【never young beach】1stアルバムから4thアルバムまでを解説。

2014年に結成された「never young beach(ネバーヤングビーチ)」は、「細野晴臣」などの日本の古き良き音楽や、「マック・デマルコ」や「The Strokes」などのUSインディーロック・ポップに影響を受け、そのどこか懐かしいサウンドで一気にインディーシーンの主役に躍り出て、一躍注目を集めるバンドになった。

メンバー

「never young beach」の歴史は、2014年の春に東京で結成された安倍と松島(元メンバー)による宅録ユニットから始まることになる。
同年に、既に決まっていたライブに出るため、阿南・巽・鈴木の3人が加入。
そのライブの際は「Yashinoki Flamingo」というバンド名で出演。
その後、「never young beach」に改名。
ファンからは「ネバヤン」という愛称でも呼ばれている。

数々のライブを経て、レーベルメイトである「Yogee New Waves」らと共にインディーシーンで一躍注目を集めるバンドへと成長。
2015年にはメンバーも愛するフジロックデビューを飾る。
バンドにとって初のフジロックは、新人にも関わらず「ROOKIE A GO GO」ステージではなく「苗場食堂」ステージへの出演という異例の形になった。

安部 勇磨

ボーカル・ギター。
1990年生まれで東京出身。
ほぼすべての楽曲の作詞作曲を務めている。
俳優の高橋一生を兄に持つ。

阿南 智史

ギター。
1992年生まれで福岡出身。
ロックバンド「PAELLAS」(2019年に解散)のギターとしても活動。

巽 啓伍

ベース。
1990年生まれで兵庫出身。

鈴木 健人

ドラム。
1991年生まれで東京出身。

松島 皓(元メンバー)

ギター。
1991年生まれで埼玉出身。
2018年に脱退。

トロピカルなサウンドが響き渡る1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」

2015年にリリースされたネバヤンの1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」。
このアルバム名を見て、何かを感じた方も多いのではないだろうか。

「はっぴぃえんど」や「Yellow Magic Orchestra」での活動でも知られ、メンバーもリスペクトする細野晴臣が1973年にリリースした名盤「HOSONO HOUSE」である。

デビュー当時から「西海岸のはっぴぃえんど」と称されていたネバヤンは、はっぴぃえんどや細野晴臣の楽曲などにも見られる、どうでもいいような日常の風景や、そんな日常の中で抱いたちょっとした気持ちを歌っている。
そしてこれは1stアルバムに限った話ではない。
細野晴臣をリスペクトし慕う、ボーカルの安倍の描くラフな歌詞の乗った心地の良いメロディは、「はっぴぃえんど」から「サニーデイ・サービス」などのバンドへも脈々と受け継がれる、土着的なDNAのようなものが感じられる。

ライブでも必ずと言っていいほど演奏するネバヤンの代表曲、「どうでもいいけど」から始まる本作は、リバーブのかかったトリプルギターの生み出すトロピカルなサウンドが印象的である。

また、こちらも代表曲の1つである、乾いたリードギターの軽快なメロディのバッキングが印象的な「あまり行かない喫茶店で」や、宅録ユニット時代の楽曲であり、ローファイな雰囲気の「散歩日和に布団がぱたぱたと」や「無線機」などの楽曲も収録されており、9曲28分という短い時間に、バリエーション豊かな楽曲たちがギュッと詰まっている。

ロックンロールを感じさせ、ポップさを増した2ndアルバム「fam fam」

2016年にリリースされた2ndアルバム「fam fam」は、1stアルバムの楽曲のようなローファイな雰囲気の「Pink Jungle House」から始まるが、2曲目以降に並ぶ楽曲は、軽快なギターリフが印象的な「Motel」、伝説的フォークシンガーである高田渡の楽曲のカバー「自転車に乗って」、遠くへ行ってしまった大切な人へのメッセージを歌ったアルバム名にもなっているロックンロールソング「fam fam」など、前作よりもポップさを増し、ロックンロールを感じさせるものが多い。

そして、本作のラスト2曲はネバヤンの代表曲「明るい未来」と「お別れの歌」である。
「明るい未来」は、MVのコメント欄で「結婚式で流したい!」というような声も見受けられるような、どこか懐かしい雰囲気の漂うネバヤンらしい愛の歌である。
そして「fam fam」のラストを飾るのは、女優の小松菜奈出演で、スマートフォンで撮影したような画面のサイズのMVも注目を集めた、力強いギターリフやビートが刻まれる「お別れの歌」。
この楽曲はライブでも終盤に演奏されることが多く、その熱いサウンドは、観客を熱狂の渦に巻き込む。

本作は、前作に引き続き9曲32分という短い作品ではあるものの、前作のテイストも感じさせながら、メンバーが影響を受けた「The Strokes」など、90〜00sのUSインディーの要素も取り込んだような作品になっており、ネバヤンの進化を感じることが出来る。

夏の気持ちいい風を感じさせる爽やかなメジャーデビュー・3rdアルバム「A GOOD TIME」

1st、2ndアルバムでインディーシーンに旋風を巻き起こし、一躍主役へと躍り出たネバヤンは2017年、ついに3rdアルバム「A GOOD TIME」と共にメジャーデビューを果たす。

「夏のドキドキ」に始まり、「なんかさ」「気持ちいい風が吹いたんです」と続き、爽やかで程よく歪んだギターサウンドと、初期から変わらない地に足をつけた歌詞が相まって心地の良い夏の風を感じさせる本作は、既に夏フェスの常連になり、「夏バンド」とも言われるネバヤンが、更にその評価を高めた作品である。

また、本作には、1stアルバムにも収録された宅録ユニット時代の楽曲「散歩日和に布団がぱたぱたと」をバンドでアレンジした「散歩日和に布団がぱたぱたと(Band ver.)」や、メンバーが影響を受けた「The Strokes」のドラマーが所属するバンド「Little Joy」の楽曲「Keep Me In Mind」を思わせるような「CITY LIGHTS」のほか、力強いギターリフとドラムのビートが刻まれる「SURELY」などの楽曲も含まれている。

新しいネバヤンを垣間見ることが出来る4thアルバム「STORY」

ネバヤンが2019年にリリースした4thアルバム「STORY」は、これまでのネバヤンのゴキゲンでイケイケなビートに深いリバーブのかかったギターの乗った開放的なサウンドは影を潜め、タイトでコンパクトなビートにクリーンなギターが乗った、洗練されたネバヤンを味わうことが出来る。

本作には、ピアノやマリンバ・スティールパンのサウンドが入り、アルバム名にもなっている「STORY」や、女性コーラスが印象的な「春を待って」や「うつらない」などの楽曲が収録されており、宅録ユニット時代からのオリジナルメンバーである松島の脱退による不安や、世間や評論家などからのマンネリ化しているのではないかという指摘などを跳ね返すような、革新的で、ネバヤンの新しい一面を見ることの出来る作品になっている。

また、本作がリリースされる少し前に細野晴臣が、「HOSONO HOUSE」の楽曲を全て新録した「HOCHONO HOUSE」をリリースしている。
そして細野はインタビューで、この作品のリリースにあたって、安倍からの影響があったと語っている。

6年前に「YASHINOKI HOUSE」をリリースした青年たちは、自分たちの音楽を追求し続けて変化を重ねて、大きな影響を受け、リスペクトして慕う細野に、逆に影響を与えるまでになった。

そんなネバヤンから、そしてネバヤンの紡ぐ「STORY」から、これからも目が離せない。