリフの人物像を考えてみましょう。

クリフは飄々とした人物で、リックに比べ達観した部分がある男性として描かれています。
親友でもあるリックとの生活の違いにクサることもなく、彼の世話役を着々とこなしています。
時には、荒れるリックを宥めることすらあるのです。

しかし、彼には暗い噂がつきまとっています。
その噂とは、かつてクリフが妻を殺したことがあるというもの。
この噂話の後に、クリフの過去の回想が挟まれますが、彼が本当に妻を殺したのかといえば、その真偽は定かではありません(幾度も逮捕を逃れた、という過去に言及していることから、100%ではなくとも、ある程度の真実味はありそうです)。
そしてその噂は、クリフの仕事にも悪影響を及ぼしています。

最初のうち、クリフは暴力的とは決して言えません。
しかし物語が進むにつれ、過激な一面が見え隠れします。
それが最初に表れたのは、マンソンファミリー(実在の集団)の一人プッシーキャットに連れられ、彼らが住み着いている農園を訪れたとき。
クリフが乗ってきた車のタイヤをパンクさせられ、それを無理やりファミリーの男性に修理させたのです。

そして、クリフの暴力性が最高潮に達するのは、物語の最後、殺害対象をシャロン・テートからリックに切り替えたマンソンファミリーがリック邸に押し入ってきたときです。

その描写は、まるで極限まで溜め切ったフラストレーションを全て放出する様に似ています。
完膚なきまでに相手を叩きのめすまで終わりません。

その後、リックがファミリーの一人を火炎放射器で焼く描写が入りますが、その激しさはクリフに比べ、かなり控えめなものと言えるでしょう。

そして、このタランティーノ風味溢れる暴力描写の中に、タランティーノ監督らしい仕掛けも隠されています。

今作は、実際にあった事件を下敷きにした作品です。
その事件の名前は「テート・ラビアンカ殺人事件」。
「ラビアンカ」は作中に登場しませんが、「テート」とはシャロン・テートのことを指しています。

殺害対象をシャロン・テート(実在)からリック(架空)に変えたということは、「実際の事件が起きなかった世界線」を描いているということになります。
その上、マンソンファミリーの企みは失敗したことになりますので、事実を元にしながらも、大きく異なる物語を描くという複雑な様相を呈しているのです。

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、どんでん返し映画だと言われることがあります。
その理由は、こうしたタランティーノ流の仕掛けにあるのでしょう。

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」感想~ダブル主演に魅せられる~

飄々として大人の余裕と力を感じるクリフに、不安定でありながら素晴らしい役者としての底力を見せるリック。
この二人を演じたブラッド・ピットとレオナルド・ディカプリオ。

今作「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」は、このハリウッドを代表する名俳優二人が初めてダブル主演を果たした作品です。
そして、その二人の演技に、ひたすら魅せられる作品でもありました。

レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットは、双方共に主演作の多い俳優です。
その実力は確かなもので、見ている側を物語の世界にぐいぐいと引き込んでくれます。
レオナルド・ディカプリオは当時の演技の世界に。
そして、ブラッド・ピットはマンソンファミリーの放つ不穏な臭いのする当時の情勢に。

二人はお互いに、凄まじい存在感を放っています。
ダブル主演という言葉にふさわしく、どちらかが影に隠れるということもありません。
お互いが一緒にいようと別々にいようと、それぞれが確固たる存在として、登場人物というよりもしっかりとした個人として、そこにいることを感じさせるのです。
その上、お互いの存在感を盛り立ててさえいます。

ここに、ダコタ・ファニングやアル・パチーノといった俳優陣が妖しい演技を見せ、物語世界をより深いものとしています。
特に、ダコタ・ファニングの演技には激しいものがあり、その目を忘れることができません。

タランティーノ監督の独特の世界観に、こうした名俳優の素晴らしい演技が加わってくる。
その破壊力は「とてつもない」の一言であり、一度見れば虜になること請け合いです。

まとめ

クエンティン・タランティーノ監督の第9作目であり、レオナルド・ディカプリオとブラッド・ピットの初ダブル主演作品である「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」。

その内容はタランティーノ風味に溢れながらも、それぞれの個性が際立つ作品でもありました。
タランティーノファンも、ブラッド・ピットファンも、レオナルド・ディカプリオファンも皆楽しめるものでしょう。

一つだけ、暴力シーンが苦手な人は見ない方が良いかもしれません。
他のタランティーノ作品と同じように、激し目なシーンが含まれているからです。

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